“技術”を“面白さ”へつなげる道を追究――全てはユーザーのためにCTOに問う(2)gumi編(2/2 ページ)

» 2014年09月04日 18時00分 公開
[益田昇聞き手:@IT編集部]
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チーム内技術的負債の返済に向けて担当するメンバーを交代でアサイン

編集部 ゲームも数が増えていくと技術的負債もたまってくるのではないかと思います。その解消には、どのように取り組んでいるのでしょうか?

田村氏 スケジュールなどを優先させると、どうしても技術的負債がたまってきます。一度負債が生じると、なかなか解消ができず、解消しないうちにまたすぐ新たな負債が蓄積されてしまいますので、なるべく返済する期間を設けるようにしています。本来なら全ての負債を返してから新しいものを作っていかなければならないのですが、ずっとブレーキを踏み続けるわけにはいかないので、チーム内で負債返済を担当するメンバーを交代でアサインしたり、「共通の部署」に支援を求めたりする場合もあります。

編集部 優先して返済が必要な負債もあるのでしょうか?

田村氏 ゲームを遊べなくなる事態や、課金に関わる問題、ユーザーのアカウント情報などが失われる危険といった、ユーザーに不利益が生ずるリスクが高い場合は、最優先で解決しなければなりません。例えば、アクセスユーザーの急増による不具合が技術的な負債によって生じた場合、サーバーの追加で無理やり乗り切ろうとしてもうまくいきません。こうした場合は、やはり共通の部署に依頼してスポットで適切な対応を行ってもらう必要があります。

編集部 「共通の部署」は普段、どのような役割を担っているのですか?

田村氏 共通の部署は、共通モジュールの開発・配備をはじめ、アプリケーションが稼働するAWS(Amazon Web Services)の運用・監視、新規アプリケーションの動作チェック、プロジェクトマネジメント、教育などを担当しています。現在、15名の体制でこうした業務をこなしています。

編集部 外部ソリューションを選定する際のプロセスを教えてください。

田村氏 基本的にはオープンソースを採用するケースが多いのですが、ネイティブゲームの開発に際しては、サウンド周りや動画周りのミドルウェアなどについて、有償の外部ソリューションを採用するケースも増えています。外部ソリューションを導入するに当たっては、社内で技術チェックを行った上で、技術者やプロジェクトマネジャーなどの複数の意見を収集し、そもそもやりたいことができるのか、信頼性が十分に担保されているのか、メンテナンスが長期的に継続されるのかといったことを検討し、最終的に導入するかどうかは私のところで判断しています。

エンジニアの評価と採用時に重視するポイント

編集部 ところで、エンジニアの評価はどのように行っているのですか?

田村氏 基本的には評価制度に基づいて、目標を立ててもらって評価を行っています。ただ、評価されるべき軸は個人によって異なりますし、絶対的な評価があるわけではありません。まずは、その人に向いているスキル、例えば、サーバーサイドに集中したいのであれば、それをベースに目標を決めてもらって、その目標を、どの程度達成できたのか、チームにどう貢献したのか、何ができて何ができなかったのかといったことを評価の軸に据えるようにしています。

 また、必ず多面評価を行うようにしています。例えばエンジニアであれば、ディレクターなども交えて、技術だけではなくプロジェクトにどう貢献したのかも含めて評価するようにしています。もちろん、プロフェッショナル、スペシャリストとして技術だけに貢献していきたいというエンジニアもいますので、その場合は、技術のみの評価が主体にはなります。評価の軸は個人によって異なります。

編集部 ではエンジニアを採用する際の基準とは何でしょうか?

田村氏 採用面接の際に重視しているのは、応募者が今までに習得してきた技術やサービスについて十分に理解し、きちんと説明できるかということです。単に技術に触れたとか、プログラムを書いたとかいうのではなく、その技術がどうようなものであるかを体系的に理解し、それをどう使うべきかを考えてきたかどうかが重要です。その考え方によってゲームの考え方も違ってくるからです。

 また、やりたいことがあるかどうかも重視するポイントです。例えば、ゲームを作りたいのか、サーバーの技術を身に付けたいのか、クライアントの技術を身に付けたいのか、何をやりたいのか明確な考えを持っている人材を必要としています。

ユーザーが楽しさを体感できるゲーム開発体制を構築へ

編集部 今後の展望についてお聞かせください。

田村氏 今まで経験と実績を積んできたWebゲームとコンシューマーゲームの両方の強みを生かした新しいコンテンツを提供していきたいと考えています。それは、サーバーサイドの技術を使わなければ実現できないゲーム性と、コンソールの技術を使ってネットワークを感じさせない動きの滑らかなゲーム性とを兼ね備えた新しいネイティブゲームです。こうした技術を使って、エンジニアがゲーム開発により深く関わりながらユーザーが面白さや楽しさを体感できるゲームを開発する体制を作っていきたいと思います。

編集部 技術を駆使して新たな面白さを創出していくということですね。

田村氏 スマートフォンの良いところは、今まで実現できなかったことが可能になるということです。もっといろいろなことができると確信しています。例えば、近くにいる人とも、遠くにいる人とも同じように遊ぶことができ、コミュニケーションによって楽しさを何倍も高めることが可能になります。やはり、自分たちも面白いと思えるものを作っていきたいですし、遊んでいて本気になれるゲームの提供をもっと目指していきたいと思っています。

編集部 ご自身の今後についてもお聞かせください。

田村氏 やはり、技術をどういうふうに面白さへとつなげていくか、ということをもっと追究していかなければならないと、常日頃から考えています。どんなにすごい技術があったとしても、それを使ったサービスが売れずに、成果を出せなかったら、その技術を広めることできませんからね。

編集部 技術を面白さへつなげるということは、具体的にどのようにイメージすればよいのでしょうか? ゲームの面白さというと、どうしてもシナリオやキャラクターの面白さが注目されがちですが。

田村氏 例えば、対戦ゲームを考えた場合、相手になるユーザーがいなくても遊ぶことができるAI(人工知能)技術を使った高度なCPU戦は、スタンドアロンのコンシューマーゲームでは比較的容易に実現できますが、ネットワークを介してスマートフォン上で実現するのは極めて困難です。もし、技術を駆使してこうしたCPU戦をネイティブゲームで実現できたとしたら、ユーザー側の面白さを何倍にも高めることができるでしょう。このように、さまざまなゲームでユーザーの面白さを高めるためには、どうしても技術が必要になってくるわけです。

CTOを目指すエンジニアへ

編集部 最後に、CTOを目指すエンジニアに向けてアドバイスお願いします。

田村氏 もし、CTOになりたいのであれば、自分の好きな技術の習得だけに力を注ぐのではなく、必要と思われるあらゆることに興味の幅を広げてほしいですね。

 常にアンテナを高くして、幅の広い視野を持てるように修練を積むと同時に、いろんなエンジニアと話をして、いろんなことを意思決定する。それが、CTOには必要になるでしょう。誰かを変えるよりも自分を変える方が簡単です。「自分を変える」ということを意識して技術を磨いていくことをお勧めします。

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