計画的な学生、熱心な学生の皆さんほど、「○月までに内定したい!」と目標を持って行動します。しかし、震災の影響で予定が崩れてしまい、思わぬ緊張感の“長期化”に、その緊張の糸が切れてしまいそうになる学生の話を多く聞きます。
残念ながら、今回の震災は戦後最大の災害であり、これを乗り越えるのには時間がかかります。そして、今年度の就活生にとって「震災の影響を受ける」という条件は皆同じです。ここは、今年就職活動をすることになっためぐり合わせを受け入れ、復興によって生まれ変わる日本を思い描き、「自分は何ができるか」について考えてみましょう。
今回の震災にまつわるさまざまな報道を通じ、多くの職業人の活動を身近に感じることができました。作物や家畜を心より心配する農家の人、患者とともにいることを決断した医師や看護師、自衛官や消防隊、研究者や損保・金融、通信に運輸、建築土木……多くの職業人の「仕事への強い使命感」が見えないところでいかに日本を支えていたか、あらためて気付かされました。
社会とは、それぞれの仕事の専門性と使命感、そしてその共働によって成立しています。今年に就職活動を行っている皆さんは、もともと厳しい就職活動であることに加え、震災によってさらなる不安が襲ってきたという現実を見て「何も手につかなくなった」かもしれません。それは当然のことです。
しかし、皆さんは「復興のために共に働く」ことを企業に期待される人たちです。復興とはただ元の状態に回復するだけでなく、「問題を乗り越え、より良い社会にしていく」ことではないでしょうか。
IT業界を志望する皆さんには、より便利なIT活用、災害に強い社会基盤の構築を行うなど、多くの期待が寄せられています。今回の震災で浮かび上がった日本の課題を見つめ直し、自分には未来のために何ができるか、専門分野や関心をどう役立てられるか、改めて自分に問い直してみてください。
皆さんの専門性や意欲が、日本の再生を支えます。まずは混乱を少しでも解消し、あえて腰をすえて、誰かために何をやれるかについて、じっくり考えてみてください。
その答えどんなに小さい事のように思えても、多くの職業がそうであるように、きっといつかどこかで誰かのために役に立ちます。じっくり考えた後出てきたあなたの使命感は、就職活動においても、企業から深い信頼を寄せられるものとなるはずです。
松浦 慶子
臨床心理士・日本カウンセリング学会認定カウンセラー。
国際基督教大学心理学科卒業、筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻修了 。大学、専門学校での学生相談や講師、精神科睡眠障害外来での医療相談、EAP機関・ピースマインドにて社員や家族のカウンセリングなど、幅広く相談活動を行っている。
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