常にコンピュータ並みの正確さを要求されるITエンジニアたち。しかし、ITエンジニアを取り巻く環境自体に、「脳を乱す」原因が隠れているという……。ITアーキテクトが贈る、疲れたITエンジニアへの処方せん。
この連載では、メンタルヘルスをうまくコントロールするための、いろいろなビューチェンジ(発想の転換)の方法を解説してきました。
内容に関して、読者の皆さんから、たくさんの質問や感想をいただいています。今回は、その中から役に立ちそうなものを厳選して回答したいと思います。実践的なものばかりですので、皆さんのメンタルヘルスの維持に応用できるのではないかと思います。
第1回「なぜ、ITエンジニアの頭脳は疲労するのか」に、ITの仕事には精神的なストレスが多くて脳が疲労するとあります。私の上司は、朝から晩まで休むことなく元気良く働いていて、脳の疲労を感じているように見えません。そういう人も存在するのは、どうしてなのでしょうか。
A1.
確かに、いらっしゃると思います。こういう人を見ていると「時間外業務(残業時間)の多さとメンタルの問題には、あまり関連性がないのかな」と思うこともあります。
でも私は、あなたの上司が最初からそうだったわけではないと思います。入社したばかりのころ、仕事に慣れないころは、上司もたくさんの精神的なストレスを感じていたでしょう。
上司は、いままでに多くの経験をする中で、つらくて嫌な気持ちを、自分のモチベーションアップに昇華できる考え方を身に付けたのではないかと思います。
でも、いつも夜遅くまで仕事する上司は問題ですね。仕事と生活のバランスが取れていないと感じます。こういう人に巻き込まれないように、あなたは自分の仕事が終わったら、さっと帰宅してください。こういう上司は、部下が先に帰宅しても、ほとんど気にせず仕事していると思いますので、安心して大丈夫だと思います。
第2回「そんなレビューのこと、聞いていません!」に、優秀な人が集まるグループやコミュニティに参加すると、自分が困ったときの回避方法が分かると書いてありました。そういうグループやコミュニティは、どのようにして見つければいいのですか。
A2.
自分の会社に、勉強会やワークショップ、掲示板やブログなど、自分の興味のあることについて議論している場があれば、それに参加してはいかがでしょうか。もし社外に求めるのでしたら、「@ITイベントカレンダー」などでイベントやコミュニティの情報を集めて参加するのも、ミクシィなどSNSのワーキンググループに入ってみるのもよいと思います。
注意すべきことが1つあります。参加するだけではいけません。サブリーダーを務めたり、発表をしたり、運営を手伝ったりという、ファシリテーション作業を実行することが大切です。
優秀な人の行動を眺めているだけではなく、それをマネすると、自分に役立つ考え方が見つかりやすくなります。それが、困ったときのリスクを回避する方法につながっていくと思います。
第5回「深夜の呼び出し。早く資料を届けないと!」を読み、緊急事態にすぐに対応しない方が良い結果が出ることもあると知って驚きました。私はいつも会社のメンバーから「せっかちな性格」とか「行動がガサツ」とかいわれています。書類を探すときはバタバタしていますし、電話の切り方も粗雑だそうです。歩くときもいつもせかせか歩いているらしいです。こういう性格を直したいと思うのですが、何か良い方法はないでしょうか。
A3.
良い方法があります。何かを行動に移さないといけない状態になったら、取り掛かる前に、まず自分の胸に手を置いてみてください。そして「1、2、3」と数えます。その後行動を始めてください。
それだけで、あなたのことを「せっかちだ」という人は少なくなると思います。ぜひ試してみてください。
第6回「私だけ不当に評価が低い。どうして?」の内容を見て、担当するお客さまのメリットだけでなく自分の会社への貢献も考え、バランス良く仕事をすれば、昇進が早くなるように感じました。でも私の上司は、人を評価する能力がありません。どう考えても、部下を公正に評価できる人だとは思えません。周りの同僚も、皆そういいます。考えていると腹が立ってきて、「こんな会社は早く辞めてしまおう」とも思います。こういう場合は、早く退職して別の会社を探した方がいいのでしょうか。
A4.
上司の管理能力がなくて腹が立つ気持ち、分かります。気を付けないといけないのは、上司の仕事ぶりが良くなくても、周りの人と一緒になってそれを公言しないことです。悪口ばかりいっていて「文句しかいわない社員だ」というレッテルを張られてしまうと、昇進するのに不利になりますから。
こういう場合は、上司の能力よりも、正しい評価を「怠っている」、会社で決められた手順を「実行していない」という不順守の事実に焦点を絞り、あなたの次の行動を決めるようにしてください。あなたの意見を会社の組織全体のクレームとして主張できれば、会社の中で改善策が見えてくることもあるからです。
時間がかかるかもしれませんが、転職を急がず、じっくり自分の戦略を立てて行動してほしいと思います。
第7回「社内論文の提出期限は3週間後。どうしよう!」を読んで、私も論文のようなものを書いて頭の中を整理してみたいと思いました。でも私の会社には、論文提出の制度自体がありません。こういうときはどうすればいいでしょうか。
A5.
自分の仕事を整理する、見直す、相手に理解させるという作業は、論文を書かないとできないわけではありません。お客さまや上司にプログラムの仕様を説明する、進ちょくをレポートする、定例会議で経験を話すなど、いろいろな場面でできると思います。
大切なのは、自分の頭で整理して発表する場をたくさん持つことです。社内でも社外でも構いません。人と会話できるすべての場面が、自分の頭を整理する瞬間になります。
エディタや開発ツールに向かうだけでなく、たくさんの人と向かう時間を確保するようにすると、おのずと頭の中は整理されてくるのではないかと思います。
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