「Java News.jp(Javaに関する最新ニュース)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします(編集部)
各種アプリストア(または、アプリマーケット)の登場で、開発者、アプリ提供者、購入ユーザーを取り巻くポジティブなループが構築されつつあります。
アップルのiTunes App Storeが登場して以来、iPhone/iPad/iPod touchといったiOS端末向けのアプリ(アプリケーション)を、とても手軽に入手して使えるようになりました。
2011年1月23日には、iTunes App Storeのダウンロード数が100億本を超えたという報道がありました。100億本目のアプリをダウンロードした人には、1万ドル分のiTunesギフトカードがプレゼントされたそうです。
現在、iTunes App Storeには35万種類以上のアプリがひしめいているといわれています。iTunes App Storeでランキング上位を保持することは大変難しいことになりましたが、全世界で約1億6000万人といわれているiOS端末ユーザーにアプリを届ける市場が開けていることは、開発者やアプリ提供者にとって大きな魅力です。
最近は、携帯端末だけではなく、Mac OS X搭載のノートパソコンやデスクトップパソコン用のアプリをオンライン販売するMac App Storeが開設されました。Mac OS X 10.6.6 環境にアップデートすると利用できるようになります。Mac App Storeでは iTunes App Storeと同じ感覚で、Mac OS X用のツールを購入しインストールできます。
Adobe Photoshopのような画像処理ツールである「Pixelmator」は、Mac App Store開設から最初の20日間で100万ドルの売り上げがあったそうです。
もともとPixelmatorはオンラインでダウンロード販売もCD-ROM販売も行われていたソフトですが、今回Mac App Storeでキャンペーン価格を提示したのとともに、とても簡単にソフトを購入できる手軽さが功を奏したようです。
信頼感と、購入の手軽さ、ダウンロード/インストール/アップデートの手軽さ、1つ1つは小さなことかもしれませんが、これらの複合要素で、ユーザーがアプリを購入し使い始めるまでの障壁が取り払われるようになりました。
ある1つのソフトをアプリストアでダウンロードし使い始めることの手軽さを知ってしまえば、他のソフトにも興味の対象は広がるはずです。より多くの種類のソフトを知る機会、使う機会が増えることにつながっています。
またアプリストアは、開発者、アプリ提供者にとっても手軽さがあります。ダウンロードファイルの配布や、サーバの管理、アプリ販売費用の集金など数々の面倒な部分をアプリストアが引き受けてくれるからです。開発者は開発、アプリ開発者はマーケティングや宣伝など、本来の仕事に集中できます。
「手数料を取られるのがイヤだ」という意見もありますが、アプリストアのインフラを維持する手間やコストを考えると妥当といえるのではないでしょうか?
また、無料アプリを登録/配布するのに開発者登録費用以外、実質費用が掛からないのも利点です。山のようなソフトの箱やパッケージの在庫を抱えなくてもよくなり、流通/配送コストを考えると。この市場を活用しない手はないでしょう。
旧来、Android携帯端末用のアプリをインストールするには、携帯端末上でAndroid Marketのアプリを起動し、探しにくいユーザーインターフェイスを駆使して、似たようなアプリがたくさんある中から、何とか目的のアプリを探し当てインストールするといった手間がありました。
Webやブログ、メールなどで良いアプリを知ったとしても、そのアプリを実際にインストールすることは手軽ではありませんでした。
そんな中2011年2月3日、Android Marketが更新され、PC上のWebブラウザから手軽に探せるようになりました。
しかも、WebブラウザでAndroid Marketを検索し、無料アプリを選択したり、有料アプリを購入すると、Googleアカウントに紐付いた自身のAndroid端末に自動的にインストールされるのです。
また、アップルのApp Storeでは、アップルが規定した段階的な価格の中から販売価格を選びますが、Android Marketでは、各国の通貨ごとに設定できるようになるそうです(現在は米国のみ、各国の開発者向けにも準備中とのこと)。これによって、現在のような日本円で81円といった中途半端な価格ではなく、切りの良い数字や、198円といったセール風の価格付けが期待されます。
さらに、iOSの「In App Purchase」と同様にアプリ内課金「In-app Billing」が可能になりました。これはAndroid端末のAndroid Marketアプリのアップデート後の対応になるそうです。
iPhone/iPadが、PCと接続してさまざまなデータを扱うのに対して、新しいAndroid Marketはネットワークの活用によって手軽さと利便性を増大させました。アプリを広く数多く使ってもらうには、いかに「手軽か?」が重要な要素となるのでしょう。
アプリストアはiPhone/iPadやAndroidだけのものではありません。携帯端末メーカーやPCメーカー、キャリアなどが独自のプラットフォームを形成して、開発者やユーザーの囲い込みを狙っています。
Nokia Ovi Storeは世界中で利用されているノキアの端末向けのアプリストアです。主にスマートフォンをターゲットとしています。開発者はアプリストアに公開したアプリから70%の利益を得ることができます。
ソーシャル的な要素が取り入れられており、知人が購入したアプリを知ることで、さらにアプリが広がる要素を備えています。Nokia Ovi StoreはPCからも使用可能で、Webブラウザでアプリを探し、携帯電話に送信して使うこともできます。
Intel AppUpは、ネットブックユーザーと、主に開発者を支援するアプリストアです(現在、北米のみ)。他の携帯端末で圧倒的なダウンロード数を誇るゲームアプリ「Angry Birds」がここでも勢力を誇っています。インテルのAtomプロセッサを搭載したWindowsとLinuxネットブック向けのアプリマーケットです。Adobe AIRベースのアプリも提供されています。
インテルの審査を経てアプリケーションが公開され、開発者は売り上げの70%を取得できます。
Google Apps Marketplaceはグーグルが提供するクラウド系のサービス、Google Apps向けのアプリストアです。Google Apps(カレンダー、メール、ドキュメント、グループ、サイト、ビデオ)を活用したアプリケーション、Webサービスがマーケットに並んでいます。Google Appsを使わずとも、他のWebサービスを組み合わせたものも公開できます。
登録にはグーグルの決済サービス「Google Checkout」を使い100ドル支払う必要があります。公開に至るまでには、審査の過程があります(通常48時間以内に審査されるそうです)。
主にエンタープライズ向けのアプリが主流です。開発者は販売額から 80%の利益を得ることができます。GmailやGoogle Docsなどのユーザーは数多いので、便利ツールや、管理ツールなど、潜在マーケットは巨大です。
Chrome Web Storeは、WebブラウザGoogle Chrome用の拡張機能やテーマ、Webアプリのためのアプリストアです。WebアプリはHTML5+JavaScriptで実装されているものが多く、Google Chromeの機能を十分に生かすためのものとなっています。来たるChrome OSのためのアプリストアとなることも予想され、要注目です。
BlackBerry App WorldはRIM(Research In Motion)社のスマートフォンBlackBerry用のアプリストアです。BlackBerry IDによって、古い機種から新しい機種に乗り換えたときにアプリを買い直さなくてもいい仕組みになっています。開発者者はアプリケーションを登録するためにベンダ登録します。200ドル必要です。
個人開発者というよりも、企業向けのアプリケーション配布サービスを主流に考えているようです。
日本ではBlackBerry App Worldとは別に、「ドコモスマートフォンアプリサイト」から、多数のBlackBerryアプリが登録されています。有料のアプリはクレジットカード決済で購入できます。
その他、プラットフォームは違えど、さまざまなアプリマーケットが多く拡充してきています。
以下のように、アプリストアを作るためのSDKまで提供されているので、アプリストアは今後も増えるかもしれません。
近い将来、箱に入ったパッケージ販売は過去のものとなり、すべてのソフトウェアはダウンロード配布/販売になることでしょう。本のように、アプリを友達同士で貸し借りしたり、プレゼントしたりするのが一般的になるかもしれません。
そして、アプリストアを取り巻くさまざまなサービスの台頭が予想されます。
などなど、単にアプリストア内のランキング以外にも、“自分が求めるアプリ”を知る方法が求められているのです。
最後に、アプリストアに関する情報をまとめて紹介しておきます。
アプリの人気は高まる一方です。雑誌の特集になったり、最近では何と日米でアプリを紹介するTV番組まで現れ始めました。
次回記事は、2011年4月初めごろに公開の予定です。内容は未定ですが、読者の皆さんの興味を引き、役立つ記事にする予定です。何か取り上げてほしい内容などリクエストがありましたら、編集部や@ITの掲示板までお知らせください。次回もどうぞよろしく。
安藤幸央(あんどう ゆきお)
1970年北海道生まれ。現在、株式会社エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。
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OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)
主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)
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