世界遺産でIT勉強会を開催する方法世界遺産でIT勉強会を開催する方法(1/2 ページ)

鹿駆動勉強会レポート。普段使わないような場所で勉強会を開催する「場所駆動型勉強会」が面白い。能楽の舞台にスターウォーズとドラが鳴り響くという、カオスな勉強会の作り方。

» 2012年09月28日 00時00分 公開
[金武明日香@IT自分戦略研究所]

場所駆動型勉強会のススメ

 「世界遺産でライトニング・トーク(LT)をやってみたい」

 ただそれだけの理由で、エンジニアが2012年春、奈良県新公会堂 能楽ホールを貸し切って、LT大会「鹿駆動勉強会」を行った。

鹿駆動勉強会 鹿駆動勉強会 : ATND■ via kwout

 能楽ホールは奈良公園の中にある、500人以上を収容できる大型ホールだ。徒歩圏内には、世界遺産の東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺など、そうそうたる建築が軒を連ねる。

 これらは「古都奈良の文化財」として、1998年にユネスコ世界遺産委員会で、日本で9件目の世界遺産として登録された。さらに奈良名物の鹿1200頭がいるなど、LTをするにはうってつけの立地であったこともあり、20人もの登壇者が集まり、100人以上が参加表明をした。

能楽ホールの舞台。わりとガチです 能楽ホールの舞台。わりとガチです

 「場所を変えれば、LTはいつもよりもっと楽しくなる。こうした“場所駆動勉強会”をもっとやっていきたい」と、鹿駆動の中の人たちは口をそろえる。

 場所駆動勉強会とは、「面白い場所を使うことを前提とした勉強会」だ。

 毎日いくつもの勉強会が開催されている現在、場所の確保は多くの勉強会主催者にとって悩みの種である。そこで、このように一見誰も借りない穴場を借りてみるという手がある。さらに普段なら立たないような舞台に上ることで、トーカーたちも普段とは違った体験が得られるという。

 会場の借り方やLTを実際にやってみた感想について、鹿駆動の中の人、hakurai(@hakurai)さん、こしばとしあき(@bash0C7)さん、粕谷大輔(@daiksy)さんに話を聞いた。

きっかけは「奈良で勉強会しようず」

 今回のLT大会は、「奈良には勉強会が少ない」という、関西在住のエンジニアたちのTwitter上でのやりとりがきっかけで企画が持ち上がった。

 企画者たちに奈良県出身者が多かったことから、「奈良県で勉強会をしよう」という話が盛り上がった。しかし、奈良県は貸会議室が少ない。そこで皆が考えていたところ、こしばさんが「能楽ホールが借りられる」という情報を提供した。

 こしばさんも奈良県出身で、現在は東京のIT企業で働いている。東京では積極的に勉強会に参加し、Ruby会議の開催などにも携わった経験を持っている。場所探しには慣れていたそうだが、だからこそ地方における場所の確保が難しいと知っていた。「公共施設は結構使える」と思い探してみたところ、能楽ホールを見つけたという。

 新公会堂 能楽ホールは、奈良県置県100周年を記念して作られた大型ホールだ。

ひのきの渡り廊下と能楽の舞台。もちろん土足禁止 ひのきの渡り廊下と能楽の舞台。もちろん土足禁止

 松の木の背景画、ひのきの渡り廊下など、能楽ムードが全開の舞台だが、国際会議などにも貸し出しているため、映写設備、音響設備は完備。さらに大型プロジェクタもあるため、思った以上に勉強会向きであり「意外といけるんじゃ?」と話が盛り上がった。

こっそり打診したらすぐバレた&快く貸してもらえた

 とはいえ、これほどの会場を貸してもらえるかどうか分からない。IT勉強会の文化は、業界以外の人にはあまりなじみがないだろうということで、最初は「鹿駆動勉強会」(ネーミングからして怪しい)という名前を出さずに、打診してみることになった。

 事務所にやんわりと「ITエンジニアが主催するイベントをやりたいのだが、貸してもらえるか」と聞いたところ、「これですよね?」という返事が来た。

速攻で鹿だとバレた 速攻で鹿だとバレた

 「鹿駆動」とは一言も伝えていないにもかかわらず、ATNDの募集ページをあっさり見つけられたらしい。意外にも、快く会場を貸してもらえることになった。

 能楽ホールはこれまでIT系勉強会に貸したことはないということなので、鹿駆動勉強会が第1号ということになる。

集客と資金の課題

 場所の確保はできた。しかし、新たな課題も生まれる。事務所の人の「最低ですと、50人で開催した実績があります」という言葉に、主催者陣はおののいた。

 最低でもそれぐらいは集めなければならない。しかし、地方開催の勉強会で50人集めるとは、並大抵のことではない。東京では100人集まる勉強会もあるが、地方都市では10人?20人ほど集まれば「大規模」扱いなのだという。

 さらに、能楽ホールの使用料は8万円を超える。そこで、会場費用を支援してもらえる人を募集した。「勉強会にしては珍しいことだったので、最初は不安でした」と、会場確保を主導したhakuraiさんは振り返る。

 各所に呼びかけたところ、場所と企画の珍しさのためか、LT枠はすべて埋まり、ATNDでも参加表明がどんどん増えていった。「20〜30人ぐらいならどうにか集まるかもしれない」という主催者たちの予想をはるかに超え、開催直前まで参加表明は増え続け、最終的には100人近くが参加することになった。

良い意味で「いつもと違う」勉強会の準備

 能楽ホールとITは、あまりイメージが結びつかない。無線環境などの用意が大変そうだが、意外にも「設備はとても充実しており、かつ能楽ホールのスタッフがプロだったので、ほとんど心配がなかった」という。

 「能楽ホールは国際会議などで使われている実績を持っていたので、打ち合わせ段階でも“プログラミング関連の勉強会で、プロジェクタとスクリーンが必要なら、学会みたいな形式になるだろう”と、スタッフがイメージを正確に把握してくれました。心配どころか、マイクなどの備品、スクリーンの配置、音響や照明の制御の提案をいただいたほどです。

 会社の会議室を借りているいつもの勉強会と比べると、プロの助言はとても助かり、いい意味で“いつもと違うな”と感じましたね」(hakuraiさん)

 無線LANの準備なども「回線はあるから、アクセスポイントを設置すれば、会場全体に無線を飛ばせる」というアドバイスに従った。 

 そのおかげで、参加者はぞんぶんにTwitterでつぶやきまくり、ハッシュタグ「#shikadriven」はTwitterのトレンドに2?3回登場したほどだった。

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