ビジネスの形が、組織構造を決める情報系学生のためのIT業界入門(2)(2/2 ページ)

» 2010年08月20日 00時00分 公開
[イノウ@IT]
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冠里さん

CRM、ERPなどのアプリケーション、あるいはデータベースなどのミドルウェアといったソフトウェア製品を開発・販売する企業の場合、製品ごとの開発部門が中核組織になっていることが多いですね。営業部門は、基本的に開発部門と切り離され、担当エリアごとの組織になっています。また外資系の場合、開発部門所属のマーケティング担当者が顧客ニーズの吸い上げと開発チームへのフィードバックを行っていることが多いようです。

ソフトウェア製品開発・販売型企業の組織図(例) 図3 ソフトウェア製品開発・販売型企業の組織図(例)
色主さん

でも、たしか日本の大手企業には、CRMやERPの部門がありましたよね……。


冠里さん

さすが色主さん、企業研究もしっかりやったようですね。たしかに大手の場合、業界別の部門とソリューション別の部門、両方があることが多いようです。こうした大手企業は、アプリケーションやミドルウェアなどを自社で開発し、それを自社案件で利用したり、外部に販売したりしています。この際、ソリューション別の部門が、開発だけでなく導入サポートの役割を担っているのです。つまり、対象とする業界、利用するソリューションに応じて、図4のように2つの部門が協力してサービスを提供するわけです。

大手IT企業のサービスマトリックス 図4 大手IT企業のサービスマトリックス
行貝くん

これと似たようなマトリックス図、どこかで見たような気がします。たしか就職活動中に……。


冠里さん

行貝くんも就職活動をまじめにやったみたいですね。実はこれ、「コンサルティングファーム」のサービスマトリックス図によく似ています。

コンサルティングファームのサービスマトリックス 図5 コンサルティングファームのサービスマトリックス
行貝くん

あ、これです!


冠里さん

BtoB(企業向け)のソリューション型サービスを提供する会社の組織は、対象とする顧客の軸と提供するサービスの軸とで分類できるという意味で、ある程度、似ているのです。


色主さん

すみません、「ソリューション型サービス」ってどういう意味ですか?


冠里さん

おっと、これは失礼しました。

企業は、「売り上げが伸びない」「情報伝達がスムーズでない」「人材が育たない」など、常にさまざまな課題を抱えています。こうした課題の解決策を、顧客の状況に合わせてオーダーメイドで考え、提供するのがソリューション型サービスです。コンサルティングやIT(受託システム開発)のほか、広告などもソリューション型サービスに分類されることが多いようですね。

行貝くん

なるほど。つまり、うちのような受託システム開発系の場合、顧客の課題を的確につかんで、それを情報システムによって解決する役割が求められるのですね。


色主さん

でも、業務ソフトウェアも、顧客の課題を解決するために開発された製品ですよね。


冠里さん

そのとおりです。ただし、こうしたソフトウェア製品の場合、「顧客ニーズの最大公約数を最も優れたやり方(ベストプラクティス)によって解決する」というアプローチを採っています。そのためこうしたソフトウェアは、オーダーメイド方式に対して、パッケージ製品と呼ばれるのです。それぞれ、求められる人材像もキャリアも変わってきます。次回は、そのあたりを詳しく解説しましょう。

筆者プロフィール

イノウ

さまざまな業界や会社のことを、Webと書籍の連動で「分かりやすく」解説することを目指しています。さまざまな業界の企業を業態やキーワードごとに検索可能なWebサイト「業界地図 2012」を近日オープン予定。


著書紹介

『世界一わかりやすい IT(情報サービス)業界の「しくみ」と「ながれ」』

『世界一わかりやすい IT(情報サービス)業界の「しくみ」と「ながれ」』 (amazonへのリンク

イノウ 編著

行貝くん、江水くん、冠里さんをはじめとするキャラクターが解説するさまざまな業界の「入門書」。IT業界を「分かる」ために必要な「業界の知識」「会社の知識」「業務の知識」「基本の知識」を提供。



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