走るブタは、その名の通り「ピンクのブタが疾走する」アプリだ。「スーパーマリオ」……じゃなくて「高橋名人の冒険島」のような横スクロールのゲームで、ジャンプして穴や柵を飛び越え、敵をかわし、アイテムを取りながら、ステージクリアと好タイムを目指す。
加速度センサを使って端末の傾きでブタのスピードを調整し、画面タップでジャンプするという、非常にシンプルな操作方法だが、それ故にハマる。加えて「キノコを取るとタイムが1秒マイナス」「水色の棒(上下反転棒)を取るとステージの上限が反転」(反転させないとクリアできない作りのステージもある)など、アクションパズルの要素もあり、やり込み度は高い。
アプリ名:走るブタ
作者:栂井良太(とがい りょうた)
価格:無料
さらに、「友人などにもステージを作ってもらえるように」と、ステージデータを制作する専用エディタ(Windows版)まで用意してしまった。
一番驚いたのは、学生でお金がなくてWindows Phoneを買うお金がないから、実機で動かすのはこの日が初めてだったという事実。シミュレータがあるとはいえ、実機がない状態での開発は簡単ではないはず。それがアクションゲームとなればなおさらだが、若さと情熱で克服した。ちなみに、制作期間は2週間とのこと。
【審査員のコメント】
高橋名人 「できればステージエディタもWindows Phoneのアプリにしてほしいです。昔「ロードランナー」というゲームがありましたが、ステージのエディット機能が付いていて、世界中の人が作りました。そこから生まれたのが『チャンピオンシップロードランナー』です」
安齋氏 「僕が気になってしまうのは、果たしてブタはキノコは好きなのか? 毒キノコはなくていいのか? そういうところです。友達にみうらじゅんというブッダ好きの男がいますが、『走るブッダ』とかどうですかね。ブッダをコントロールできるようになったら、人間として相当な高みに行けると思います」
アプリ名:トイレに行きたい!!
作者:小島努(豆蔵)
価格:無料
小島氏はプレゼンで、長い歴史の中で発明されてきた数々の文明の利器について紹介。土器や活版印刷、車輪……コンピュータ、インターネットと続き、最新の道具がWindows Phoneで、さらにその中でも役立つアプリが「トイレに行きたい!!」であるとアピールした。
「トイレに行きたい!!」は、GPSで現在位置を検出し、地図上に周辺のトイレを示してくれるアプリだ。外出中に急にトイレに行きたくなったときなど重宝する。
トイレに関するデータは、Webサイト「自転車大好きマップ」から、APIを使ってマッシュアップしている。人類が長年抱えてきた重要な生理現象の課題を解決する偉大なアプリであり、「人類の大きな進歩である」と小島氏は語った。
【審査員のコメント】
中村氏 「プロの方が登場しましたが、その前は18歳の学生さん。プロも学生も一緒のステージで競うというのは、非常に面白いですね」
大場氏 「うちにも小さい子どもがいるので、トイレの重要さはよく分かります。次はぜひ、おむつ交換所や家族トイレの場所を検索できるようにしてもらえるとありがたいです」
アプリ名:よつばさがし
作者:林陽一
価格:90円(四つ葉が1本だけの無料評価版あり)
「よつばさがし」は、生い茂るクローバーの中から幸運の四つ葉を探すというアプリ。ゲーム性はあるが、美しいグラフィックは「ただ触っているだけ」でも十分楽しめる。
操作は簡単で、画面をスワイプでクローバーをかき分け、ダブルタップで引き抜く。四つ葉を引き抜いたら見事大当たりとなるが、密集するクローバーの中から探すのは結構難しい。引き抜いたところはスキマができるので、辛抱強く探し続ければいつかは見つかる。
一番目を引くのは、専用の物理エンジンまで開発して表現したクローバーのサワサワ感。マルチタッチにも対応していて、かなり力が入っている。といっても、エンジンの開発は1日、アプリも3日ほどで完成したというから驚き。有料版では、六つ葉まで用意されている。四つ葉は1000分の1、五つ葉は1万分の1。六つ場も10万分の1の割合で含まれており、おまけにマンドラゴアもあるという。もちろん引き抜かれると苦悶の表情を浮かべるそうだ。
【審査員のコメント】
高橋名人 「(小島氏と司会とのやりとりに対して)今、お話の中で宝箱的なアイテムとありましたが、僕はゲーム性はなくてもよいので、いつまでも触っていて、癒やされるという方向性がよいと思います。ゲーム性を入れるとつまらなくなるというか、癒やし感がなくなるような気がします」
安齋氏 「さっきから隣で中村先生がず?っとやってるんですけど、全然見つからないですね。これは、サルのノミ探しとか、おじいさんの白髪探しとか、ネコのシラミ探しとか、探しもののパターンでいろいろできそうですよね」
アプリ名:顔だし看板
作者:赤木幸生(南国ソフト)
価格:無料
「顔だし看板」は、観光地などによくある、顔を出す穴が開いている看板をバーチャルで再現したアプリだ。実際の顔出し看板は、その土地を訪問した記念として撮影するが、このアプリはそれがいつでもどこでも可能になる。
その土地に行かずとも、写真だけは「旅行した感」が味わえる、一種のARアプリともいえる。
用意されている日本各地のキャラクターを選ぶと撮影モードに入るので、画面の穴に顔が収まるようにして撮影する。
【審査員のコメント】
安齋氏 「(※安齋氏は「勝手に観光協会」で活動中)顔出し看板は、全国各地で散々やってきました。看板から顔を2〜3mm出して頬に風が当たったときの感じこそが顔出し看板の醍醐味です。それをこんなふうに作ってしまったら台無しで、アリバイ工作にしか使えませんよ。その点を踏まえて、今後の開発でより素晴らしいものにしてほしいと思います。まずは実際に自分で顔を出してみることから始めてください」
大場氏 「元エンジニアの視点で言わせてもらうと、顔を出す穴がちょっと小さ過ぎますね。そこが改善されると、とても楽しいアプリになると思います。動物園のサル山のサルとか、子ども向けのバリエーションも増やしてみるとよいのではないでしょうか」
アプリ名:キッカケカメラ(KIKKAKE CAMERA)
作者:青木賢太郎
価格:無料
ステージに上がった青木氏は、ネットやSNSなどの普及によって世界中でリア充が激減し、出会いのキッカケが少なくなっていると指摘。これを解決するのがWindows Phoneであり、青木氏が開発したアプリ「キッカケカメラ」だ。
「キッカケカメラ」は、「写真撮影を通して誰かと仲良くなるキッカケ」を作ることができる。「すいません、写真を撮ってもらえませんか?」というやりとりは、世界中で見られる人類共通のコミュニケーションメソッド。「キッカケカメラ」には、それを強力にサポートする機能が備わっている。
例えば、撮影を頼んだ相手に対して、撮影される人(つまりWindows Phoneの持ち主)との相性が数値で表示されたり、メッセージが表示されたりといった機能がある。「あれ、この人と私って相性がいいの?」「え、何か書いてある!」といった、単なる撮影から関係を広げるためのキッカケ作りができてしまう。この点数やメッセージは、実はユーザーが自由に設定できるもので、要するに仕込み。意中の相手に「相性95%」と出るようにしておけば、意識してもらえる(かも)というわけだ。
「面と向かって気持ちを伝えられない人でも、このアプリでキッカケを作ることができる。ひいては、人類を救うことになる」と青木氏は語った。
【審査員のコメント】
中村氏 「確かに人類を救うことになるかもしれませんが、そもそも「写真を撮ってください」と言えないような人はどうすればいいのという疑問はあります。でもこのアプリが、世界中のリア充ゼロの若者に対して、一歩前に踏み出すキッカケになるとよいですね」
高橋名人 「僕の場合は、写真を撮ってもいいですかと聞かれる方が多くて、自分からお願いする機会はあまりないです。でも、そもそもそれが言えるなら、このアプリは要らないんじゃないかなという気も……。とはいえ、ケータイのほとんどにカメラが付いているので、それを使って何かするというアイデアは面白いです」
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