現在、Arduinoコミュニティの参加者は10万人を超えているとされています。ライブラリは豊富に存在していて、現在もなお活発に開発されて続けています。他のマイコンベンダーがこれと同じ状況を作り上げるのは非常に難しく、Arduinoの優位性は今後も継続するでしょう。
加えて、近年、無線通信の機能がビルトインされたボードや、後付けで追加するための拡張ボード(シールド)が充実してきました。この流れに乗って、デバイス同士が無線通信で連携し合い、自律的に動作する利用例が増えてくることでしょう。
また、Webでデータをビジュアライズするためのライブラリが充実してきています。Webをインターフェースとして、PCやスマートフォンからセンサーデバイスを一元管理するプロジェクトが既に勢い付いています。
ただし、実際の家電製品の中にArduinoが直接組み込まれる可能性は低いと思われます。
なぜかと言いますと、まず、場所を取らないコンパクトな製品にしようとすれば、Arduinoボードの大きさがボトルネックになります。また、持ち運びするためにバッテリで駆動させたい場合は、消費電力の大きさが問題になることでしょう。
従って、エンタープライズでArduinoが利用されるとすれば、製品開発のプロトタイピングフェーズであり、実際の製品にはプロトタイプを基に設計された必要最低限の回路とマイコンが搭載されることになるでしょう。
次回は、オリジナルのデバイスを作るために必要な知識を押さえていきます。具体的には、Arduinoの役割は何なのか? 電子回路はどうやって組めばいいのか? コードはどう書けばいいのか? という疑問に答えていきます。
特に、回路の作り方を間違うとArduino本体やセンサーを壊してしまう場合がありますので、そういった悲劇が起こる原因と対策を解説します(※「Espruino」は使いません。最もポピュラーな「Arduino UNO」を使います)。
また、通常はArduinoの制御にC言語をベースとしたArduino Programming Languageを使いますが、本連載はWeb技術者向けということで、JavaScriptを使った制御方法を紹介します。
LEDを点滅させること自体に面白みがあるわけではありません。しかし、LEDを制御することを通して、Arduinoを使いこなすための多くの基礎知識を得ることができます。
土壌湿度センサーを使い、観葉植物の土が乾いたらメール通知するシステムを作ります。センサーデバイスをシステムに取り入れる際の、センサー値の揺らぎ対策や状態管理など、実用的にするために考慮すべき処理もカバーします。
ネットワークを介して、センサーとシステムが自律的に連携し合う。そんな未来を感じさせるようなデバイスを作るきっかけとなれば幸いです。
岩永 義弘(いわなが よしひろ)
株式会社インターネットイニシアティブ
データ分析とワインが好物。通信アノマリ検知システムや地震速報配信システムの開発と運用を経た後、Webアプリのフロントエンドに手を伸ばし、図らずもフルスタックな道を突き進んでいる。最近は趣味でHTTP/2の実装を楽しんでいる。
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