vCloud Airの使い方を紹介する本連載。第二回の今回はメニューの一つとして注目を集める「vCloud Air Disaster Recovery」の使用方法や注意点を紹介します。ディザスターリカバリ対策でどのように使えるか、検討する際の指針も併せて紹介します。
本連載では、ヴイエムウェアが提供するパブリッククラウドサービスである「VMware vCloud Air(以降、vCloud Air)」の使い方を見ていきます。第一回では、サービスの全体像を整理しました。第二回である今回は、ディザスターリカバリ対策として、遠隔地サイトの代わりに、vCloud Airを使うケースを見ていきます。
東日本大震災以降、事業継続性について見直しを行う企業が増えています。特に情報システムのディザスターリカバリ(災害復旧)では遠隔地の拠点やデータセンター(遠隔地サイト)へデータを転送するケースが増えているようです。このとき、遠隔地サイトは、メインサイトとの対比において、ディザスターリカバリ用サイト(DRサイト)と呼ばれます。
遠隔地サイトへのデータ転送の場合、まずは遠隔地サイトを用意することが課題となります。従来はデータセンター事業者や自社の支社を利用することが多かったのですが、昨今では、費用や運用効率の良さからクラウド環境を利用するRaaS(Recovery as a Service)にユーザーの注目が集まっています。
ヴイエムウェアが提供するパブリッククラウドサービス「VMware vCloud Air(以下、vCloud Air)」でも、ディザスターリカバリ用メニューとして災害復旧サービスが用意されており(「VMware vCloud Air Disaster Recovery、以降vCloud Air DR」)、企業のメインサイト環境のDRサイトとして利用できます。
第一回で紹介しましたが、vCloud Airはインスタンスごとの課金ではなく、ハードウエアの容量や性能をひとまとまりのボリュームとして扱う「リソースプール」単位で契約するサービスです。本稿で紹介するvCloud Air DRの最小リソースプールでは、CPUは10GHz、メモリは20GB、ハードディスクは1TB、ネットワークは10Mbps保証/50Mbpsバースト/2パブリックIPが割り当てられます。
また、vCloud Air DRが利用対象とするメインサイト側の環境はvSphere環境に限定しています。そのため、オンプレミス環境と親和性が高く、既にメインサイトでvSphere環境を利用されている場合は、vCloud Air DRで簡単にディザスターリカバリ対策が実現します。
また、当然のことながら、vCloud AirもvSphereプラットフォーム上でサービス提供をしていますので、ディザスターリカバリ先での仮想マシンイメージの変換や、サーバー構成変更なども同じワークフローが使えます。また、実装内容にもよりますがアプリケーション側の書き換えなしで動作が期待できる点も特徴です。
vCloud Air DRを利用する場合、以下の点について考慮が必要です
以降では、実際にメインサイトでvCloud Air DRの設定を行う場合の手順を、設定、同期、実際のリカバリ手順の順に見ていきます。
まずはvCloud Air DRの設定方法を見ていきましょう。手順は「vSphere Replicationサーバーの構築」と「vCloud Airの登録」の二つです。つまり非常に簡単に設定できます。
vCloud Air全般にいえることですが、利用する際には、メインサイト環境の互換性を確認します。下記表で示したのは2015年1月7日時点のメインサイト環境の互換性です。利用には、互換性の要件を満たしていることが条件となりますので、確認しておきましょう。
メインサイト環境 | |
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VMware vSphere 5.1以降 | |
VMware vCenter Server 5.1以降 | |
VMware vSphere Replication 5.6以降(5.8から日本語化されています) | |
vCloud Airにつながるインターネット接続もしくはDirect Connet接続(専用線接続)環境 | |
VMware Replication用リソース(4 vCPU/4GB RAM/12GB vDisk) | |
vCloud Airが互換性の要件に挙げているゲストOSは次の通りです。vCloud Air DRもこの要件に準じますので確認しておきましょう。
対象のゲストOS | |
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vSphere Replication 5.6の場合はvSphere 5.1もしくはvSphere 5.5でサポートされるゲストOS | |
vSphere Replication 5.8の場合はvSphere5.5 Update2でサポートされるゲストOS | |
ただし、最新の正確な情報はヴイエムウェアの公式発表のものを参照ください。
vCloud Air DRを利用するには、まず、「vSphere Replication」サーバーを用意し、レプリケーションの設定を行います。vSphere Replicationは、仮想マシンイメージの標準フォーマットである「OVF」形式のファイルとして提供されています。
サーバー構築は、OVFファイルをダウンロードして「vSphere Client」もしくは「vSphere Web Client」から対象とするvCloud AirのDRサイトにインポートするだけで完了します。
ただし、vSphere Replicationサーバーで利用するDBを外部DBで利用したい場合やサーバー証明書を変更したい場合は、Webブラウザー経由でvSphere Replicationにログインし、追加設定を行う必要がありますのでご注意ください。
次に、vSphere Web Client側で同期を設定します(従来の「vSphere Client」では設定項目が存在しませんので注意してください)。
ここで設定するのは以下の二つです。
具体的な手順は次の項で、順に見ていきます。
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