Android OSと同様に、iOSでも標準装備のVPNクライアント機能を使ってVPNゲートウェイに接続できる。VPN接続が確立すれば、あとは通常の手順でRDCアプリからリモートデスクトップ接続が可能だ。ここではiOSにおけるVPN接続の設定と接続について、PPTPとL2TP/IPsec(事前共有鍵方式)を対象として解説する。例として用いているのはiPhone 4S+iOS 7.0である。
ホーム画面から[設定]−[一般]−[VPN]とタップしていくとVPN接続の一覧画面が現れる(最初は空欄のはずだ)。ここで[VPN構成を追加]をタップしてVPN接続の新規作成を始める。
VPN接続の新規作成画面では最初にVPNのプロトコルを選ぶ。PPTPの場合は画面上側に並んでいるボタンのうち[PPTP]をタップして選択する。その後、[サーバ]にVPNゲートウェイのホスト名(FQDN)かIPアドレスを記入する。[アカウント]にはVPNゲートウェイの認証用アカウントのユーザー名を記入する。
L2TP/IPsec(事前共有鍵方式)の場合は、画面上側に並んでいるボタンのうち[L2TP]をタップして選択する。その後、[サーバ]にVPNゲートウェイのホスト名(FQDN)かIPアドレスを記入する。[アカウント]にはVPNゲートウェイの認証用アカウントのユーザー名を記入する。VPNゲートウェイに設定されている事前共有鍵の文字列は[シークレット]に記入する。
必要な項目を記入して右上の[保存]をタップしたら、VPN接続の作成は完了だ。
Android OS同様、iOSでも先にVPN接続を確立してから、RDCアプリでリモートデスクトップ接続を実行する。
ホーム画面の[設定]−[一般]−[VPN]とタップすると、作成したVPN接続の一覧が表示される。利用したいVPN接続の名称をタップして、その左端にチェックマークを付けてから、その上の[VPN]をスライドしてオンにすると、VPNゲートウェイへの接続が始まる。
VPN接続の作成時にパスワードを記入しなかった場合、ここでパスワード入力が求められるので指示に従って入力する。
接続に成功すると、画面上端の左端にVPN接続中であることを表す[VPN]アイコンが表示される。
いったんVPN接続の設定を選択したら、以後は[設定]の[Wi-Fi]のすぐ下に追加された[VPN]のスイッチをスライドすることで、すぐにVPN接続がオン/オフできるようになる(いちいち[一般]−[VPN]とタップせずに済む)。
VPN接続が確立したらRDCアプリを起動し、イントラネット環境の場合と同じくリモートデスクトップ接続を実行する(詳細な手順は第2回を参照)。
VPN接続には成功するのにリモートデスクトップ接続が失敗する場合は、リモートデスクトップの接続先コンピューターのホスト名(FQDN)をIPアドレスに変えてみよう。VPN接続環境によっては、リモートから社内コンピューターの名前解決ができないことがあるからだ。
VPN接続を切断するには、VPN接続の一覧画面の一番上(あるいは[設定]の[Wi-Fi]のすぐ下)にある[VPN]をスライドしてオフにする。
続いてiOS端末からRDゲートウェイを利用してリモートデスクトップに接続する方法を説明する。
まずはRDCアプリでRDゲートウェイに関する設定を追加する。それにはRDCアプリを起動して初期画面の「Configuration」枠にある[Settings]をタップして「Settings」画面を開き、[Gateway]をタップする。
次の画面で[Add gateway]をタップするとRDゲートウェイを登録するための「Gateway」画面が表示されるので、各項目をタップして適宜記入していく。[Server]にはRDゲートウェイのホスト名(FQDN)かIPアドレスを入力する。また[Credentials]には、RDゲートウェイに対する認証のためのアカウント情報を指定する。空欄のままにしておくと、接続先コンピューター(リモートデスクトップサーバー)に対して設定した認証アカウントの資格情報が、RDゲートウェイの認証にも流用される。
必要な項目を記入して右上の[Save]、左上の[< Settings]、右上の[Done]とタップしていって初期画面まで戻れば、RDゲートウェイの登録は完了だ。
次に、登録したRDゲートウェイ経由でリモートデスクトップに接続するように設定する。まず既存のリモートデスクトップ接続の一覧(初期画面の「Remote Desktops」枠)から対象の接続設定の右端にある(i)アイコンをタップして編集画面を開き、[Gateway]をタップする。「Gateway」画面が表示されたら、先ほど登録したRDゲートウェイをタップする。
RDゲートウェイを選んだあとは、右上の[Save]をタップすれば設定は完了だ。
ここまでの設定が完了したら、RDCアプリの接続一覧から対象のものをタップして実際に接続してみよう。RDゲートウェイの証明書に関するエラーが表示されたら、[Connect once]あるいは[Connect always]をタップする。
続いて接続先コンピューターの証明書に関するエラーが表示された場合は、同様に[Connect once]あるいは[Connect always]をタップすると、リモートデスクトップが表示されるはずだ。
RDゲートウェイやその周辺のシステム設計にも依存するが、社外だけではなく社内ネットワークからでもRDゲートウェイ経由でのリモートデスクトップ接続は可能だ。そのため、社内/社外に関係なく同一の接続設定のままリモートデスクトップ接続ができる。
今回は、Android OS/iOS端末とRDCアプリを利用して、遠隔地からインターネット経由で社内のコンピューターに接続する方法を説明した。VPNゲートウェイあるいはRDゲートウェイによるリモート接続がすでに利用可能な組織であれば、OSの標準機能と無償のRDCという追加コストの不要な手段で、比較的容易にスマートフォン/タブレットからのリモートデスクトップ接続が実現できる。外出の多いビジネスパースンにとっては、(相対的に)大きくて重いノートPCを持ち歩かなくても社外からリモートデスクトップ接続ができることが大きなメリットになるのではないだろうか。
その一方で、スマートフォン/タブレットから容易に社内コンピューターにアクセスできるようになるため、これらの端末に他人が触れないよう、セキュリティには十分に注意する必要がある。面倒ではあるが、接続時の認証パスワードを事前設定せず、接続するたびに入力することも検討した方がよいだろう。
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