マイクロソフトが提供している無償のオンライントレーニングサイト「Microsoft Virtual Academy(MVA)」の基礎を解説。
仮想化からクラウドコンピューティングへ、ここ数年で企業を取り巻くITトレンドは急激に変化しており、クラウド関連の新しい製品や技術が次々と登場してきている。こうした中で、社内システムの運用管理を担うITエンジニアにとっては、日々の忙しい業務をこなしながら、クラウドに関する知識をいかに身に付けていくかが大きな課題になりつつある。
しかし、いざ学習しようと思っても、一般的な教育プログラムでは高い受講料がかかったり、最新のクラウド技術まで対応していなかったり、専門書では内容が高度すぎたりと、効果的に学べる環境が整っていないのが現状だ。そこで、ITエンジニアがクラウド技術を手軽に学習できるトレーニングサービスとして、日本マイクロソフトが今年3月にスタートしたWebサービス「Microsoft Virtual Academy」(以下、MVA)が注目を集めている。
MVAは、Windows Live ID を使えば誰でも使える無料のオンライン講座だ。特徴はいくつかある。
まず、Hyper-V、SQL Server 2012、System Center 2012など、比較的新しい技術を扱っていること。
「インフラ」「仮想化」といった、クラウド技術に関連の深いコンテンツに特化していること。
そして、グローバル規模で展開しているサービスであることだ。コースは、5月初旬時点で30種類強。世界共通の英語コンテンツと、日本オリジナルのコンテンツが混在している。
日本マイクロソフト 藤山裕子氏に話をうかがいながら、MVAについて解説する。
「東日本震災以降、日本でもクラウドを導入する動きが本格化しており、プライベートクラウドからハイブリッドクラウドへの流れも加速しつつあります。一方、実際にシステムを運用管理しているITエンジニアの多くは、クラウド技術の急速な発展に対して、十分な知識を得られていないのが実状です」
藤山氏は、日本におけるクラウド技術の現状について、このように分析する。
同社が「MVA」を提供する理由は、最新のクラウド技術についてITエンジニアがもっと積極的に学べる環境を提供すること、ITエンジニアの知識レベル向上を支援していくことだという。
もともとMVAは、ラテンアメリカで立ち上がった、一風変わった歴史を持つ。ラテンアメリカのITエンジニアは、自ら積極的に学ぼうとする意識が強く、こうしたITエンジニアのニーズに応えるためにMVAがスタートしたという。2011年7月には米国本社での正式サービスが稼働し、世界各国で展開されている。日本でスタートしたのは2012年3月。まだまだ新しいサービスだ。
「MVA」では、ITエンジニアが自分に必要な技術を自分のペースで受講できるように、学習テーマや内容ごとにさまざまなコースが用意されており、受講終了後にはテストにチャレンジすることで自分の理解度を確認できる。
日本では、現在約30コースを提供しており、そのうち日本語のコンテンツは本記事公開時点で、以下の9トラックである。
各コースは、いくつかの「モジュール」で構成されている。利用者はまず、各モジュールからドキュメントや動画などの学習教材をダウンロードする。この教材を使って学習した後、テストを受け、正解率が70〜80%に達すれば合格となり、ポイントを獲得できる仕組みだ。
ポイントは、学習教材を読むだけでも獲得できる。テストには制限時間が設けられているが(10分程度)、教材の内容をしっかり理解すれば解ける問題だ。また、クリアするまで何度もチャレンジできる。
「3月にスタートして以来、まずは日本語コンテンツの数を増やすために、英語版の翻訳を優先して進めてきたが、これからは日本独自開発のコースも積極的に提供していきたい」と藤山氏は語る。
米国で作った英語コースと、日本語コースの違いはどこにあるのか?
英語コースは、ややレベルが高く、上級者向けの内容になっている。そのため、かなりの専門知識が求められ、社員でも簡単にクリアできないコースもあるほどだという。
また、日本語に翻訳してみると、日本のビジネス事情とは少しずれていると思う部分もあることから、日本のエバンジェリストや製品担当者がスクラッチ開発する、日本独自のコースを今後は積極的に増やしていく予定だ。
さらに、米国ではプライベートクラウドがかなり一般化してきているが、日本はこれから導入するというステータスの企業が多い。そのため、日本では、プライベートクラウドに関する技術をこれから学ぼうというITエンジニアを対象に、初心者を意識したコース作りを進めているという。
これに加えて、「MVA」ならではの特徴として見逃せないのが、受講内容に応じてポイントを獲得できることだ。獲得ポイント数に応じて、メンバーのレベルが、
と昇格していく。ポイントはランキングで競うのだが、ユニークなのが、「自国ランキング」と「世界ランキング」という2つのランキングを用意しているところだ。
「すでにMVAに登録しているメンバーだけでなく、まだメンバーになっていないITエンジニアも、このキャンペーンをきっかけにMVAを活用してもらい、楽しみながらクラウド技術の知識を身につけていってほしい」と、藤山氏は語る。
今後の展開としては、日本語コースの拡充を図るとともに、オフサイトのトレーニングとの連携を強化していく方針。「当社では、NECラーニングと共同で無償ハンズオンセミナーなどを展開しているが、こうしたオフサイトのトレーニングとMVAのオンライン学習を連携させることで、クラウド技術への理解度をより深めることができると考えている」と藤山氏。すでに、「System Center 2012」のコースについては、ハンズオンセミナーの前に受講しておくことで、セミナー内容がより理解しやすいようになっているという。
「日本でのMVAはまだスタートしたばかり。今後、さらに日本語コースの内容を充実させ、クラウド技術の知識レベルを高めたい多くのITエンジニアを支援していく。6月末には8000人まで登録メンバーを増やしたい」と、藤山氏は意欲を見せている。
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