日本国内のOpenStack事例が続々/統合認証「Keystone」とはたまおきのOpenStackウォッチ(2014年3月版)(1/2 ページ)

2014年2月に開催されたOpenStack Days Tokyo 2014。生々しい大規模採用の事例が聞けた他、NECのパブリッククラウドサービスの話も。OpenStackコンポーネント解説は「Keystone」を取り上げます。

» 2014年03月19日 18時00分 公開
[たまおきのぶゆき日本仮想化技術]

連載バックナンバー

 日本仮想化技術のたまおきです。昔からの知り合いとあいさつした際、ふたこと目には「@ITの連載を読んでます」と言われることが多くなりました。連載を半年間続けてきて、OpenStackと本連載の認知度が上がったことを実感しているところでした。「たまおきのクラウドウォッチ」という連載タイトルをいただいてますが、「たまおきのOpenStackウォッチ」に変わるのも時間の問題かもしれませんね*

* 編集部注 次回から、たまおき氏の予告通り、本連載は「たまおきのOpenStackウォッチ」にリニューアル予定です。お楽しみに!



OpenStack Days Tokyo開催

 今回は2014年2月13〜14日に開催されたOpenStack Days Tokyo 2014の内容を中心に紹介します。当日は大雪に見舞われましたが、会場の御茶ノ水ソラシティカンファレンスホールには、のべ1100人が来場、OpenStackおよびそのエコシステムに対する関心の高さをあらためて知ることができました。OpenStack Daysに参加した@ITの原田氏の記事が参考になります。

国内事例発表が相次ぐ

 今回のOpenStack Daysでは、グリー、Yahoo! JAPAN、NECが、ぞれぞれ自社のOpenStack導入事例をセッションで公開しました。今までは、評価/検証で使われることが多かったOpenStackですが、国内でも実際の導入事例が増えてきたことを実感したイベントとなりました。

NECの新しいパブリッククラウドサービスはOpenStackがベースに

 中でもNECの國友氏のセッションでは、同社の新たなクラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」の話題が登場、NECとしてのOpenStackへの取り組みを聞くことができました。

 NEC Cloud IaaSはNECが提供するパブリッククラウドサービスで、スタンダード版ではOpenStackが活用されています。日本ではGMO社のVPSサービスConoHaに続く商用サービスとなります。

 セッションで、國友氏はNEC Cloud IaaSを実現する上で苦労した点として下記の2つを挙げていました。

  1. 大規模クラウドを実現するための拡張性設計
  2. OSSによる高品質サービスの実現

 昨年末にOpenStack Summit Hong Kongに参加しましたが、大規模クラウド構築や高可用性設計についてのセッションは、非常に人気が高く、白熱したディスカッションが繰り広げられていました。いま、まさに世界中の技術者が試行錯誤している領域について、海外の先進事例や取り組みをほぼリアルタイムに入手でき、その担当者とディスカッションできることは、OpenStackという、OSSベースのクラウドコンピューティング環境利用の魅力ではないでしょうか。

「Ubuntuはクラウド時代のスケーラブルOS」CanonicalのMark Shuttleworthに聞く

 Ubuntuを支援していることで有名なCanonicalのファウンダーであるMark Shuttleworth氏にインタビューを行う機会を得ました。OpenStackにおけるリーダーシップや、最近OpenStackディストリビューション展開に積極的なレッドハットとの関係、Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform(RHELOP)との違いについて聞きました。

 Ubuntuは、OpenStackユーザーの中でも利用者数が多いことで知られています。Ubuntu 13.10からはOpenStack Havanaに対応しており、OpenStackの開発コミュニティにも参加しています。

 OpenStackにおけるリーダーシップについてShuttleworth氏に質問すると、OpenStackの安定した開発プラットフォームを提供するために「OpenStackの開発者の意見を静かに聞くこと」「開発者に『本当に重要なのか?』と問い掛け続けること」が大切であると強調しました。

 OpenStackへのIT業界の期待は大きく、プロジェクト運営チームの感じるプレッシャーは計り知れないものがあります。“コントロールされた状態”を作るのではなく、人々がより考え、より行動しやすい状況を作ることを心掛けているといいます。そうした取り組みの成果として、Shuttleworth氏は、Ubuntu OpenStack interoperability lab(OIL)が開発者の声から始まった取り組みであることを教えてくれました。OILは、HP、IBM、EMC、ヴイエムウェアなどが参加するハードウェア・ソフトウェアの事前検証プログラムで、新製品やアップデート時に全ての組み合わせを自動的に検証します。利用者は検証済みの機器を組み合わせて使用することができ、環境構築時のトラブルを未然に防ぐことができます。

 先に言及したように、現段階のOpenStackユーザーの多くはUbuntuを利用しています。しかし一方で、レッドハットも、本格的にOpenStackディストリビューションの提供をスタートしています。エンタープライズシステムのOSやミドルウェアで、一定のシェアを獲得してきた同社の参入について、カノニカルおよびUbuntu陣営は、どう考えているのでしょうか?

 レッドハットとの関係について、Shuttleworth氏は「レッドハットとは、LinuxおよびOpenStackのディストリビューションの領域で競合するが、OpenStack Foundationに一緒にいること、OpenStackを一緒に盛り上げていくことが重要」と述べました。

「クオリティとスケーラビリティでOpenStack環境で優位なのがUbuntu」

 その上で、Ubuntu CloudがRHELOPに勝てる点があるとすれば「クオリティ」と「スケーラビリティ」である、と付け加えました。

 「クオリティ」については、UbuntuがOpenStackのリファレンスアーキテクチャであり、プロジェクトの開発プラットフォームとして使われていることがその裏付けであるとしました。Ubuntu Cloud+OpenStackの組み合わせで、クオリティが担保され、それをリリースしていることを強みに挙げています。

取材中、メモで図示して熱心に説明してくれた

 「スケーラビリティ」については、Ubuntuがもともとスケールアウト方式を指向しており、それをより簡便に実行できるようにJujuやMAASなどのデプロイメントツールを開発したこと、併せてサポートサービスの料金体系も規模に比例して料金が高くなるものではない、ユニークな体系で提供していることが該当します。

 こうした背景からUbuntuは、欧米では安価なサーバーを大量に並べて稼働させてきた実績を蓄積してきています。

 クラウドインスタンス起動時に事前定義の処理を行うCloudInitや、アプリケーションのデプロイ、物理サーバーのプロビジョニングを行うデプロイメントツールJuju/MAASなど、スケールアウトすることを前提にUbuntuを開発してきた技術をShuttleworth氏へのインタビューを通じて再確認しました。

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