「計画」フェーズで一番重要なことは、WBS(Work Breakdown Structure)を作成してスケジュールとコスト計画を立てることです。
プロダクト・サービスの機能一覧や立ち上げフェーズの「スコープ定義書」を基に、WBSを作成します。WBSの各アクティビティ(最小のワークパッケージが望ましい)に対してリソースを配分し、当初リソースで足りなければ、パートナーや協力会社からリソースの協力を得ます。こうした「リソース計画」は「計画」フェーズで非常に大切な要素の一つといえます。
しかしながら、昨今はどの業界でもエンジニア不足が取り沙汰されています。「現在のプロジェクトにおいて、調達管理は品質管理の次に難しいのではないか」と個人的には考えています。
また、品質を計るための「メトリクス」は「計画」フェーズで作成されるのが一般的であり、定性的・定量的な指標と共に定義しておきます。
メトリクスとしては、下記などが参考になります。
「計画」が完了すると、次は「実行」フェーズです。「計画」フェーズで定義したWBSに沿って、プロジェクトを推進していきます。
ここで一番大切なのは、「チームのマネジメント」です。筆者が勤める会社でも「フルスタックエンジニア」と呼べるようなメンバーはごく一部に限られていますので、チームでの推進が非常に大切であり、「チームで戦えるか」を非常に重視しています。
次回以降は、この「実行」フェーズでアジャイルの開発方式を取り入れた事例をお話しします。
「プロジェクトの難しいところは、この『監視・コントロール』フェーズにある」と筆者は考えます。「成功率を上げるのは、『監視・コントロール』フェーズに懸かっている」といってもよいです。
プロジェクトを進めていくと、以下のように、当初、予測していなかった事態に遭遇することがよくあります。
などなど、ITの開発プロジェクトでは日常茶飯事に変更が行われます。
この変更を監視し、対応する仕組みを持つことが、このフェーズでは最重要となります。例えば、「変更管理」をコントロールする委員会の設置、それから変更管理の「チケット」を管理する仕組みでもいいでしょう。「見える化」し、クライアントとの調整を迅速に進めていくことが必要です。
システムの一部分が再計画を余儀なくされる場合もあり、全体のコスト・進捗状況・品質を見ながらプロジェクトを推進していきます。
紆余曲折を経て途中で終わるプロジェクトを除けば、どんなに辛いプロジェクトでも最後は終結フェーズに到達します。ここでは、正式に納品・検収の手順を経て、プロジェクトが「終結」となります。
最後もクライアントとミーティングを行い、「KPT法」(Keep:続けていきたいこと、Problem:問題があったこと、Try:次にやりたいこと)を用いて、必ず「ふりかえり」ミーティングを実施することを心掛けています。お互いの良かったところ、悪かったところを「マインドマップ」など使って「見える化」し、後に続く「保守」や機能改修時に使える教訓を残します。
KPT法は下記などが参考になります。
ここまで、筆者が勤める会社を例に一般的なWebアプリケーション構築プロジェクトの進め方とアウトプットを紹介しました。必要最低限のドキュメントを用いた、PMBOKの良いとこ取りの内容になっているかなと思います。
今回説明した、プロジェクトのフェーズ・大切なこと・アウトプットを一覧表にまとめました。
フェーズ | 大切なこと | アウトプット |
---|---|---|
立ち上げ | ・関係者と親睦を深めること ・プロダクト・プログラムのスコープを決めること |
・プロジェクト計画書 ・スコープ定義書 ・ステークホルダーマネジメント計画書 |
計画 | ・WBSを作成し、コスト・スケジュールの計画を立てること ・リソースの計画を立てること |
・WBS ・リスク一覧(見える化したもの) ・リソース計画書 |
実行 | ・チームのマネジメントを心掛けること | ・成果物(ソースコード・テスト計画書など) |
監視・コントロール | ・変更を監視し、対応する仕組みを持ち実践すること | ・変更管理表(変更の履歴が分かるもの) ・WBS更新版 ・リスク一覧更新版 ・リソース計画書更新版 |
終結 | ・ふりかえりをすること | ・次回につながる教訓 |
さて、次回はアジャイル開発手法についてお話しします。現在、筆者が勤める会社でも「アジャイルを取り入れてプロジェクトを推進したい」とクライアントの要望を受け、一部のプロジェクトでは、手法を取り入れ始めています。
アジャイルの理想と現実や、他の開発手法と比べた場合のメリット/デメリットに関しても言及していきたいと思っておりますので、ご期待ください。
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