6分で読めるPMBOKのリスク・マネジメントメンバーに贈るプロマネ基礎講座(9)(2/3 ページ)

» 2008年08月06日 00時00分 公開
[田中亮グローバル ナレッジ ネットワーク]

優先リスクの詳細分析 〜「定量的リスク分析」プロセス(第11章4項)

 定性的リスク分析プロセスによって「優先リスク」と定義されたリスクのみが定量的リスク分析の対象となります。このプロセスでは、リスク事象が発生した際に、どのような影響を受けるかを詳細に分析し、金額など数値化した値で評価を行います。定量的リスク分析のツールとして、インフルエンス・ダイアグラムや、デシジョンツリー・ダイアグラムなどが用いられます。

リスクへの対応策の決定 〜「リスク対応計画」プロセス(第11章5項)

 リスクの分析が終了したら、それぞれのリスクに対して、対応計画を作成します。プロジェクトにマイナスの影響を与えるリスクに対しては、「回避」「転嫁」「軽減」「受容」の4つの戦略があります。例えば、新しい技術を使用してシステム開発を行うことで、未知の不具合でスケジュールが遅延する可能性がある場合を想定しましょう。「回避」策では、そのような新技術は採用しない戦略を取ります。「転嫁」策では、その技術を利用する作業を外部に委託することで、リスクの影響を外部の業者に移転させます。「軽減」策では、メンバーを研修に行かせ知識を習得させるなどして、スケジュール遅延の可能性を減らします。「受容」策は、スケジュール遅延を受け入れる策で、プロジェクト全体のスケジュールにバッファを設けるなどして対応します。

 同様に、プロジェクトにプラスの影響を与える可能性があるリスクに対する戦略には、「活用」「共有」「強化」「受容」といった戦略があります。

 リスクの対応計画を考え、対策を取ると新たなリスクが発生する可能性があります。例えば、先の例の場合、「回避」策を取ることで、「予定した機能が実現できない」「想定どおりのパフォーマンスが得られない」など新たなリスクが生まれる可能性があります。これらの対応策を取った結果発生するリスクは「二次リスク」と呼ばれ、残存リスクなどとともに監視対象のリスクとして管理されます。

 これまでのプロセスで、リスクを詳細に分析し、優先度、影響度、対応策などを決めてきましたが、それらの活動の結果はすべてリスク登録簿に登録されます。つまり、リスク登録簿はリスク管理台帳として常に更新され、リスク・マネジメントに活用されていくのです。

リスク・マネジメントは監視が肝心 〜「リスクの監視コントロール」プロセス(第11章6項)

 リスクに対する対応策が決まっても油断はできません。プロジェクト・チームは常に対応策を取るべきリスク事象が発生していないか(トリガの分析)、状況が変化し、新しいリスクが生まれていないかを監視します。新しいリスクが識別された場合は、計画プロセス群のリスク識別プロセス以降を繰り返し、対応計画を考えます。また、優先度が低いとして監視リストに載せた残存リスクや対応策を取った結果発生する二次リスクについては、状況の変化を見ておく必要があります。これらのリスクは、状況が変化することで優先度が上がり、優先リスクとして対応策を取らなければならなくなる可能性があるからです。

 場合によっては、これまでのプロセスで識別されていないリスク事象が発生する可能性もあります。これらのリスク事象は、あらかじめ対応策を検討していないので、プロジェクトに大きな影響を及ぼす可能性があります。そのような未知のリスク事象が発生した場合、プロジェクトマネージャは、応急処置としての対応策を取らなければなりません。これを迂(う)回策といいます。迂回策を取ることによってプロジェクトへの影響度を軽減し、その後、しっかりとリスクの分析を行い、恒久的な対応策を取ることになります。

 最後に、今回の範囲のおさらいをします。演習問題を解いて終わりましょう。

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