プログラマー、SE(システムエンジニア)、プロジェクトマネジャー――IT業界のさまざまな職業を紹介する本連載、第2回は「ITコンサルタント」を紹介する。ITコンサルタントになるには、どのようなスキルが必要なのだろうか?
一口に「ITエンジニア」と言っても、その仕事は職種によってさまざまだ。「ITエンジニア職業図鑑」は、「プログラマー」「SE(システムエンジニア)」「プロジェクトマネジャー」などのIT業界に存在するさまざまな職業を取り上げ、仕事内容や必要とされる能力、仕事のやりがいなどを紹介する。IT業界に興味のある学生諸君の職業選択の参考になれば、幸いだ。
前回は、ITエンジニアといえば誰もが真っ先に思い浮かべるであろう「プログラマー」を紹介した。今回は「ITコンサルタント」を紹介する。コンサルタントというと、経営者に近い位置で企業運営の問題点を洗い出したり、改善案を策定したりする「経営コンサルタント」のイメージが強いが、「IT」のコンサルタントは、どのようなことをするのだろうか。
ITコンサルタントは、顧客企業の「全社レベルのシステム化中長期計画の立案」や、それを支える「IT部門の組織改革」「IT人材の確保・育成計画の策定」など、いわゆる「IT戦略の策定支援」を行う。また、大規模なシステム開発プロジェクトでは「プロジェクト管理支援」なども行う。
他のIT系の職種と異なるのは、「顧客(発注者)」側の立場、特に顧客企業の「経営者」の視点で仕事をする点である。システム開発や運用の仕事ではめったに会う機会がないような、顧客企業の役員や部長レベルの人物と議論を行うことが頻繁にある。
ITコンサルタントの仕事は、システム開発のように直接システムを作ることではなく、CIO(情報担当役員)を中心とした顧客側の組織全体を導いていくことである。
ITコンサルタントは、「さまざまなITスキル」をバランス良く、高いレベルで持っていることが必須だ。また「経営管理全般(会計・人事・組織行動・統計・戦略など)に関する知識」も必要である。さらに、「コミュニケーション能力」や「問題解決能力」といったコンサルタントとしてのスキルも高いレベルで求められる。
新卒入社後すぐにITコンサルタントになる人は少なく、IT業界のさまざまな職種を経験しつつ、その他のスキルを自己学習で身に付けながら、ITコンサルタントになっていく人が多い。逆に、ITとは関係のない経営企画業務を経て、ITコンサルタントになる人もいる。
ITコンサルタントは、システムだけではなく、経営や人に関心がある人が向いている。加えて、自分よりもはるかに目上の人間に対しても、臆することなく意見が言える人が望ましい。
また、1対1でも、多くの人間の前でも、話をすることが得意な人は素養があると言える。
ITコンサルタントは具体的にはどのような仕事をしているのだろうか。典型的な1週間の活動内容を紹介しよう。
曜日 | 活動内容 |
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月曜日 | 午前中、A社のCIOにヒアリング。午後は会社に戻り、ヒアリング内容を取りまとめ、火曜日の顧客との打ち合わせ用の討議資料を作成する |
火曜日 | 月曜日に行ったヒアリング内容や、作成した討議資料を基に、A社IT部門の企画スタッフと打ち合わせ。次週に行う中期IT戦略会議の構成を検討する |
水曜日 | 自社が開催するセミナーで「今後のIT動向」について講演する。その後、来場した顧客と懇親や意見交換を行う。その後、翌月出版する書籍の執筆を行う |
木曜日 | 以前コンサルティングを行ったB社から、「アジア地域でのIT運営」について相談を受ける。早急に現地調査が必要とのことなので、コンサルティングの提案準備に入る |
金曜日 | B社への提案に向け、シンガポールのコンサルティング部隊とテレビ会議。その後、過去の類似コンサルティングプロジェクトの提案書や報告書を読み込む |
「ヒアリング」「資料作成」「セミナーで講演」「書籍執筆」「海外とのテレビ会議」など、さまざまな仕事を行っていることが分かる。一見、華やかな業務内容だが、講演や書籍執筆の準備や学習を普段より行うなど、地道な努力が必要だ。
「ITエンジニア職業図鑑」、次回はシステムの番人「ITサービスエンジニア」を紹介する。
ITマネジメントコンサルティング部 上級システムコンサルタント
銀行系シンクタンクなどを経て、2004年 野村総合研究所に入社。メガバンクなどのミッションクリティカルシステムにおけるシステム基盤設計や運用設計などを経験した後、システムコンサルタントに。以後、ユーザー企業のIT部門に対し、組織改革、ITガバナンスの仕組み導入、開発標準化などのコンサルティングを手掛けている
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