「AWS専用」じゃない! RightScaleの実力RightScaleでクラウドを運用管理!(1)(3/3 ページ)

» 2011年07月07日 00時00分 公開
[森田貴司株式会社日立ソリューションズ]
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3. 運用管理の自動化

 サーバを立ち上げた後の運用フェイズにおいては、RightScaleによって次のような運用タスクを自動化することが可能です。

  • 監視
  • アラート
  • オートスケーリング

監視

 システムを健全に保つためには、監視が不可欠です。RightScaleでは監視のためのRightスクリプトが提供されていますので、これをサーバテンプレートに組み込んで起動するだけで監視を有効にすることができます。

 監視の仕組みとしては、オープンソースのcollectdを使用しています。サーバで取得された情報はRightScaleのSketchyサーバに送信され、ダッシュボードからグラフ形式で参照することができます。

図4 監視グラフの表示例 図4 監視グラフの表示例

 さまざまな監視項目が用意されているのも1つの特徴です。CPU、メモリ、ディスク、ネットワークといったOSのリソース使用率だけでなく、Apache、MySQLなどを監視するためのcollectdプラグインがRightスクリプトとして提供されています。これらのRightスクリプトをサーバテンプレートに組み込むだけで、自動的に監視が行われるようになります。

アラート

 監視によって取得された情報をもとに、特定の監視項目がしきい値を超えた場合にアラートを発生させることができます。発生したアラートはダッシュボードでも確認できますが、アラートエスカレーションを設定することで、メール通知などのアクションを自動的に実行することができます。

 実行できるアクションとしては、メール通知以外にもサーバの再起動や任意のRightスクリプトを実行することができます。また、オートスケーリングもこのアラートの仕組みを利用しています。

オートスケーリング

 オートスケーリングもRightScaleの特徴的な機能のひとつです。現在ではAmazon EC2でもオートスケーリングの仕組みが提供されるようになりましたが、RightScaleではRightスクリプトでアプリケーションの設定までを自動化できるという強みがあります。

 Amazon EC2ではAmazon CloudWatchで取得できるCPU使用率をオートスケーリングのトリガーとするのが一般的ですが、RightScaleではWebサーバのセッション数といったような項目をトリガーとして設定することも可能です。スケジュールによる増減も可能です。曜日と時間の組み合わせでサーバの最小数、最大数を指定できます。あらかじめ負荷が予想できる場合は、サーバの数を調整することで、クラウドの費用を最適化できるでしょう。

図5 スケジュール設定 図5 スケジュール設定

すぐに始められる

 これまでの説明で、RightScaleを使いこなすのは大変そうというイメージを持たれた方もいるかもしれません。しかし、ライトスケールやパートナー各社が作成したサーバテンプレートがMultiCloud Marketplaceで公開されているため、ここから入手してすぐに使い始めることができるようになっています。

 MultiCloud MarketplaceにはDBサーバのように機能別に構成されたテンプレートから、ブログなどのアプリケーションをすぐに立ち上げることができるテンプレートまで、さまざまなサーバテンプレートが提供されています。

図6 MultiCloud Marketplace 図6 MultiCloud Marketplace

 MultiCloud Marketplaceでサーバテンプレートを入手すると、依存関係にあるRightスクリプトとマルチクラウドイメージが一緒に取り込まれます。また、監視が有効になっているサーバテンプレートには標準的なアラートが設定されています。これらのサーバテンプレート、Rightスクリプトおよびアラートの設定は、必要に応じてカスタマイズすることも可能です。オリジナルのサーバテンプレートを作成するときは、MultiCloud Marketplaceで入手したサーバテンプレートを参考にすると効率良く設計できるでしょう。

Amazon Web Servicesとの違い

 RightScaleというとAmazon Web Servicesの管理ツールとしてのイメージが強いのではないでしょうか。私見にはなりますが、AWS Management ConsoleやAWS CloudFormationといったRightScaleと似通ったサービスとの違いについて説明したいと思います。

 まず、AWS Management Consoleで行えるすべての操作が、RightScaleで同様に行えるわけではありません。RightScaleはコンピューティングリソースをいかに有効に使うかというところに注力しています。これはAmazon Web Servicesでいえば、Amazon EC2で提供される範囲に当たります。

 RightScaleからロードバランサ(Elastic Load Balancing)やデータベース(Amazon RDS)の管理を行うことも可能ですが、どちらかというとGUIを提供している程度にとどまっています。なぜなら、Elastic Load BalancingやAmazon RDSといったPaaS (Platform as a Service) に近いサービスは、他のクラウドで同じように提供されるわけではないため、ポータビリティを失う可能性があるからです。

 もちろん、RightスクリプトからAmazon Web ServicesのAPIを呼び出すことは可能です。しかし、RightScaleはクラウドのAPIを知らなくても管理が行えることを目指しています。システムを安定稼働させるために、クラウドのAPIに精通している必要はないというのがRightScaleの考え方なのです。

 一方、CloudFormationはRightScaleのコンセプトと似ているサービスです。ロードバランサやデータベース、アプリケーションサーバなど、システムを構成する一連のサービス群の立ち上げから構成までを自動化することができます。運用においても、Amazon CloudWatchで監視を行うこともできますし、Amazon RDSでは冗長化やバックアップがサービスとして提供されています。

 この点については、CloudFormationはAmazon Web Servicesを活用する方法を提供しているのに比べ、RightScaleはコンピューティングリソースとしてのクラウドを活用し、サーバテンプレートによってシステムを自由に構成できるという違いがあります。

 RightScaleはコンピューティングリソースを調達し、システムを構築、運用するためのベストプラクティスを提供します。Amazon Web Servicesに限定されることなく、パブリッククラウドとプライベートクラウドのリソースを使い分け、クラウドの機動性、伸縮性を活用し、コスト削減を実現できる最適なサービスといえるでしょう。

 次回は、実際にRightScaleを使ったサーバの立ち上げについて説明したいと思います。RightScaleには、Amazon Web Servicesのアカウントを持っているユーザーであれば無償で使えるFree Developer Editionもありますので、興味を持たれた方はぜひチャレンジしてみてください。


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