従来のシステム管理者は、きちんとコスト管理ができて、システムが事故なく動いていれば特に問題はありませんでした。総務部長がシステムの責任者を兼務するような人事が行われていたのはそのためです。
しかし、今後はそうはいきません。システムが事業展開上極めて重要な武器になってきているからです。そのため、ITのバックグラウンドがある外資系コンサルティングファーム出身者を採用し、システムの責任者に据える企業が最近、目立っています。
なぜファーム出身者を採用するのかというと、彼らは、経営者とやりとりをしながら、経営者視点でシステムを構築するプロジェクトを手掛けてきた経験の持ち主だからです。別の言い方をすれば、「事業展開の武器としてのシステムを作る」という点で、彼らは即戦力なのです。
以上を踏まえれば、CTOを目指すエンジニアは「経営視点の獲得」と、「それをシステムで実現する思考と経験」を身に付ける必要があると分かるでしょう。
一方で、CTOを目指す人は、新しい技術やツール、サービスに敏感であることも必要です。情報感度を高くし、独自の情報収集網を作って常に知識を新しくしておかねばなりません。
そうした取り組みが必要なのは、現場のエンジニアでも同じでしょう。しかしCTOを目指すなら、エンジニアとしての研さんに加えて、「システムはこうあるべき」という哲学や、ITの歴史を踏まえたシステム観の有無が重要です。
もちろん、興味を持っていろいろな技術を試すのは良いことです。しかしCTOは、「どんな技術」を「どのタイミング」で導入するかの判断力が問われます。自分のシステム観がないと、自社の状況に応じた適切なシステム構築ができません。
例えば、新しいサービスが出たときに、いろいろなシステムを見て自分なりのシステム観がある人なら「まだ料金が高いし安定していないから、あと半年様子を見よう」といった判断ができます。
そうでなければ「あの会社もこの会社も、導入を決めていますよ」といったベンダーのセールストークに乗せられ、不要なコストを投じたのに大した成果は出ないという結果を招きかねません。
逆に、自社のビジネス展開上、極めて重要であると判断すれば、たとえ導入費用は高くても、その後の投資対効果などを考えて、「今すぐ導入せよ!」と決断するケースもあるでしょう。いずれにせよ、そうした判断ができるかどうかは、「自分のシステム観を持っていること」と、「システムはどういう役割を果たすのかという経営視点」の有無に懸かっています。
「このシステムいいね!」というだけでは、CTOは務まりません。
クライス&カンパニー 代表取締役社長
リクルートで人事採用担当を約7年経験後、現社を設立。転職希望者面談数は1万人を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。「人の根っこのエネルギーを発掘する作業が、われわれの使命」がモットー。著書「そのひと言で 面接官に嫌われます」(青春出版社)、「キャリアコンサルティング」(翔泳社)
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