ITエンジニアの周りにはストレスがいっぱい。そんな環境から心身を守るためのヒントを、IT業界出身のカウンセラーが分かりやすく伝えます。
唐突な質問ですが、いまこの記事を読んでいるあなたは幸せでしょうか。
「仕事もあるし、家族もいる。それなりに幸せかな」「えー! 毎日残業だらけで体もぼろぼろ、幸せなわけないでしょう!?」「飲んでるときだけ、幸せ……」――皆さんのつぶやきが聞こえそうです。
日々仕事に追われ、「幸せとは何か」と考えている場合ではないかもしれません。しかし、社会を支えるいろいろなシステムとかかわる皆さん自身が幸せだったら、その社会的影響力は大きいのではないでしょうか。
ということで、今回のテーマは「ITエンジニアの幸福追求」です。
普段、筆者が行っているカウンセリングでは、相談者と一緒にうつ病や体の不調、人間関係の悩みなどに取り組んでいます。「原因や対策を考える」ことはもちろん必要。同時に、「苦しい状況の中にあってもハッピーなことを探す」ことも大切です。
「ハッピーを探す」、一見すると相談者が抱える問題とは離れるように思えます。しかし、「ハッピーなこと」を話す瞬間、相談者はきらっとした笑顔を見せるのです。その瞬間をきっかけにして、カウンセリングが展開する場合があります。
こんな研究があります。働く人たちに「その日体験したポジティブな出来事を3つと、それらが生じた理由を1週間、毎晩書き出してもらう」という実験を行ったところ、「ポジティブなことを書いた人は、書かなかった人よりネガティブ感情が減少する」という結果が出たそうです。
ポジティブな出来事とは、どんなささいなことでもかまいません。「昼食のかつ丼がおいしかった」「通勤の電車ですぐ座れた」など……もちろん「バグがすぐ見つかった」もありですね。
どうも、人間はつらいことや悲しいことに意識が向きやすいようです。そこを「えいっ!」と「いいこと」に向けていくのです。「いいことなんてない!」という方、なくても大丈夫。あなたが、ある出来事に対して「これはいいことである」と、ラベルを貼ってしまえばいいのです。
そんな程度では幸せだと感じられない……と思った人は、「幸せとは大層なものであるはず」、または「大層なものであるべき」という思い込みを持っているのではないでしょうか。第14回「SEのための認知療法――認知の癖を知ってうつ予防」で紹介した「認知チェックテスト」で、認知の傾向を見てみましょう。もしかすると、物事を否定的に見る傾向があるかもしれません。
「自分にとっての“幸せ”とはこういうものだ」というビジョンを作るために、まず「自分はどんな人生や生活をしたいのか」をとらえてみましょう。ここでは、「自分にとってのお気に入り」を視覚的にとらえるための「コラージュ作り」を紹介します。
これらの作業は、一度に行わなくても構いません。時間の取れるときに少しずつやってみてください。特に5番目の「問い掛け」は、なかなかすぐに答えが出ないと思います。
ここで注意を1つ。例えば「年収○○千万円の生活」は、具体的な「目標」ではありますが、ビジョンではありません。その年収で「どんなことがしたいか」「どんな感じを日々持ちたいか(自然を感じながら暮らすなど)」がビジョンになります。「資格取得」も同様です。その資格を取って「何がしたいか」が大切なのです。
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