連載
» 2008年11月28日 00時00分 公開

キャリアビジョンを実現させる4つの方法キャリアデザインを考える(5)

[@IT自分戦略研究所,@IT]

絶えず納期に追われている忙しいITエンジニアにとって、立ち止まって自分の将来を考える時間や余裕はあまりないかもしれない。だが、将来への見通しは、自分の願望を叶える手助けや、将来への不安をふっしょくするお守りになる。本連載では、キャリアデザインの方法をお伝えする。ITエンジニアが幸せに働き続けるための手引きとしてご利用いただければと思う。


 連載4回をとおしてキャリアデザインの方法について説明してきた。キャリアビジョンが固まってきた人に次に考えてほしいのが、実現方法だ。最終回は、キャリアビジョンの実現について、参考になる記事やサービスを紹介したい。

 ここでは、キャリアビジョンの実現方法を、(1)転職(2)社内(3)学習(4)独立の4つに大別し、説明する。

1.転職で自己実現

  自分の描くビジョンが、現在勤めている企業では実現できないと思ったら、転職は有効な手段となるだろう。例えば、「将来はスーパープログラマになりたいが、現在勤めている企業にプログラマとしてのキャリアパスがない」「システム開発で下請けメインの企業にいるが、ITコンサルタントとしてソリューションの提案ができる上流工程に携わりたい」といった場合などだ。転職は、自分がやりたいことと企業がやってほしいことの間にギャップが生じたときに行う行為なのかもしれない(ただし、勤めていた企業が倒産した場合、ビジョンにかかわらず転職はいたし方ない)。

 人材コンサルタントの高橋英輔氏は「理想を持つことが良い転職への近道」で、エンジニアが転職を成功させるポイントは、3つある述べている。

 (1)転職の目的を明確にするでは、その転職が将来的なビジョンにどうつながるかを含め、今回の転職の意味を認識する必要があるということだ。いまの企業に不満があって転職をするよりは、自分が本当に求めていること(=やりたいこと)を実現するために転職するという動機が大切だ。キャリアコンサルタントの石川隆夫氏は「戦略的な転職をするための7つの法則」で、次の項目を掘り下げて考えることをお薦めしている。

 自身のキャリアビジョンと照らし合わせて、いま一度考えてみてほしい。

 (2)エンジニアとしての自分の市場価値を認識するには、客観的な情報が必要だ。自分1人で考え込むよりも、キャリアアドバイザーに相談したり、「@IT年収MAP」のような市場価値を測定できるWebサービスを活用してみてはいかがだろうか。

 (3)転職に関する情報を多く取得するには、キャリアコンサルタントに話を聞く、雑誌やWebサイトで情報を得る、転職した友人に話を聞くという方法があるだろう。@IT自分戦略研究所では、キャリア実現研究室で、転職に関する情報を多く掲載しているので、興味のある人はご覧いただきたい。

 ところで、転職でキャリアを作り上げるという考えは一般的になっているものの、自己実現のためとはいえ、転職は何回してもいいのか。転職の回数が多くなると、転職で不利になるという話はよく聞く。キャリアコンサルタントの辻貴由氏は「31歳、5回目の転職。2年に1回は転職してます!」で、企業の人事担当者が転職回数の多い人材を敬遠する理由を次の3点だと述べている。

 「自分とは合わなかった」「事前確認した職務内容と違った」という理由で転職回数を増やしてしまうと、企業に「採用してもすぐに辞めてしまうのではないか」という不安を抱かせ、転職が難しくなってしまいまう。

 「転職するたびにランクが下がるなんて」では、転職回数を重ねるごとに給料やキャリアが上がっていった人と、下がってしまった人の事例が紹介されている。この違いのポイントについてコンサルタントの藤田孝弘氏は次のように述べる。

 藤田氏も、辻氏と同様にキャリア形成のストーリーに一貫性があることが重要であると説いている。

2.いまの企業で自己実現

 自己実現の方法は転職だけではない。いまの企業でキャリアアップができ、ビジョンを実現できたら、それに越したことはないだろう。

 ただ、やりたいことはいまの企業では実現できないが、転職するにはスキルが足りない、という悩みを持っている人は多いと思う。「よく考えたら、いまの会社でいいみたい」では、業務経験2年のエンジニアが、第二新卒で上流工程ができる企業に応募したが、面接で厳しい反応だった事例が紹介されている。

 結局、彼はもう一度いまの企業で頑張り、スキルを積んでいくことを選択した。キャリア実現は、ときには踏みとどまる勇気も必要なのだ。

3.自己実現のために学ぶ

 キャリアビジョンを実現をするためには、スキルアップが欠かせない。ITエンジニアは、新しい技術を習得したり、自分の技術を深める努力がかかせない職業。資格を取得するために土日を返上して勉強する人はたくさんいる。学生時代とは異なり勉強にまとまった時間を当てられない。また、ITエンジニアの多くはハードワークだろう。やはり、働きながら学ぶのは非常に大変なことなのだろうか。

 元ITエンジニアで現在弁護士の佐藤未央氏は、ITエンジニアとしてベンチャー企業で働きながら、かねての夢であった弁護士資格を取得した。勉強時間はどうやって生み出していたのか。

 佐藤氏は、仕事と受験勉強で集中する時期を分けてめりはりを付けることで、働きながら勉強を続け、3〜4年で弁護士資格に合格したという。

 一方、働きながら勉強するのではなく、一度勤めている企業を辞める選択肢もある。「キャリアに人生に欲張りに生きた20代」のITエンジニアの郄井紀彦氏は、「30歳になる前にはワーキングホリデーから帰国して次の仕事に就いておきたい」という目標を実現した。高井氏はワーキングホリデーの経験を次のように振り返る。

「1年間、カナダでいろいろ考えた。日本の外で日本にはないものを見て、逆に日本が見えてきた。またサラリーマンから離れて、逆に会社員の立場や働く意義を徹底的に考えた。普通に働いているだけでは、経験できないことばかりだった。ワーキングホリデーを体験したからこそ、十分な時間を使って自分にとっての価値観を考え抜くことができた」

 日常から離れて見えてくるものはたくさんある。高井氏のキャリアビジョンはプロジェクトマネージャを経験して管理職になること。ワーキングホリデーをとおして学んだ英語力や人脈を生かしたいと述べている。

4.独立する

 キャリアビジョンを実現するためには、転職、いまの企業で頑張る、学ぶ、といった手段のほかに、独立という選択肢がある。@IT自分戦略研究所の読者調査では、今後経営者やフリーランスを目指す人が全体の22%。4?5人に1人は、経営者やフリーランスを視野に入れていることになる。

 独立の形態には2種類ある。

個人事業主――個人事業の届け出をして個人事業主としてやっている

会社(個人)――ほぼ個人でやっているが、法人化する

 個人事業主として活躍したい人は「私がフリーエンジニアになるまで」や、「フリーエンジニアで食えるか?」「フリーエンジニアとして長生きする方法」を読んでみてほしい。フリーエンジニアとしてのやりがいやつらさ、法律や、税金対策に関する処世術が書かれている。

 一方、起業を実現したい人には、「ITエンジニアのための起業実践ポイント解説」や「連載:ITエンジニアの起業ストーリー」がお薦めだ。


 5回にわたってキャリアデザインについてお伝えしてきたが、ご存じのとおり、キャリアビジョンの実現はそう簡単にできることではない。むしろ狙ってできる人は少ないのかもしれない。だから、たとえ実現できなくても、落ち込むことはない。現状で妥協をすることは間違いではないのだ。むしろそれを受け入れられない方が、つらいことである。実現しなくても、自分に折り合いを付けられる人は、結局は幸せだ。

 だが、実現へ向けて努力を重ねることでしか、ビジョンへ近付くことはできない。もし、近付けたなら、あと少しで到達できるかもしれない。希望を捨てずに、キャリアビジョンの実現に向けて頑張っていただきたい。

参考資料
「キャリアデザイン」(社団法人 日本経営協会)
「キャリアデザイン発想法(生き方ルールブック)」(PROSEEK)

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