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» 2008年07月23日 00時00分 公開

何をやっても続かないSEを変えた「貢献・評価・満足」ITアーキテクトが見た、現場のメンタルヘルス(11)(2/2 ページ)

[樋口節夫,樋口研究室]
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SE、社内ブログの構築に立候補

 ある日のこと。SEの所属する情報システム部に、社内ブログの構築依頼がありました。会社の情報共有や福利厚生に使うのが目的です。でも情報システム部はブログ構築の経験がありません。いつもなら協力会社に発注する案件だそうです。SEからこの話を聞いたとき、ひょっとしてこれはいいチャンスになるかも、そう感じました。

 最近のブログは、日記やプロフィールの公開だけでなく、さまざまな情報(コンテンツ)の管理に使われます。ブログには高度なプログラミング技法があって、それを使わないと良いコンテンツが作れません。ブログ作成はデザイナーの領域から、プログラマやSEの領域に広がってきています。

 SEがこの仕事を担当すれば、日ごろ感じている、会社への「貢献」や相手の「評価」、自分の「満足」などに関するギャップが埋められて、キャリアアップにつながるのでは。私はそう思ったのです。

 私は、ダメでもともと、上司にこの仕事を担当したいといってみたら? とSEにアドバイスしました。SEはいいました。「ブログの書き込み経験はありますが、ブログの構築経験はありません。不安です……」

 分かります。初体験は誰でも不安なものです。でもこんなときにパワーを出させるのも私の大切な仕事です。最大限に相談に乗るから大丈夫。そうSEにアドバイスしました。SEはいいます。

 「分かりました。ちょっと上司と相談してみます」

 いってみる価値はあるものですね。上司はSEの提案を受け入れました。でも2つの条件付きでした。1つは、無料ソフトウェアを使い、お金をかけないこと。もう1つは、いまの業務と並行して、ボランティアでやること。

 SEは悩んでいましたが、社内ブログなので最初から完ぺきである必要がないし、クレームがあっても社内で怒られるだけです。TOEICや資格の勉強をするようにやってみたら? 私はそうアドバイスしました。これでSEは決心しました。

 「そうですね。やってみます」

社内ブログの完成、そして次のチャンス

 SEはソフトウェアの選定からスタートして、使い勝手の調査、開発、テストと、毎日少しずつ作業を継続していきました。一番大変だったのは、ソフトウェアが思ったとおりに動かなかったときです。日本語の情報は豊富にありましたが、ここぞという微調整では、英語の情報を読まなければできないことがたくさんありました。

 3カ月ほどして、それほど見栄えは良くないのですが、SEは何とか社内ブログを立ち上げることができました。ここまでできた勝因は? 私は尋ねてみました。

 「お金をかけずに完成させたことかなあ。会社に貢献できたような気がします。私の作業にもお金がかかっていませんし」

 笑いながら話すSEを見て、貢献は行動を継続させるのだなあと、あらためて感じました。

 さて、SEの成果は、面白い方向に発展しそうです。先日、同じ会社のコンテンツ部の部長から、社内ブログを見たといって問い合わせがありました。この部署は、顧客企業の商品やサービスの情報をメディアに載せて情報発信するビジネスをしています。社内ブログのノウハウを、お客さまに提供できないだろうか。そういう問い合わせでした。

 私は、これもSEのチャンスと見ました。社内ブログを作った手順を、いつでもプレゼンテーションできるようにまとめておいたらどう? そうアドバイスしました。SEはいいます。

 「チャンスをつかみ続ける。それが、継続には重要なことなのですね」

 そのとおりです。会社がくれるチャンスには、「貢献」「評価」「満足」をつかむきっかけが詰まっています。逃してはいけません。しかしチャンスは素早く通り過ぎるものです。タイミングよくつかむには、敏感なアンテナをいつも張っておくことが重要です。

 継続は重要ですが、その先の目標あってのものです。価値ある目標がない状態で継続を試みても長続きしません。継続するかどうか分からないことに取り組むより、行動キープ(継続)の3条件を集めながら行動する方が効率的です。そうすると、あきらめのパワーが、少しずつプラスパワーに方向転換していくと思います。

 最後にもう1つ、SEの継続の成果がメールで届きました。「TOEICの結果、600点」。そう書かれていました。英語の情報を読み続けた成果ですね。

 あなたも、行動キープ(継続)の3条件をそろえてみてはいかがですか。

筆者紹介

樋口研究室

樋口節夫

日本アイ・ビー・エムに22年間勤務し、その後独立。アーキテクトとしてメインフレームからオープンシステムまで幅広いシステム構築に携わった経験から、コンピュータシステムの良しあしはそれを使う人間の良しあしによって決まることを発見。人間のパフォーマンスアップツールとしてITコーチング手法を開発し、人材開発およびテクニカルコンサルタントとして活躍中。『ITコーチング入門―SE・ITエンジニアのための問題解決とスキルアップ』(技術評論社刊)をはじめ、技術系や人材系の著書多数。主宰する樋口研究室では、ITエンジニアが危機から身を守るための練習会(ワークショップ)も実施している。



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