会議の質を高めるために、リーダーが仕掛けるポイントITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(9)(2/3 ページ)

» 2014年04月08日 18時00分 公開
[エディフィストラーニング 上村有子,@IT]

「意味付け」段階のポイント

 意見が出そろったとリーダーが判断したら、意味付けフェーズへ進めます。ここでは、全員で整理を行います。

 今までのフェーズでは、意見ができるだけ偏らないよう、たくさん洗い出すことに意義がありました。意味付けのフェーズでは、話が外へ拡大していくのをいったんストップして、全体を俯瞰します。

 まず、メンバーの出した意見が、全体の中でどの位置付けにあるのかを確認します。続いて、リーダーが主体となって、意見をグルーピングし、対立の構図を明らかにしていきます。グルーピングの際は、「何が共通項なのか」「対立はどの点に相違があるのか」相対的な位置関係とその理由を明らかにして整理します。

 この作業は、ホワイトボードなどを使って図解するとよいでしょう。たくさん洗い出された項目が、より少ない項目に集約され、結論出しの方向に向けてすっきりしてくるはずです。この時点でリーダーが用意する仕掛けは、集約しながら共通点や対立点を構造化し、それぞれの要素が全体の中でどこに位置するか、位置関係を把握させることです。

 ここでリーダーが陥りやすい失敗に、強引な集約を行ってしまうことがあります。先を急ぐあまり、自分の頭の中で共通・対立の構図を先に作り上げ、それをメンバーに無意識のうちに押し付けてしまうのです。リーダー主導で構図を描くのはよいのですが、あくまでもたたき台としてメンバーに提示してください。構図を描いた後は、異論がないか必ず全員に確認します。

 チームでの話し合いは、積み木を積み上げていく作業に似ています。1つのフェーズが固まって初めて、次のフェーズへ進める性質を持っているので、ぐらぐらしていることに気付かないで進めると、後のフェーズでひっくり返って、また振り出しに戻ってしまいます。

 「巻き込み」「ぶつかり」「意味付け」の3つのフェーズは、積んでは壊し、積んでは壊しと繰り返すことも、時には必要です。しかし、4つ目のフェーズに進む前に、必ずリーダーもメンバーもけじめを付けてください。3つ目までのフェーズで異論を出さずに、後になって蒸し返すのは、よほどのことがない限りルール違反であることを、メンバーにも認識してもらう必要があります。

「軸出し」段階のポイント

 軸出しフェーズでは、結果を出す上での判断基準の絞り込みに進みます。

 ホワイトボード上に図解された意見は、すっきりして分かりやすくなり、全員の理解が進みます。記録に残るし、文章と違って行間を読み間違えたりする危険も減るなど、メリットはたくさんあります。

 しかし、きれいに整理されただけでは、話し合いの目的が100%は満たされたとはいえません。仕事においては、最終的に全員が目的に向かって行動を起こすことが求められるので、行動を起こすための意思決定が必要です。意思を決定するためには、その判断のための基準が必要になります。この基準を決めるにはメンバーの合意が不可欠になるのです。

 前の段階での整理は、グルーピングや対立、位置関係をはっきりさせるため、次のような図解になっていると思われます。

 こういった図をいくら眺めていても、全ての案を採用すべきか、取捨選択すべきか、優先順位が高いのはどれなのか、判断が付きません。誰が見ても案の重大性が明らかな場合は別として、どの案も重要だが幾つかに絞り込まなければならない場合、この図だけでメンバー全員が合意することは困難です。

 そこで、2軸を使ってもう一段絞り込みを行うと、気持ちを集中させやすくなります。例えば「重要度」と「緊急度」という軸を提示します。

 2軸を提示したら、次はそれぞれの案がどこに位置付けられるのか、みんなで確認しながら1つ1つプロットします。

 それぞれの案をプロットできたら、最後に全体を見て吟味します。「重要度が高く、緊急度が高い案B、P、Xを優先すべき」というように、全員の合意が得やすくなるはずです。

 自分たちのチームでコントロール可能か否かを判断の軸にし、もう1つの軸を予算の多寡で定義して、2軸上に案をプロットすると、次のような図が描けます。そうすると、「手を付けやすい案D、K、Mから先に着手し、条件が整ったら本命の案B、P、Xを実行しよう」というように、メンバー全員の合意を取り付けやすくなります。

 何を軸に置くかで話の展開は大きく変わるので、この軸の出し方こそが話し合いを成功に導くポイントです。最初のうちは、リーダーが軸出しをしないといけないでしょうが、慣れてくると同じ要領でメンバーも面白い軸を出してくれるようになります。

 話し合いも終盤戦だという自覚をメンバーに持たせ、これまでのリラックスした雰囲気から知恵を絞り出す段階にスイッチしてもらえるよう、リーダーも真剣味をちらつかせて仕掛けてください。実際、チーム全員で知恵を絞らないと、良い軸は出てきません。

 軸として他によく使うものには、「費用」「効果」「影響の及ぶ範囲」「副作用の深刻さ」「時間の経過」などが考えられます。とっさに軸を考えるのは、慣れるまではけっこう難しいので、普段から軸になりそうなものを頭の中にためておきましょう。

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