セキュリティ要件もばっちり! 設計も完ぺき! クロスサイトスクリプティングやCSRFといった脆弱性の対策もやったはず。ファイアウォールもIDSも設置したし、万全の体制のはずだ。しかし、何か不安だ……。
そんなことってありますよね。そんなとき、最後はやっぱり神頼みです。コンピュータやセキュリティまで面倒を見てくれるという、京都・嵐山にある法輪寺電電宮へお参りしてみましょう。
法輪寺電電宮は、本尊虚空蔵大菩薩のご誓願をもとに電気・電波の祖神として、電力・電気・電波などのあらゆる電気関係事業の発展と無事故安全を祈願して奉祀されています。
電気・電波の祖神というと、最近できたお寺なのではと思うかもしれませんが、法輪寺は和銅6年(713年)に元明天皇の勅願により、行基菩薩が木上山葛井寺(もくじょうざんかづのいでら)を創建されたのが始まりで、実に1300年近い歴史を持っています。また、法輪寺は「十三まいり」のお寺としても知られています。
その法輪寺の境内に、電気・電波を守護する鎮守社「電電宮」は祭祀(さいし)されています。創建時にはすでに鎮守社があり、そのご本尊は大空(宇宙)の自然現象を広く包含する虚空蔵尊で、明星天子(みょうじょうてんし)、雨宝童子(うほうどうじ)、電電明神(でんでんみょうじん)など、大空の自然に関連した神々を祭る鎮守社が存在していたといいます。
中でも、電電明神は電電陰陽融合光源の徳を祖とするということで、いわば雷、稲妻の神様です。今日流に解釈すれば、電気祖神であり、電波祖神といえます。法輪寺と電電宮の詳しい歴史については、Webサイトを参照してください。
法輪寺電電宮に参拝することで、セキュリティのことに悩む人々に御利益があるのかといったことを、法輪寺の藤本高仝副住職にお伺いしてみました。
――どういった方々がご祈祷にいらっしゃいますか?
法輪寺電電宮は電気や電波の守り神として始まったため、護持会ができた当初は家電や電力、放送などの会社の方がご祈祷されることが多かったようです。しかし、いまでは電気や電波はコンピュータをはじめとしたあらゆるものに使われているため、コンピュータのハードやソフトのメーカーの方やプロバイダの方はもちろん、業種がコンピュータとは直接関係がない道路や鉄道関係といった方もいらっしゃいます。
――コンピュータやセキュリティに御利益はありますか?
例えば、交通安全祈願を考えると、車は人間が作ったものであるし、人間が動かしています。車自体は鉄やプラスチックなどの固まりなので、そこに神が宿るわけではなく、それに携わっている人を守護するのです。それはコンピュータやセキュリティも同じです。エンジニアの方が万全を期してバグがないように作ったとしても、何らかの不手際や予想できないことは起こり得ます。全力を尽くすのはもちろんですが、そこに救いも欲しい、安心が欲しいというのは当たり前のことなのです。
――日本の神様は心が広いから、どこの寺社でどんなお願い事をしても聞いてくれるとか?
広義にはそのとおりです。しかし、皆がそこで同じようなお願いをすることで、エネルギーが集まる。ある種の空間が生まれ、場の力が生まれると考えています。その寺社には、その寺社の空間があるのです。
――副住職もコンピュータを使いますか?
WindowsもMacintoshも使っています。25年ほど前、私が学生のころからホストコンピュータなどに触れていましたよ。
最近では、コンピュータは必需品なので、うちに限らずほかのお寺さんでも使っています。ホームページも皆持っているし、連絡はメールを使います。過去帳のバックアップとして、デジタルデータをコンピュータにも残すこともあります。媒体は何であれ、そういった情報を残すことはお寺としての重要な使命です。
――副住職自身はコンピュータウイルスなどに感染したことはありますか?
ありません。インターネットを見たりする機会が少ないだけかもしれませんけれども。ただ、ハードディスクが飛んでデータが消えたことはありますよ。
京都の名勝嵐山、その中腹に法輪寺はあります。電車で行くなら、JR 嵯峨駅、京福電鉄(嵐電) 嵐山駅、阪急電鉄 阪急嵐山駅などが便利です。
嵐山を象徴する渡月橋。
渡月橋を渡って大堰川を越え、山の方へ向かいます。
写真では見えにくいですが、山の中腹(写真のど真ん中)にあるのが法輪寺です。
渡月橋を渡りきると、「十三まいり」と書かれた法輪寺の入り口のようなものが見えますが、ここは裏口。法輪寺の入り口は、渡月橋を渡りきって道を左に折れて、少し先に行ったところにあります。
法輪寺境内の入り口付近。
少し上ると山門が見えてきます。
電電宮において電気祖神を奉祀するとともに、これら関係の研究先覚者、ならびに事業者の霊を顕彰すべく、電電宮と同時に建設が行われたのが「電電塔」です。
山門をくぐって右手に見えるのが電電塔。
真ん中に建っているのが電電塔。後ろにはレリーフが掲げられています。
右側には電気の先覚者を代表してトーマス・アルバ・エジソン氏、左側には電波の先覚者を代表してハインリッヒ・ルドルフ・ヘルツ氏が選ばれ掲げられています。
さらに石段を上っていくと、左手に法輪寺電電宮護持会会員御芳名が掲げられているのが見えます。
主に関西の電気や電力、放送事業者の名前が見受けられます。中には少数ですが、セキュリティ製品やサービスを扱っている会社の名前もありました。
石段の中腹辺りを左に曲がるところに電電宮があります。しかし、先に本堂の方にお参りすることにしましょう。
さらに石段を上っていきます。
訪れた12月某日はあいにくの雨で、境内に人はまばら。十三まいりの時期は、かなり混雑しているようです。
まずは本堂に参拝しましょう。
本堂に参拝したら、引き返して電電宮に向かうことにしましょう。
電電宮の鳥居は整備されていて割と新しく、きれいな朱色をしています(建立 平成十一年三月吉日とありました)。
鳥居の奥に電電宮のお社が見えます。普段から扉は閉ざされているようです。
お社の左手には電電宮の由来や電電明神について記した立て札が立てられていました。
それでは、電電宮に参拝。
普段は見ることができないのですが、特別にお社の中を見せていただきました。
参拝のお土産には電電宮木札(2000円)や御守り(700円)などはいかがでしょうか。サーバやディスプレイなど、どこにでも貼れる電電宮のお守り(500円)もあります。サーバ安定稼働やセキュリティ向上にも御利益があるかも。
副住職いわく、皆がそこで同じようなお願いをすることで、エネルギーが集まり、場の力が生まれるということらしい。とするならば、いまはまだ少ないセキュリティのお願い事を皆がすることで、電電宮はよりセキュリティに対するご加護の力も大きくなるのではないでしょうか。
京都駅から嵐山には30分ほどで到着するので、セキュリティに関するご加護が欲しい方は寄ってみてはいかがでしょうか。
近くには世界文化遺産にも指定されている天龍寺があり、見事な方丈裏の庭園を見ることができます。ほかにも宝厳院や渡月橋、保津川下りやトロッコ列車に竹林など見どころが多くあります。また、法輪寺自体も、プロジェクターで建造物や山などに投影する光のアート「デジタル掛軸」というポップなイベントも開催されているようです(残念ながら、2007年12月17日までなので、本記事が掲載されるころには終了していますが)。
この日は嵐山からとんぼ返りで、夕方には某セキュリティ関連の会社が主催した忘年会に参加するために東京に戻りました。その忘年会で開催されたビンゴ大会で、なんと発売して間もないWii Fitが当たりました! これも懐に忍ばせていた電電宮のお守りのおかげなのでしょうか?!
上野 宣(うえの せん)
株式会社トライコーダ代表取締役
ネットワーク・サーバー セキュリティ診断、セキュリティ対策・運用改善コンサルティングを主な業務としている。
近著に「今夜わかるメールプロトコル」、「今夜わかるTCP/IP」、「今夜わかるHTTP」(共に翔泳社)がある。個人ブログは「うさぎ文学日記」
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