OpenStackはなぜこれまで成功してきたのかNECの柴田氏に聞く

OpenStackはなぜこれまで成功してきたのか。NECで長年、Linuxをはじめとしたオープンソースソフトウェアに関わり、2011年からOpenStack Foundationでも活動している柴田次一氏に聞いた。

» 2014年06月10日 09時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 「OpenStackはクラウドのLinuxのようなもの」と、NECで長年、Linuxをはじめとしたオープンソースソフトウェアに関わり、2011年からOpenStack Foundationでも活動している柴田次一氏は話す。LinuxとOpenStackのプロジェクトの成り立ちや活動の仕方には違いも多い。だが、ITの世界に与えるインパクトという点では、重要な共通項があるという。

 「OpenStackは今後、縦にも横にも広がっていく。Linuxが(プロジェクト発足後)約20年経ってついにニューヨーク証券取引所やロンドン証券取引所に採用されたように、OpenStackが真のミッションクリティカルな場面で使われるようになるにはある程度時間が掛かるだろう。だが、マイクロサーバやストレージとしてのSSD、さらに Software Defined Networkingなどアーキテクチャの変化に加えてソフトウェア技術が進展することで、場合によってはクラウド的なものに移ったほうが適切になる時期がやがて来る」。

 柴田氏は、OpenStackが複数のモジュールから構成されていて、相互がAPIでつながっている形式をとっていることを高く評価する。

 「モジュールを入れ替えて使え、アプリケーションからはモジュールを バイナリのAPIではなくWeb APIで呼び出せる。このためそれぞれは独立性が担保され、柔軟で開発しやすく使いやすい。例えば、昔のメインフレームはすべて1つの部隊の中で閉じて開発をしていたので、モジュール間の連携も統制が取れ、完全性の高いものをつくりやすかった。一方OpenStackでは、多数のメンバーが同時並行に開発を行っているため、統制がとりにくいという面がある。しかし、APIによるモジュールの独立性とオープンソースによりたくさんの知恵が集まり、早いペースで経験が積み重なっていくことで、最終的には堅牢なものになっていくだろう」。

 そのためには、コミュニティが健全に発展することを支援していく必要がある、と柴田氏はいう。OpenStackプロジェクトを統率しているOpenStack Foundationは、これまでのところ非常にうまく運営されているというのが同氏の考えだ。

 Linuxと異なり、OpenStackはApacheライセンスを採用している。OpenStackプロジェクトのコードそのものへの改変、および派生コードをプロジェクトに戻す義務はない。OSSをビジネスに活用しやすい Apacheライセンスを採用したことが主要ITベンダによるOpenStackへの積極的な参加を促進する重要な要因になってきたことは十分考えられる。

 ただしこれが、OpenStack Foundationの理事会(ボード)における議論でますます重要なトピックになってきたことも確かだという。

 「企業はOpenStackをうまく使って顧客にサービスを提供しようとしている。OpenStackはApacheライセンスなので、一部のコードを修正してサービスを提供しても、そのソースコードを公開する義務はない。実際にソースコードが公開されない例もでてくる。しかしコミュニティからすれば、いろいろな企業の修正内容がコミュニティに還元されて初めて、コミュニティ全体として成長できるので、義務はないが出してほしいという意見になる。長期的には参加企業はこうしたことを無視できなくなってくるのではないか」(柴田氏)。

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 Linuxはリーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)氏が開発の最終決定者となっている。一方、OpenStackにはそうした役割の人がいない。そこで、各サブプロジェクトについてはPTL(Project Technical Lead)が選挙で選ばれ、この人が開発方針の技術的な決定責任を持つ。一方で OpenStack の運営面やマーケティング面については OpenStack Foundation が役割を担い、全体としての最終決定はボードが行うという分担になっている。このボードについても、自動選出のプラチナスポンサーを除き、全員が選挙で選ばれている。また、コミュニティからもボードに参加できるようになっており、企業だけの意見で運営やマーケティングを決めるのではなく、コミュニティからの意見も反映できるようになっている。

 「ボードではコミュニティからも発言力のある人がでてきていて、その視点もかなり反映される。企業とコミュニティのバランスが難しいところを、現ボード議長のアラン・クラーク(Alan Clerk)氏はうまくとりまとめてきた」(柴田氏)。

 柴田氏は、OpenStackのこれまでの成功の要因の1つが、Apacheライセンスにあることも確かだが、「IBMやHPなど、オープンソースを扱うのが得意な大企業が入ってきて、OpenStackがIaaSの中心的な存在になっていくという流れとともに、利用例が公開され、関連する周辺ソフトウェアやサービスなどのエコシステムの整備ができたことが大きい」と話している。

 OpenStackとはどのような動きなのか、なぜ注目されるようになったのかを、IT INSIDER No.29「非エンジニアのためのOpenStack(1):OpenStackを知るための10のポイント」で技術用語なしに解説しています。ぜひご覧ください。

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