あなたの自分軸(ありたい姿、自分らしさ)が何かを理解できれば、自分のやる気の出し方が分かりますし、成果、すなわち自分なりの成功、幸せをつかむことが可能になります。平本氏は自分軸の見つけ方を教えてくれています。ただし、自分軸を見つけるためには、自分とじっくり対話する必要がありますし、多面的な見方・考え方が求められます。本稿だけではとても説明しきれないので、興味のある方はぜひ平本氏の著書をお読みになってください。ここでは5つのポイントの要旨を示すのみにとどめます。
(1)自分にとって無理なくできるものから入る
ビジョン型の人は、行先、つまりありたい姿や夢、目標を考えやすいでしょう。一方、価値観型の人は、自分らしさ、価値観を考えるのが楽でしょう。まずは考えやすい方から入りましょう。
(2)時間軸と空間軸を使う
時間軸には「過去・現在・未来」、空間軸には「人間関係と課題」「ビジネスとプライベート」「人と自分」などさまざまな切り口があります。こうした切り口から自分自身のありたい姿、自分らしさが何かを掘り下げていくのです。
(3)具体的なエピソードから引き出す
あなたのこれまでの経験を時間軸、あるいは空間軸で、ある日・ある場所・ある場面という具体的な出来事を振り返ってみましょう。「小さいころ、カブトムシを捕まえてとてもうれしかった」など、そこには何らかの感情も伴っているでしょう。こうした、何げないちょっとしたエピソードでいいのです。まだ現実にはなっていないものの、六本木のおしゃれなビルで働いている姿など、いろんなイメージがわき上がってくるでしょう。
(4)それぞれのエピソードは自分にとって「イイ」か「イヤ」かを探る
上記のような過去のエピソードや未来のイメージに対し、自分なりに「イイ」か「イヤ」かという主観的な思いがあるはずです。「いたずらをして、お父さんにこっぴどく怒られた」という思い出をイヤな思い出としてとらえている人は、「暴力だけは許せない」、あるいは「愛情表現にも手段を選ばないといけない」といった教訓を得るかもしれません。あなたのいまの価値観には、過去のエピソードに伴う感情や教訓が反映されているのです。
(5)世界でたった1つの自分の意味付けを見逃さない
過去のエピソードに伴う感情や教訓が自分にとってどんな意味を持つのかといった、意味付けをします。この意味付けには、「自分にとって何が大事か」「本当はどうなりたいか」といったビジョン、価値観に関係したヒントがふんだんに含まれている、と平本氏はいっています。
自分軸は、人それぞれ異なるのが当然ですし、個別具体的なものです。また、「こうでなければならない」というものはありません。しかし、本人は自分軸だと思っていても、実はそうではない7つの条件があることを平本氏は警告してくれています。
(1)人にいわれたこと
(2)人に要求・期待されたこと
(3)みんながやっているからやること
(4)やらないと不安だからやること
(5)気晴らしや現実逃避でやること
(6)過去からの思い込み
(7)中毒で「はまっている」こと
上記それぞれについての詳細説明は割愛させていただきますが、要するに自分軸とは、無理に考えてひねり出したり、人から押し付けられるものではないということです。気付かなくても、作り出さなくても、自分の中に当たり前にあるもの、消すことができない思い、思い浮かべるとワクワクする、こうしたものが自分軸です。だからこそ、「やる気のもと」になる、と平本氏は強調しています。
最後に、著書の中で平本氏が書いている印象的な言葉を引用しておきましょう。
“人生に「負け組」はない。なぜなら、何が成功か幸せかはみんな違うから”
参考
▼『成功するのに目標はいらない』平本相武著、こう書房
ピークパフォーマンス
松尾 順(まつお じゅん)
1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける一方、キャリア理論や心理カウンセリング、コーチングを学び、主に個人を対象とするキャリアアドバイザーとしての仕事を増やしてきている。顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.