新しく追加されたスコープはWebアプリケーションのみで利用できる「request」「session」「global session」というスコープです。「global session」スコープは、PortletベースのWebアプリケーションでのみ利用するスコープであるため割愛し、この章では一般的に利用する「request」スコープと「session」スコープを紹介します。
編集部注:Webアプリケーションのスコープについて詳しく知りたい読者は、連載「やり直し『JSPとTomcat』」の第9回「JSPのスコープをちゃんと使いこなせてますか?」を参照してください。
新しく追加されたWebに関するスコープを利用するためには、SpringのApplicationContextの実装としてWebアプリケーション用の実装を利用する必要があります(通常のContext実装を使ってこれらのスコープを参照しようとすると、IllegalStateExceptionが発生します)。
例えば、以下(リスト11)のサンプルのようにWebApplicationContextを利用できます。
リスト11 Webスコープを利用するためのContext(WebApplicationContext) |
WebApplicationContext contxt |
また、上記のWebApplicationContextを利用するためには、web.xmlに対しての設定、およびlog4jのライブラリにクラスパスを設定することが必要です。このうちweb.xmlに対する設定には、利用するServletのバージョンに応じて2通りの方法があります。
編集部注:web.xmlの設定について詳しく知りたい読者は、連載「やり直し『JSPとTomcat』」の第12回「Webアプリケーションのパッケージングを『やり直す』」の「web.xmlの書き方を確認しよう!」を参照してください。
バージョン2.4以降のServletコンテナを利用しているなら、以下(リスト12)の設定をweb.xmlファイルに記載してください(Servlet 2.4では、こちらの設定が推奨されています)。この設定により、リクエストを処理するスレッドにHTTPリクエストのオブジェクトをバインドします。それによって、requestおよびsessionスコープのBeanが有効になります。
リスト12 Webスコープを利用するためのweb.xml初期設定(Servlet 2.4以降の環境) |
<!-- WebApplicationContextを利用するための設定 --> |
Servlet 2.4以前の環境を利用している場合、contextLoaderServletおよびrequestContextFilterの実装を利用します。以下のXML設定ファイルのサンプルをweb.xmlに記述してください。Servlet 2.4では、以下の設定は非推奨となっていますが、上記の設定と効果は同じです。
リスト13 Webスコープを利用するためのweb.xml初期設定(Servlet 2.4以前の環境) |
<!-- WebApplicationContextを利用するための設定 --> |
requestスコープのBeanを定義するには、Bean定義において以下(リスト14)の設定を記述します。
リスト14 requestスコープのオブジェクトとして利用するためのBean定義 |
<bean id="loginReqData" class="net.kronos_jp.LoginData" |
上記のBean定義は、LoginDataというBeanのインスタンスを「loginReqData」という名前で、毎回のリクエストに対してバインドし利用できるようにします。この際、Springのコンテナはリクエストごとにインスタンスを生成して「loginReqData」という名前でバインドします。
「loginReqData」のインスタンスはHTTPリクエストの期間は有効であり、これらのオブジェクトの状態を自由に書き換えることができます。当然、ほかのHTTPリクエストには影響を与えません。
リクエストの処理が終了すると、バインドされたBeanは削除されます。
sessionスコープのBeanを定義するには、Bean定義において以下(リスト15)の設定を記述します。
リスト15 sessionスコープのオブジェクトとして利用するためのBean定義 |
<bean id="loginSesData" class="net.kronos_jp.LoginData" |
上記の設定では、LoginDataを「loginSesData」という名前で、1回のHTTPセッションを生存期間とするようにSpringのコンテナに定義しています。
requestスコープのときのように「loginSesData」はHTTPセッションの期間で有効であり、ほかのセッションに影響しないオブジェクトを定義できます。
Spring 2.0では、効率化・簡素化の観点でさまざまな変更が加えられており、また要望の高い新機能も対応しています。前バージョンでの問題点に対して着実に修正や補強が加えられていくことも普及するフレームワークの条件ということができます。
本稿で今回の連載は終了です。記事の中で見てきたようにSpring 2.0とSpring IDE 2.0を組み合わせることで開発効率を向上できます。今後Springを使った開発では、Spring 2.0とSpring IDE 2.0を組み合わせる開発スタイルが主流となることは間違いないでしょう。
本連載では、Spring 2.0およびSpring IDE 2.0の機能の一部しか紹介できませんでしたので、ドキュメントなどを参考にしてさらに自分なりの開発スタイルを確立していくことをお勧めします。
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