Windows 8をSSDにインストールすれば、高速なシステムの起動やアプリケーションの実行が期待できる。Windows 8ではSSD向けの機能が実装されており、特に何もせずとも使えるが、いくらか注意すべき点もある。
Windows 7以降のOSではSSDが正式サポートされており、Windows 8においてもSSD上にインストールした場合、特別な操作や設定は不要である。だがいくらか気をつけておかなければならない点がある。今回はWindows 8でSSDを使う場合の注意点などについてまとめておく。
「SSD(Solid State Drive)」とは、フラッシュ・メモリを使った半導体ディスクの総称であり、2.5インチのハードディスク・ドライブと交換してそのまま利用できるものや、マザーボード上のmSATAスロットに実装できるものなどが広く出回っている。SSDの登場当初は価格も高かったが、最近では128Gbytesクラスで1万円、256Gbytesクラスで2万円程度にまで下がってきており、薄型ノートPCを中心に普及が進んでいる。自分でハードディスクをSSDに交換してWindows 8で利用するのも簡単である。
SSDは基本的にはハードディスクと置き換えてそのまま利用できるように作られているため、SSDにWindows OSをインストールして(つまりC:をSSDにして)利用するからといって、特別な操作は何も必要ない。Windows 8ではOSレベルでSSDに対応しているので、Windows XPなどでSSDを利用する場合のように、SSDと共に提供されるツールを使って、ときどきSSDの状態をモニタしたり、メンテナンスしたりするといった必要性は少なくなっている。
だがSSDはハードディスクを比較すると、まだまだ取り扱いが「デリケートな」デバイスでもある。容量が少ないというのは分かりやすい差だが、それ以上に「書き込み回数に制限がある」という点が大きな影響を与えている。具体的な注意点については「SSDの基礎知識」で後述するとして、まずはWindows 8でSSDを利用する方法について解説しておく。
SSDは通常のハードディスクと同じように利用できるものの、容量が少ないので、少し注意が必要である。Windows 8でSSDを利用する場合、主に次の2通りの方法がある。
まずはシステムのインストール先として利用する方法について見ておこう。
SSDをシステムのインストール先として利用するといっても、特別な操作は必要ない。ハードディスクにインストールする場合と同様に、システムにSSDを接続してから、インストール用メディアを使ってPCをブートし、Windows 8を通常どおりインストールすればよい。
SSDにインストールすると、システムやアプリケーションなどの起動速度がかなり速くなったように感じられる。システムのプロパティ画面でエクスペリエンス・インデックスの値を確認すると、ディスクのスコアが改善していることが分かるはずだ。この値は、ハードディスクの場合はせいぜい5.9までしか出ないが、SSDの場合は8.1といった値になっている。
SSDにインストールした場合には、注意するべき点や、設定を変更しておいた方がよい点などがいくつかある。以下、それらについて順に触れておく。
SSDを組み込んだPCにWindows 8をインストールした直後のC:ドライブのプロパティ画面を次に示しておく。この例では240GbytesのSSD上に、64bit版のWindows 8 Enterpriseエディションを新規インストールしている。C:ドライブの使用済み領域は約40Gbytes、空き領域は約200Gbytesとなっている。メーカー製PCなら、リカバリ領域用などにさらに数十Gbytesの領域が確保されていることがある。これはインストール直後なのでかなり空き領域がある(ように見える)が、SSDではパフォーマンスや寿命のことを考えると、ディスクいっぱいまで使うことは望ましくないとされている(詳細は後述。1〜2割は空けておくべき)。なのでこのシステムの場合は、実質的な空き領域は150Gbytesぐらいと考えておくべきだろう。もし120GbytesのSSDにシステムをインストールするとなると、空き領域はせいぜい50Gbytesくらいしか残らない。インストールするアプリケーションや保存するデータ・サイズなどを考えて、SSDの容量を選択していただきたい。
SSDは十分に速く、デフラグを実行する必要はない。むしろ書き込み回数に制限があるSSDでは、デフラグをすると書き込み回数が増えて寿命が短くなるというデメリットがある。そのため、Windows XPやWindows VistaでSSDを利用する場合はデフラグを無効にするという設定を行うことがあった。デフォルトでは、デフラグを定期的に実行するようになっているので、これらのサービスを止めておくのである(Windows 7の場合、SSDが比較的新しい製品であれば、自動的にSSDと認識してデフラグをオフに設定する)。
だがWindows 8のデフラグ・ツールは、ディスク・タイプがSSDであることを認識すると、SSD用の「トリム・コマンドの発行」という特別な操作を行うようになっている。そのためデフラグ・サービスを無効にしてはいけないし、定期的に実行するべきものである。
「トリム(説明)」コマンドとは、SSDに対して、不要になったSSD上のブロック(セクタ)を指示するためのコマンドである。ファイルを移動/削除したり、ファイル・サイズを切り詰めるなどして、ファイルを構成するクラスタ(セクタ)が未使用状態になった場合、その場所をSSDに積極的に通知するために使われる。
トリム・コマンドは、ファイルを移動や削除した場合に(SSDに対しては)自動的に発行されているが、トリム・コマンドの発行後にほかの読み書きコマンドなどを連続して送るとその処理が優先され、トリム・コマンドに対するSSDの内部処理(ガ−べジ・コレクションなど)は後回しになったり、キャンセルされたりする。
Windows 8のデフラグはシステムがアイドルの場合に定期的に実行されるようになっている。対象ドライブがハードディスクならファイルを構成するクラスタの再配置を行うが、対象ドライブがSSDなら、ディスクをスキャンして消去済みブロックに対するトリム・コマンドを発行するという作業を行う(クラスタの再配置は行わない)。これにより、SSDではトリム・コマンドに対する内部処理を行う機会を得ることができる。
ReadyBoostやSuperFetchはアプリケーションのロードなどを高速化する技術であるが、SSDを利用する場合、これらを無効にして(無駄なサービスを止めて)パフォーマンスを上げるという方法が使われることがあった。
Windows 8の場合は、先ほどのデフラグの画面からも分かるように、OS自身がハードディスクかSSDかを自動的に認識し、それぞれに最適な処理(不要と判断したら止めるなど)を自動的に行うようになっている。ハードディスクとSSDの両方を使っているようなシステムでも自動的に判断してくれるし、PC間でシステム・イメージを移行させたような場合でも正しく動作するようになっている。そのため、ユーザーがいちいち手動で設定する必要はないし、トラブルの元なので設定変更などはしなくてもよい。
ちなみに、SSD上にインストールされたWindows 8において、USBメモリを使ってさらにReadyBoostを利用しようとしても、次のようなメッセージが表示されてReadyBoostを有効にできない。
SSDは総容量が少ないので、ユーザー・データを保存する場所が足りなくなる可能性がある。その場合はPCにハードディスクを増設して、そこにユーザーのデータ・フォルダを移動するとよいだろう。こうすれば、C:ドライブの空きが増えるだけでなく、(ユーザーのデータ・ファイルによる)SSDへの書き込みを抑制できるので、SSDの長寿命化のためにも有用である。
移動可能なユーザーのフォルダの一覧は、エクスプローラで「C:\Users\<ユーザー名>」を開くと確認できる。[Windows]+[R]キーで「ファイル名を指定して実行」ダイアログを開き、「%userprofile%」と入力して[Enter]キーを押してもよい。
ここに表示されているフォルダのいずれかを右クリックし、ポップアップ・メニューから[プロパティ]を選択する。そして、表示されたプロパティ・ダイアログの[場所]タブを開く。
[移動]ボタンを押して、移動させたい先のフォルダを指定する。それぞれの標準フォルダごとに新しいフォルダを用意して、移動させること。なお最初のエクスプローラの画面で複数のフォルダを選択し、[Shift]キーを押しながら新しいフォルダへドロップすると、まとめて移動できる。
上の例ではユーザーごとのドキュメント・フォルダなどを移動させたが、2台目のディスクがあるなら、SSDへの書き込みの回数を抑制するために、環境変数TMPやTEMPで示される一時フォルダも移動しておこう。またページ・ファイルをSSDから別のハードディスクに移動しておくのもよいだろう。これらはシステムのプロパティ・ダイアログの[詳細設定]タブから変更できる。具体的な方法付いては以下のTIPSを参照していただきたい。
SSDの容量が少ない場合は(100Gbytesとかそれ以下)、使い方にもよるが、アプリケーションを多数インストールしていると、将来容量不足になる可能性がある。このような場合は、SSDにWindows 8をインストールするのではなく(C:ドライブとして利用するのではなく)、ReadyBoostのような補助的な用途で使うのがよいだろう。
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