ユーザーデータと比べると、アプリケーションの設定の移行は少々厄介だ。以下、容易で柔軟な方法から説明する。
まず、対象のアプリケーションに設定などをクラウドと同期(バックアップ)する機能があるなら、それを利用するのが手っ取り早い。
Webブラウザを例に挙げると、Google ChromeやMozilla Firefoxならアカウントを登録するだけで設定(ブックマークやアドオン、Cookie、パスワードなどを含む)をクラウドにバックアップできる。移行後に同期アカウントを再設定すれば、自動的に元の設定が反映される。
Internet Explorer(IE)でも、Windows 8.1+IE+Microsoftアカウントという構成で運用しているなら、自動的にお気に入りや履歴、パスワードなどが同期されるようになっている。
これならモバイル端末とPCの間で、ブックマークや閲覧履歴などを共有できるというメリットも享受できる。
Webブラウザに蓄えられてきたIDとパスワードについては、クラウドベースのパスワード管理ツールに移行するという手もある。ツールのセットアップ時にWebブラウザからID/パスワードが自動的にエクスポートされ、クラウド上のセキュアな領域に保存される。以後はWindows 10のインストール後にツールを再セットアップすれば、自動的にID/パスワードを入力フォームに記入できるようになる。
クラウド同期機能の次に確認したいのは、アプリケーションに設定のエクスポート/インポート機能が備わっているかどうかだ。
例えばIEの場合、[ファイル]メニュー−[インポートとエクスポート]からお気に入り(ブックマーク)やCookie、RSSフィードをファイルにエクスポートし、それを別のPC/Windows OSにインポートすることで、これらを移行できる。Microsoft Edgeの場合は、Internet Explorer 11からEdgeにお気に入りをインポートする機能が利用できる。
また、ファイル共有やリモートデスクトップなどで他のWindows PCに接続するのに必要な認証情報(資格情報)も、[コントロールパネル]の[資格情報マネージャー]にある[資格情報コンテナーのバックアップ]/[資格情報コンテナーの復元]によってエクスポート/インポートできる。
以上の2つの機能が見あたらなければ、手動で設定を移すことになる。アプリケーションの設定は通常、次の場所に保存されていることが多い。
設定ファイルは、事前にコピーしておいて、移行後に同じフォルダへコピーする。レジストリの場合は、レジストリエディタあるいはregコマンドなどを使って事前に該当エントリを.regファイルにエクスポートし、移行後に同じエントリにインポートする。その後にアプリケーションを再インストールする。
事前にレジストリをエクスポートし忘れた場合は、システムドライブのフルバックアップからレジストリの実体ファイル(ハイブファイル)を抽出して、そこからオフラインのままエクスポートすることも可能だ。
ただし、これらの方法で正常に移行できるかどうかはアプリケーションに依存する。それに、アプリケーションごとに設定ファイルやレジストリエントリのありかを見つけるのも難しい。うまく移行できない事態を想定して、原始的だが設定画面のスクリーンキャプチャーも撮っておく、あるいは設定項目をメモするといったことも検討した方がよい。
ここまでの説明を踏まえて、Windows 10のインストール手順を説明しよう。
Windows 10をクリーンインストールするには、まずTIPS「【Windows 10】『メディア作成ツール』でインストールUSBメモリを作る」を参考にして、起動可能なUSBメモリまたはDVD-Rを作成する(以下ではUSBメモリを前提に説明する)。
このときダウンロードされるインストールイメージは、機能アップデートなどが提供されるたび、新ビルドに更新されているので、必要なときにダウンロードし直して、なるべく最新版を利用するのが望ましい。
作成したインストールUSBメモリをWindows 10にアップグレードしたいPCに差し、このUSBメモリから起動する(BIOSで起動の順番を設定するか、[F12]キーなどを押してUSBメモリから起動するようにすること)。[Windowsセットアップ]ウィザードが始まったら、指示に従って進める。次の[Windowsのライセンス認証]画面が表示されたら、購入したWindows 10のプロダクトキーを入力する。
無償アップグレード期間中に一度、Windows 10にしている場合は、前述の通り「デジタル登録情報」が保存されているため、新たなWindows 10のプロダクトキーは不要だ。この場合は、[ライセンス認証]画面でプロダクトキーを入力せず、[プロダクトキーがありません]リンクをクリックして、インストールを進めればよい。プロダクトキーまたは前述のデジタル登録情報が確認できると、以下のライセンス条項の画面が表示されるので、次に進める。
次の「インストールの種類を選んでください」では、[カスタム: Windowsのみをインストールする (詳細設定)]を選ぶ。
次の「Windowsのインストール場所を選んでください」画面では、インストール先のパーティションを選択する。これでインストールファイルのコピーなどが始まる。
しばらく待っていると、Windows 10の簡単設定の画面が表示される。ここからはインプレースアップグレードとほぼ共通だ。元のシステムは、[Windows.old]フォルダに保存されるので、不要になったら、このフォルダを削除すればよい。
もしサードパーティー製移行支援ツールを使うなら、インストール中に作成する最初のユーザーアカウントは、元のWindows 7/8.1には存在しない名前のアカウントにした方がよい。データ/設定の移行時に同じ名前のアカウントが存在していると、自動的な移行に失敗することがあるからだ。
逆にツールを使わずに移行する場合は、Windows 7/8.1で利用していたのと同じ名前のユーザーアカウントを作成する必要がある。
Windows 10のインストールウィザードが完了しても、ライセンス認証が完了していないことがある。それを確認するには、管理者アカウントでサインインしてからスタートメニューより[Windowsの設定]アプリを起動する。ライセンス認証が未了の場合、その旨が設定アプリの下端に表示される。
その場合は、以下の手順でプロダクトキーを指定して、ライセンス認証を完了させる。
■更新履歴
【2019/08/29】最新の状況に合わせて記事を更新しました。
【2016/04/08】初版公開。
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