プロジェクト管理の基礎からアジャイル開発の理想と現実、成功例と失敗例、を紹介し、ベストプラクティスを提案する連載。初回は、そもそもプロジェクトとは、プロジェクト管理とは何かについて解説し、プロジェクト推進における4+1のフェーズを紹介する。
本連載では、「アジャイル時代のプロジェクトマネジメント」というテーマで、プロジェクトマネジメント/プロジェクト管理の基礎から、アジャイル開発の理想と現実、成功例と失敗例、そして最後にベストプラクティスの提案を数回にわたって進めていきます。Cuonの石川と申します。よろしくお願いします。
主に、システム開発/Webサービス開発のプロジェクトに関わるエンジニアの参考になればうれしいです。
連載第1回である今回は、実際にWebアプリケーション開発を受託、もしくは委任で仕事を請けた場合を想定し、プロジェクトとプロジェクトマネジメントの概要についてお話しします。
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)には、「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される“有期性の業務”である」と定義されています。「PMBOKとは何?」という方は、下記記事を参考にしてください。
ここで重要なのは、「有期性の業務」というところです。「期限を決めて、プロダクトやサービスを作るのがプロジェクトである」といえます。プロジェクトを成功させるためには、知識やプロセスの考え方、そしていくつものツールや手法が必要になります。
次の章では簡単にプロジェクトマネジメントについて説明します。
プロジェクトマネジメントは従来、日本の製造業を支えてきた下記の「QCD」の管理活動として考えられており、独立した概念として捉えられていませんでした。
先に紹介したPMBOK(第5版)は、10個の知識エリア、5つのプロセス群、47のマネジメントプロセスから出来上がっています。
PMBOKはアメリカの非営利団体である「PMI(Project Management Institute)」(日本支部もあり)が策定しました。
日本でも経済産業省のバックアップを受け、日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が日本でのプロジェクトマネジメント標準を確立する動きがあり、「P2M(プロジェクト・プログラムマネジメント)」という知識体系も存在しております。
昨今のインターネットの急速な発展により、QCDを守りつつ、ITプロジェクトを推進していくことは、非常に難しいこととされており、少し古いデータになりますが、「プロジェクト成功率は31.1%である」との調査結果が出ています(出典:日経コンピュータ(2008年))。
プロジェクトの成功率を上げるためにプロジェクトマネジメントがあり、マネジメントを推進するプロジェクトマネージャーの存在がプロジェクトには必要不可欠となってきます。
プロジェクトのQCDを担保しつつ成功に向けて推進するに当たって、いくつもの考え方やツール、手法があることは先ほど紹介しましたが、実際にいくつかを紹介します。
実際のプロジェクトの流れを見てみましょう。プロジェクトは、下記の図の通り、立ち上げの後計画を行い、計画された内容に沿って実行されます。プロジェクトを進めていく中で「当初の想定や予定に変更がないか?」を常に監視・コントロールしていきます。問題が発生した場合は、再計画し実行し直すことを繰り返し、最終的に終結します。
ここからは、各フェーズで「どんなことをして、何を作るのか?」を説明します。
立ち上げフェーズで一番重要なことは、関係者との親睦を深めつつ、プロジェクトの「スコープ」を決めることです。
例えば筆者が勤める会社では、全てのプロジェクトで必ずキックオフミーティングを行い、普段は打ち合わせに参加しない裏方のエンジニアも含めた関係者全員で顔合わせをしています。クライアントと顔合わせすることが、その後のモチベーションにもつながるからです。
「スコープ」とは、簡単に言うとプロダクトやサービスの最終形のことです。立ち上げ時にスコープを決め、そのスコープに沿って計画を進めます。プロジェクト計画書を作成し、プロジェクト全体の目的や意識を共有することが多いです。立ち上げ時にはこの「スコープマネジメント」が非常に大切です。
大規模プロジェクトの場合は、「ステークホルダーマネジメント計画書」を作成することもあります。
PMBOKでは、スコープ定義は「計画」フェーズに分類されていますが、筆者が勤める会社ではプロジェクトの前提条件である予算やスケジュールなども合わせて「立ち上げ」フェーズでいったん最終成果物の定義を済ませてしまいます。なぜなら、一般的な日本企業の場合は、先に予算取りをする必要があり、立ち上げフェーズでの見積額が「終結」フェーズまで引きずられることが多いためです。
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