データセンター事業者、ユーザー企業などによるサービス提供支援も視野に、SAPジャパンが日本国内での「SAP HANA Enterprise Cloud」を核としたクラウドを本格展開する。
「SAPのクラウドサービスを全て日本で、ローカライズなども含めても展開していく」(SAPジャパン バイスプレジデント クラウドファースト事業本部長 馬場渉氏)。独SAPは2013年5月米国オーランドで開催したイベント「SAP SAPPHIRE NOW」において、同社が開発したクラウド「SAP HANA Enterprise Cloud」を核としたクラウドの本格展開を発表している。これを受けて、6月5日、SAPジャパンは日本でも本格的なクラウドの展開を開始すると発表した。
同社代表取締役社長 安斎富太郎氏は会見で、クラウドの利用が「コストも安く時間軸も早くできて、お客さまの経営に有効である」と指摘。同社の強みである業務アプリケーションと組み合わせることで同社クラウド事業には大きな可能性があると強調した。
SAPのこれまでのクラウドサービスは、主に中堅中小企業向けとしてBusiness ByDesign、人事管理のクラウドサービスとしてSuccessFactorsなど、規模や用途を想定したものが用意されていた。しかし、今後はそれを改めると馬場氏。
新しいSAPのクラウドサービスは機能ごとに分解され、「People」「Customers」「Money」「Suppliers」の4つのカテゴリの下に体系化するという。これらのサービスは大企業から中堅中小まで、業種も問わず、自由に組み合わせて導入できるようになるという。
「3カ月から6カ月で事業部門が導入できるようなものになる」(馬場氏)
また、これまでサービスごとにばらばらだったクラウド基盤も、単一のSAP HANA Cloud Platformに統一する。SAP HANA Cloud Platformでは、PaaSとして、Javaによるアプリケーション開発も可能だ。
さらに興味深いのは、今回発表したクラウド戦略が、SAP自身によるクラウド運営だけでなく、同社のクラウドサービスを顧客のデータセンターで運用したり、あるいはデータセンター事業者などが運用して顧客にサービスとして提供することが可能な点だ。
これは、SAP HANA Enterprise Cloud(関連記事)の基盤としてSAPが開発したベアメタルサーバに対応したクラウド基盤ソフトウェアやOS、ミドルウェア、そしてクラウドアプリケーションなど全てを社外に提供することを意味する。
これにより、例えば情報子会社がグループ企業向けにSAPのクラウドサービスを提供する、あるいはデータセンター事業者が国内でSAPのクラウドサービスを展開するといった事例が今後出現することが予想される。基幹業務を扱うSAPのアプリケーションでは、国外のデータセンターや他社のデータセンターでの運用を嫌うユーザーが多いことを考えると、この戦略はSAPらしいものだと言えるだろう。
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