マイクロソフトが提供している無償のオンライントレーニングサイト「Microsoft Virtual Academy(MVA)」の基礎を解説。
オンライントレーニングサイトMicrosoft Virtual Academy(MVA)の問題を解きながら、「意外と知られていないマイクロソフトテクノロジ」について紹介します。今回のテーマは「プライベートクラウド」。
皆さんは「プライベートクラウド」と聞いて、システムのイメージをはっきりと思い浮かべることができますか? それとも、Hyper-VやVMwareで仮想化した環境=プライベートクラウドだと思っていませんか?
大きな声では言えませんが、クラウド専門のベンダ企業の社員でさえも「仮想化=プライベートクラウド」「大規模データセンター=プライベートクラウド」であると誤解している場合があります。MVAの問題を解きながら、「プライベートクラウドとはなんぞや」を学びましょう。
まずは問題です。
【問題1】
データセンターが、プライベートクラウドであると見なされるために提供しなければならない機能は何ですか?
正解は3.です。1.はパブリッククラウドに関する記述です。2.および3.は仮想化について説明したものです。
プライベートクラウドとしてデータセンターに実装されるべき機能は必ずしも3.だけではありませんが、これが最も基本的な要件であると言えるでしょう。
Windows Azure などのパブリッククラウドでは、必要に応じてサーバインスタンスを作成して利用できますが、プライベートクラウドでも、同様のことがオンプレミスのデータセンターで実現できる必要があります。つまり、「リソースを使いたい人(システム)が使いたいときに使える環境」でなければ、プライベートクラウドだとは言えません。もちろん、一連のプロセスは基本的に自動化されていることが前提です。
では、プライベートクラウドについて、もう少し詳しく解説しておきましょう。
「プライベートクラウドとは何か」を理解するためにはまず、利用者が仮想マシンを要求して取得するまでのプロセスや仕組みを理解する必要があります。
多くの組織では、利用者が仮想マシンの管理者に対して、仮想マシンの利用を要求します。そのリクエストを受け取った管理者は、何らかのプロセスを実行して、その要求を許可するかどうかを判断します。
ここで問題が発生します。仮想マシンの発行が管理者の忙しさに影響される、という問題です。すぐに使いたいにもかかわらず、1週間以上待たされる……なんてこともあり得ます。
こうした状況を変えることが、プライベートクラウドの主な目的です。プライベートクラウドでは、管理者はツールを使用して、プライベートクラウドの環境を設定できます。その中には、クラウドを利用できるユーザーやグループ、リソースのクオータなどを設定できます。
利用者は、セルフサービスポータルを使用して管理者から与えられた権限やリソースの範囲で、自由にバーチャルマシンを要求し使えるようになります。要求から発行までの間にシステム管理者が介在しないため、たとえ夜中でも休日でも、ストレスなく環境を手に入れることができます。
こうしたアプローチはIaaS(Infrastructure as a Service)と呼ばれますが、プライベートクラウドは組織のデータセンターの中における IaaS を提供するものであると考えられます。
さて、次の問題にいきましょう。
【質問2】
マイクロソフトの最新の運用管理製品は System Center 2012です。この中には、8種類のコンポーネントが含まれています。次のコンポーネントのうち、仮想マシンのセルフサービスポータル機能を提供しているものはどれでしょう?
正解は5.Virtual Machine Manager です。そのまんまの名前ですね。
Virtual Machine Managerを使用すると、VMwareを含めた仮想化基盤の統合管理が行えます。事前に仮想マシンのテンプレートを用意しておき、ユーザーからの要求に応じて、新しい仮想マシンを負荷やリソースの状態などが考慮された最適な物理サーバ上に展開できます。利用者はセルフサービスポータルから自分に割り当てられた仮想マシンに接続したり、必要に応じて再起動を行うことも可能です。
なお、System Center 2012 の全体像、およびその他のコンポーネントについては、以下のオンライントレーニングで確認できます。
トレーニングでも触れられていますが、仮想化によりサーバ筐体の数が減少することで、電力やハードウェアにかかるコストは削減します。一方、仮想化でサーバ自体の数が増加しているため、管理や運用にかかるコストが増大し続けています。管理や運用にかかるコストを削減する役割を、このSystem Center 2012が果たすという位置付けです。
さて、プライベートクラウドによって仮想マシンをオンデマンドで提供できるようになると、必然的に次のようなニーズが出てきます。
「複数のバーチャルマシンに渡って実行される多層アプリケーションを展開したい」
つまり、アプリケーションの展開についても最大限に効率化を図りたいとうニーズです。
実は、System Center 2012 はアプリケーションに特に重点を置いています。このことについて、パブリッククラウドとの違いを含めて説明しておきましょう。
プライベートクラウドでは、社内データセンターの運用効率や利用効率を高めることができます。しかし、新たにアプリケーションを展開して利用したいと考えた場合、パブリッククラウドのプラットフォームが最適な選択肢になりえるかもしれません。
パブリッククラウドでは、仮想マシンを時間単位でレンタルでき、使用した分の料金を支払うだけで済みます。そのため、一時的に需要が極端に大きくなるようなアプリケーションの場合は、社内にインフラをパブリッククラウドで稼働した方が、安く済ませられます。
パブリッククラウドとプライベートクラウドのどちらを選択すべきか? という質問をよくいただきますが、パブリッククラウドとプライベートクラウドは、それぞれ異なるビジネス問題に対処するためのソリューションであることを理解しておかなければなりません。ニーズによっては、両方を併用する場合もあります。ハイブリッドクラウドと呼ばれる利用形態です。
アプリケーションをプライベートクラウドに展開するメリットは、なんといっても「きめ細かな制御」にあります。最新の Virtual Machine Managerでは、サービステンプレートと呼ばれる定義体を作成しておくことができます。サービステンプレートには、特定のサービスに必要なサーバインスタンスのリソース要件を定義できます。リソース要件とは、サービスの稼働に必要なハードウェア要件、ネットワーク要件、そしてサービスが稼働するOSの要件です。
もちろん、3階層アプリケーションであれば、それぞれの階層ごとに要件を定義し、1つのテンプレートに格納することができます。テンプレートが展開されると、定義に沿って自動的にハードウェアやネットワークが準備され、そこにサーバインスタンスが展開されます。
アプリケーションのライフサイクルを考えると、サービスを展開したままというわけにはいきません。アプリケーションが最適な状態で稼働しているかどうかを常に監視し続ける必要があります。マイクロソフトのプライベートクラウドには、こうした機構も用意されています。最新の Operations Managerが持つアプリケーション層のパフォーマンス監視機能がそれに当たります。
Operations Manager にはもともと仮想サーバやネットワークも含めたインフラストラクチャ全体を監視するためのコンポーネントでした。そして、多くのエンジニアはそれで十分であると考えていました。
しかし、プライベートクラウドによって、アプリケーションサービス自身が仮想化され、サーバの展開がセルフサービス化されると、その監視が今まで以上に困難になることが分かりました。なぜなら、アプリケーションが展開されたサーバの場所を特定したり、どのタイミングでアプリケーションが展開されるのかを把握することが難しくなるからです。
そこで、マイクロソフトはこの分野で大きな実績を持つAVICodeを買収し、Operations Managerにアプリケーション層の監視機能を実装しました。AVICodeは、.NET アプリケーションをはじめとする各種アプリケーションのパフォーマンスや障害ポイントを分析するためのツールで、Operations Manager の一部として実装されました。Operation Managerにアプリケーション層の監視機能が実装されたということは、サービスの正常稼働を監視し続けなければならないIT Proにとって、とても重要なことです。サービスの障害を分析するには、そのサービスが稼働しているインフラ周辺の知識が必須だからです。Operations Managerのレポートから、障害の原因がインフラ側に存在することが分かれば、深夜に開発者を捕まえる努力をすることなく問題解決が収束する可能性が高まります。
もっと書きたいことがあるのですが、容量が尽きてしまいましたのでこのへんで。
マイクロソフトのプライベートクラウドについてもっと知りたい! というエンジニアには、MVAの下記コースがおすすめです。やみくもにキーワードを検索する必要はなく、プライベートクラウドの知識を系統的に習得できます。
最終回は、「Windows Server 2012」を紹介します。
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