「Java News.jp(Javaに関する最新ニュース)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします(編集部)
よく論文のことを紹介するときに「巨人の肩の上に立つ」という言葉が引用されます。これは、「現代の研究の成果の多くは、過去の多くの研究の蓄積によるもので、その研究自体は小さなものでも巨人の肩の上に乗っており、とても背が高く、高いところに到達できるのだ」ということです。
この言葉はプレゼンテーションの世界でも成り立つような気がしています。過去の素晴らしい発表や、自分自身の過去の発表を基に、より新しい充実したプレゼンテーションが可能になるのではないでしょうか?
プレゼンテーションにも、いろいろな場面といろいろな目的があります。研究発表や、製品やサービスの発表としてのプレゼンテーション。誰かと共同作業をするための説明としてのプレゼンテーション。発表内容にコメントをもらうため、または知識を伝えるためのプレゼンテーションもあります。
例えば、アップルの開発者向けカンファレンス「WWDC」の発表資料やグーグルの開発者向けカンファレンス「Google I/O」など、大規模カンファレンスの発表資料/発表ビデオを見ることで、最新の技術情報はもとより、プレゼンテーションとしての要約のテクニック、話し方や、発表の態度など、しゃべりとしてのプレゼンテーションテクニックが学べます。
また、上記で紹介したWWDCやGoogle I/Oのような技術的なプレゼンテーションの他にも、ある特定分野に優れた多くの著名人のプレゼンテーションを集めた「TED」も参考になります。
多くのTEDプレゼンテーションには字幕が付けられており、内容も感銘を受ける素晴らしいものばかりです。人を引き込むプレゼンテーションは一種のエンターテインメントでもあるのでしょう。TED専用のiPad/iPhone用アプリも便利に使えます。
プレゼンテーションの依頼があったり、どこかでプレゼンテーションをしなければならなくなったとき、ゼロから資料を作り始めるでしょうか?
大抵は過去の資料を修正したり、追加したり、参照したりして作成するでしょう。最終的には、最初に参照した資料の見る影もなくなってしまうかもしれませんが、全くのゼロから作り始めるのはなかなか難しいものです。ゼロから作り上げるのではなく、紙の上で構想やストーリーを練ってからコンピュータに向かう方法もお勧めです。
プレゼンテーション資料を作り上げる際、プレゼンテーションのスタイルや、技術的資料を、既存のプレゼンテーション資料に求めるのも状況によっては便利な方法です。もちろん、参考程度にしてください。決して盗用してはいけません。
SlideShareは、さまざまな分野のプレゼンテーション資料が公開/共有されているサイトです。キーワード検索で、目的の分野の発表資料を数多く参照できます。
海外のプレゼンテーション資料が多いですが、日本語のものも増えてきています。最近では、SlideShareのプレゼンテーションにはてなブックマークがたくさん付くことも珍しくありません(参考:SlideShareの人気エントリー)。
TechTargetは、さまざまな企業の製品発表や、企業の方々の講演資料が公開されています。
意外に思われるかもしれませんが、通常のGoogle検索で、「filetype:pdf」もしくは「filetype:ppt」と指定したうえでキーワード検索すると、さまざまなプレゼンテーション資料を見つけることができます。
Youtubeのキーワード検索で「tech talk」「presentation」などを組み合わせて検索すると、各所で発表された映像を見つけることができます。
プレゼンテーションの際には、その本筋である内容の他にも周辺情報や統計情報、世の中の動きなど、さまざまな情報を分かりやすく説明する必要があります。それらの情報の入手先や、グラフの見せ方として以下のサイトやサービスが役立ちます。
iPhone/iPadの無料のグラフツールです。数値情報のグラフ化/可視化のさまざまな見せ方を知ることができます。見るだけなら無料ですが、自身のデータからグラフを作成する場合は有償です。
RoambiのWebサイトにエクセルファイルからデータを登録し、Roambiの見栄えの良いデータグラフに加工できます。さまざまなサンプルグラフをパラパラと見ることによって、表現の仕方に工夫ができることでしょう。
VisualZooは経済データのグラフやチャートを作成するためのサイトです。IT系、携帯電話系の調査データもいくつか登録されています。
例えば、携帯電話の契約数データや、インターネットの利用場所の調査データなど信頼性のあるデータを小額または無料で手に入れることができます。
生活に密着した「食べる/住む/学ぶ/暮らす/生きる/働く/費やす/遊ぶ/気になる/流行る/伝える/守る/病む」といった観点から、さまざまなリサーチデータを紹介するサイトです。
例えば、家電製品の購入希望ランキングや、インターネットショッピングに関する購買情報など、一般にはなかなか見つけにくい役立つ情報が揃っているのが特徴です。
リサーチ情報の共有サイトです。「○○をグラフ化してみる」「前年比○○%」など、さまざまなニュース記事から数値情報を探せます。
リサーチ情報のクリップが共有されているため、自身が気になったデータをクリップしておくと便利です。
先に紹介したSlideShareなどは、プレゼンテーション資料の共有や保存には、とても便利に活用できますが、プレゼンテーション資料そのものを作ることはできません。
ここでは、PowerPointやKeynoteがなくとも、オンラインツールだけでインパクトのあるプレゼンテーションが作れるサイトを紹介します。
ダイナミックなズーミングインターフェイスを活用したプレゼンテーションツールです。見え方も吸引力のある驚きの見栄えですが、それだけではなく、プレゼンテーションのストーリーを編み出すことにも長けたツールです。
紙芝居を作るようなプレゼンテーションではなく、一枚の大きな画像の細部に焦点を当ててプレゼンテーションしていくのです。無理やり日本語の文字でも一応使えますが、フォントや日本語対応は今後に期待というところです。
Google I/O 2011の多くのプレゼンテーションで使われたHTML5スライドのテンプレート編集ツールです。HTMLを直接テキストエディタで手軽に編集できます。
他のプレゼンテーションツールに比べ、必要最低限の機能しかないように思えますが、ベースがHTMLなので、JavaScriptやWebGLの実行コードを直接スライドに記述できるのが便利なところです。
静的な動かないプレゼンテーションではなく、写真/動画/音楽を素材として、「映像」プレゼンテーション素材を作るためのサービスです。何気ない素材の組み合わせでも animoto のエフェクトで魅力的な映像になります。
人々を引きつけるプレゼンテーションとしてアップルのスティーブ・ジョブス氏のプレゼンテーションがよく取り上げられます。そのプレゼンテーションの秘けつやエッセンスがつまった本があり、人前で少しでも発表することのある人全てにお勧めの本です。
もう一冊、いろいろ資料を作ってプレゼンテーションしても、なぜだかあか抜けなく、つまらない資料になりがちで困っているようなとき、印象に残る素晴らしいプレゼンテーションを作るための指針/テクニックが書かれた本として、「プレゼンテーションzen」がお勧めです。この本は何もデザイナでなくとも、実践できる事柄が数多く紹介されています。
最後に、実際にプレゼンテーションを行うことになったときの大事な注意点を紹介します。例えば、プレゼンテーションが必要な外出先や講演先で自分のパソコンが急に動かなくなったとき、どうしたらよいのでしょうか?
普段なら何のことはない資料やファイルも、プレゼンテーション間近の緊張している状況であれば、その焦りもなおさらです。万全の準備をしているはずでも、プレゼンテーションの現場ではどんなトラブルがあるか分かりません。
直前までうまく動いていたデモも、本番だと突然動かなくなることもあるのです。プレゼンテーションが何回か連続で上手くいくと、そういったトラブルが発生するかもしれないことを忘れてしまいがちです。常日ごろから、ファイルのバックアップ、機材やファイルのバックアップ体制を整え、デモの練習を万全に、プレゼンテーション会場/ビル内会議室内のネットワーク環境を確認しましょう。
先に紹介したSlideShareなどに自身のプレゼンテーションファイルをアップロードしておくのも、良い手です。ネットワーク環境こそ必要ですが、万が一手持ちのパソコン機材が使えなかった場合、誰かのパソコンを借りてSlideShareなどにアクセスし、プレゼンテーション資料を呼び出して使えます。
最近のプレゼンテーションの特徴としては、非マイクロソフト系のイベントでは、PowerPointをあまり見かけず、PDFやアップル製品「iWork」の1つ「Keynote」、Webブラウザ(HTML5)だけでのプレゼンをよく見かけます。本稿で紹介したさまざまなオンラインツールを発表の場で使うことも増えてきたようです。
開発者向けのプレゼンテーションでは、2名の技術者が掛け合い漫才のように、話題をふりながらテンポ良く発表する場も比較的多く見られるようになりました。
プレゼンテーション、発表の場数をこなし、経験を積むのもプレゼンテーション上達の道のりの1つです。本稿で紹介した、ツールや手法を駆使して、「プレゼンテーションの巨人」の肩の上に立つだけではなく、読者自身も「プレゼンテーションの巨人」を目指してみてはいかがでしょうか。
次回記事は、2011年9月初めごろに公開の予定です。内容は未定ですが、読者の皆さんの興味を引き、役立つ記事にする予定です。何か取り上げてほしい内容などリクエストがありましたら、編集部や@ITの掲示板までお知らせください。次回もどうぞよろしく。
安藤幸央(あんどう ゆきお)
1970年北海道生まれ。現在、株式会社エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。
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所属団体
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)
主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)
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