プレゼン・LTを「ちゃんとした1つの話」に仕立てる、5つの仕掛け達人ライトニングトーカーへの道(3)(2/2 ページ)

» 2012年08月06日 00時00分 公開
[嵩原將志@IT]
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●3. 解法パターン&伏線回収 p.43〜p.45

 問題提起で、問題個所の特定は図(イメージ)で済ませました。それらをp.43で「適当な握り、過度な期待、ほのめかし、病んだ政治」とはっきりと明言しています。

 これらの原因を「曖昧領域」としてまとめ、強引に排除するよりは必要悪だと思ってうまく付き合うほうが現実的である(p.44)

  ↓

 そのためにアジャイルのプラクティスを学ぶのは有意義(p.45)

 という展開です。

 もともと、ソフトウェア開発プロジェクトとは不確実な要素が大きいものです。しかし、商慣習上、完全にアジャイルなプロジェクトを計画立てるのも難しいものです。だからといって、無防備ではどうしようもありません。「アジャイルのプラクティスを少しずつ取り入れ、いつか必ず起きる変化に対して備える方が現実的である」というのが本LTの主張です。

●4. 聞き手への呼びかけ p.46〜54

 もちろん、アジャイルと名のつくプロセスすべてが万能なわけではありません。同様に、「ウォーターフォールだから全部ダメ」というわけでもありません。単純な二元論で語るのは危険です。

 そんなわけで、「アジャイルvs.ウォーターフォール」の皮肉として、「きのこの山vs.たけのこの里」を紹介しました。

「きのこの山vs.たけのこの里」 「きのこの山vs.たけのこの里」

 PMBOKにもあるように(p.52)、どのプロセスをどのぐらい厳密に実施するかはプロジェクトそのものに向きあって考えるべきことです。プロジェクトが何かも決まっていない時点では、正解のプロセスなど存在しないのです。

PMBOKより PMBOKより

 かつて古代ローマの英雄ユリウス・カエサルが「まず敵と戦場を見せてくれ。勝ち方はそれから考える」と言った(かもしれない)ように、「何をやるのか? やらないのか?」は現場主導で考えることが、正解に近いのではないでしょうか。

●5. オチ p.55〜p.58

 私はなるべくオチにパンチの効いた画像を用意し、笑いとともに終了するスタイルを好みます。

 このスタイルは、2つの点で「博打」要素があります。1つ目は時間ちょうどに終了させること、2つ目は笑いがとれる画像が用意できるかどうか

 1つ目はリハーサルとプレゼンツールによって解決可能です。リハーサルをしっかり行って、ツールの時間表示と残りスライドをチェックすれば、大体は大丈夫です。しかし2つ目が難しい。当日の聞き手の雰囲気によっても変わるし、前のスピーカーがどういう内容を話したでも変わります(同じオチだった時にはもう……)。

 「光のアジャイラーになりましょう」というオチは構想段階から決めていましたが、適切な画像が見つからず、直前までは無難なものを選択していました。

 しかし本番前日、台湾マイクロソフトが藍沢光という素晴らしいキャラクターを発表してくれたおかげで、最強のオチ画像を手に入れられました。

光のアジャイラーになりましょう! 光のアジャイラーになりましょう!

 狙いどおり、聞き手の爆笑とともに終了できたのですが、逆にメッセージが雲散霧消してしまったのではないか……と反省もしました。この時はたまたま正解だったかもしれませんが、場所が変われば違うオチが正解だったのかもしれません。

 しかし、もし本記事を読んでLTやプレゼンをするエンジニアには力いっぱいお伝えしたい。勇気を持って、「これだ!」と思うオチを披露してください。何、たとえすべっても、命を取られるわけじゃありません。うけたらもうけもの! ぐらいの心意気でいきましょう。

●Tips:前フリと問題提起でつかむ!

 「闇アジャイラー」のポイントはつかみです。ガンダム(おっと)ネタ、コントラストの強い「はじめに」のページ、「注意!」、闇プログラマー、闇アジャイル原則、デスマーチ、状態変化する図、苦しいプロジェクト等々、すべては聞き手を「つかむ」ために配置した情報です。

 「つかみ」とは、聞き手に共感をしてもらい、発表に対して興味を持ってもらう状態です。どんなに素晴らしい内容でも、つかんでいないことにはメッセージは十分に伝わりません。

 つかむために細心の注意を持ってください。そして矛盾するようですが、聞き手にぐっと踏みこむ大胆さも一緒に持ってください。


 今回の「ちゃんとした1つの話にする」はここまでです。

 これらは、プレゼンを「単なる事実の列挙」にしないための工夫です。いきいきとした、聞き手に興味をもってもらい、最後まで聞いてもらうには、こうした工夫が必要なのです。

 ポイントは、「前後の流れをスムーズにするか」です。もし、この作業に慣れていないようなら、真っ先に「(1)前フリ(伏線)」「(4)伏線回収」を組み立ててください。これをするだけでグッと全体の統一感がでます。

 次回はここまでで説明しきれていない、Tipsやリハーサルに仕方を解説します。

筆者プロフィール

嵩原將志(たけはらまさし)

クラスメソッド株式会社 技術部所属。認定スクラムプロダクトオーナー。プロジェクトマネジメント、アジャイル(スクラム)、UXデザイン、RIA、ビジネスアナリシスに強い関心を持つマーケター。Flex User Group、DevLOVEといったコミュニティ運営の支援も行っている。



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