ゲーム開発で有名なUnity。医療や建築、ヘルスケア、観光などゲーム以外の活用事例をイベントリポートでお届けする。
「Unity」といえば「ゲーム開発のハードルを下げたプラットフォーム。頭の中に思い描いたさまざまな風景を3Dでリアルタイムに表示できるエンジン」という印象が強い。しかしUnityの機能は、現実世界のモノを忠実に再現することにも活用できる。しかも現実のモノとは異なり、さまざまな角度から俯瞰したり、顕微鏡のように拡大したり、用途ごとに色分けしたりといったことも自由自在だ。こうした特徴が注目されて、医療や建築、ヘルスケア、教育など、ゲーム以外の用途にもUnityの活用が広がりつつある。
2014年12月4日、秋葉原でユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが開催した「Unity Solution Conference」では、ゲームというUnityの「得意分野」以外の活用事例、特にエンタープライズ領域における事例が一部紹介された。本稿では、その活用事例をまとめて紹介しよう。
「ゲームのちからのVRソリューションへの応用〜ジオ+CR+ゲーム=ヘルスケアソリューション〜」と題するセッションでは、ポケット・クエリーズの佐々木宣彦氏と、ゼンリンの永江裕之氏が登場し、Unityを活用した3D都市空間モデルを用いた、健康促進のためのプラットフォーム開発の取組みを紹介した。
ポケット・クエリーズはUnityを活用したゲーム開発を手掛けつつ、その普及に向けて独自キャラクター「クエリちゃん」を公開。3DモデルをUnityのアセットとして提供している。
佐々木氏が今注目しているトレンドは2つある。一つは、近年続々登場している「デバイス群」だ。Unityで活用できそうなものだけ挙げても、「VR系」「ジェスチャ系」「移動操作系」「電子工作系」、それに「ウェアラブル系」に大別できる。中には、Oculus RiftやKinect、Leap Motionなど、Unity用のプラグインがリリースされているものもある。
佐々木氏は、「2014年は、Unityでこうしたデバイス向けのアプリを開発する元年になるのではないか。筐体は3Dプリンターで作り、電子工作をして、Unityでアプリを作るといったことが容易になっている。本当に『アイデア勝負の時代』になるだろう」と述べた。
佐々木氏が注目しているもう一つのトレンドが「ヘルスケア」だ。こうしたウェアラブル系デバイスの流行に伴って、ヘルスケア分野への注目もまた高まるのではないかとは予測する。そこで現在、ゼンリンなど複数の企業と協力して、「日本人の寿命を延ばし、予防医療に的を絞った、楽しめるプラットフォーム」を開発中という。
3Dモデルで作成した都市空間を散歩する「Tokyo Virtual Walking」をベースとするこのプラットフォームでは、Kinectやスマートフォンを持ったユーザーが現実空間を散歩し、体を動かすことで、健康増進を支援する仕組みを提供する。ゲーム的な要素も盛り込み、健康に関する情報を学習できる仕組みも検討中だ。オススメルートやポイントで撮影した画像を共有するなど、「ちょっとしたコミュニティの要素」も取り入れていく方針という。
このプラットフォームの地図データ提供には、ゼンリンが協力している。ゼンリンは、「Japanese Otaku City」という3D都市モデルデータをUnityのアセットとして公開している。
ゼンリンの永江氏によると、Japanese Otaku Cityは、カーナビ向けに整備してきた3D地図データと2Dの地図情報を組み合わせて作られてきた独自形式のデータを、「Unityや各種3D CGソフトで活用できるよう、FBX形式に変換して提供した」(永江氏)ものだ。秋葉原エリアの625メートル四方のデータをベースに、看板などにデフォルメを加えた上で、3Dデータとして提供している。
ゼンリンではJapanese Otaku Cityのリリースに当たって、クエリちゃんとコラボしたり、クリエイティブ・コモンズのライセンスを採用するなど、さまざまな形で普及に取り組んだ。その結果、3カ月でダウンロード数は1万を超えたそうだ。今後、他の街の3Dモデルにも公開する予定だという。
Japanese Otaku Cityは、早速フライトシミュレーターなどのゲームに活用されているというが、永江氏は「Oculus Riftを利用して、大雨時の浸水体験などもできる。今後はゲームだけでなく土木・建築やバーチャルリアリティなど、さまざまな分野に展開できれば」と述べている。
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