2007年ごろになると、ブログやSNSが盛り上がりを見せ、個人が手軽に情報発信できるようになった。ITエンジニアも積極的に自分の言葉で話し始めるようになる。その背景として、オープンソースの流れが急激に強まってきていたことも見逃せない。
「サーバーにしても、データベースにしても、オープンソース系のプロダクトがメジャーになり、ミッションクリティカルな領域以外は、ベンダー系のプロダクトを使わなくてもシステムを構築できるようになってきた。ベンダーによる完備されたマニュアルが期待できない分野では、エンジニアが自ら情報共有していく流れへと転換していく。こうした流れの中で、今までベンダー固有のテクノロジに縛られていたITエンジニアが、オープンソースによって解放され、SNSやオフラインのコミュニティなどで積極的に情報を発信するようになった。オープンソースをきっかけに、ITエンジニアのビジネスフィールドは大きく広がった」と、藤村氏は指摘する。
ベンダーの縛りがなくなったことで、ITエンジニアのキャリア設計に、独立して起業したり、ベンチャー企業に飛び込んだり、という選択肢が生まれた。
「ITエンジニアは、もっともっと自由に働き方を選べるようになる可能性がある。現在のエンジニアリングには、プロダクティビティ(生産性)だけでなく、創造性を求めるクリエイティビティの要素も重要になってきたからだ。例えば、自分一人の発想でスマホアプリを開発し、それが世界中で爆発的にヒットすることも決して夢の話ではない。ITエンジニアが個人のスキルで新しいビジネスにチャレンジできるのが、今の時代なのだ」
2011年、藤村氏はアイティメディアを退社する。モバイルテクノロジを軸とする新たなメディアビジネスの在り方を模索し、2013年にスマートデバイスでニュースを手軽に閲覧できるアプリ「SmartNews」を提供するスマートニュース社へと活躍の場を移す。
藤村氏は当時、オープンソースが主流になったことにより、ITエンジニア向けのメディアは、従来までのビジネスモデルを再構築する時期に来ていると考えていた。さらに、2007年にiPhoneが登場したことで、いずれはスマートフォンがPC以上に広く普及し、メディアのプラットフォームにもなると確信。しかし当時の@ITでは、自身の考えを実験するのは難しかったので、「それならば一から自分の手でやってみようと決断し、スタートアップだったスマートニュース社に参加した」と藤村氏は、@ITから次のステージに進んだ理由を明かした。
インタビューの最後に藤村氏は、これからの時代を担うITエンジニアに向けてエールを送った。
「今年で@ITのサイトオープンから15年たつが、今までの15年よりも、これからの5年の方がもっと大きな変化が起こると思っている。テクノロジの進歩は今もとどまることなく、同時並行的にイノベーションが生じる状況だ。2020年にはどんなテクノロジがトレンドになっているのか想像もつかない。その中で、ITエンジニアは、世の中で起きているテクノロジの変化を敏感に捉えて自分の仕事と重ね合わせ、面白い未来を想像してワクワクしながらキャリアアップを目指してほしい」
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