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» 2016年04月28日 05時00分 公開

アドビがInVisionを買収せずに、競合となるUXプロトタイピングツールを作った狙いとはAdobe XD開発担当者に聞く(2/2 ページ)

[柴田克己,@IT]
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実は「XD」も「XD」を使って作っている

岡本氏 僕はXDのクローズドプレリリースに参加しました。手に入れて最初にやってみたのは「頭の中にあるイメージを形にしてみる」ということでした。僕も含めて、デザインがあまり得意ではないが、プロジェクトを進めなければならない立場にいるディレクターや企画担当者は多くいると思います。これまでは「頭の中にあるイメージ」をデザイナーに伝えるのに、大変苦労していました。一所懸命、紙に描いて説明してみるけれど「言っていることが分からない」と言われてしまうことも多かったですね(笑)。

 今回、XDでそれをやってみたところ、デザイナーとのコミュニケーションが非常にうまくいくように感じました。これまでのお話の中では、XDは「UXデザイナー」向けに作っているということでしたが、僕としては非デザイナーも、積極的にXDを使っていくべきだと感じています。現時点でそういった利用例などは聞いていませんか。

Shorten氏 やはり最初に使い始めたのは、これまで複数のツールを使い分けて苦労していたデザイナーが多かったようです。ただ、Photoshopなどもそうですが、デザイナーがそのツールを中心に作業を進めるようになると、その周辺の人たちも同じツールを使ってコミュニケーションするという流れは当然あると思います。

岡本氏 2015年のMAXに参加したとき、実は仲間内で「今回のMAXでは、どんなサプライズ発表があるか」を予想する遊びをやりました。そのとき、僕は(プロトタイピングのWebサービスを提供している)「InVision」をアドビが買収するのではないかと予測したのです。実際、InVisionのカスタマーリストにはアドビの名前もありますし、かなり良い予想だったのではないかと思うのですが、実際に発表されたのは、InVisionと競合するようなアプリケーション(XD)でした(笑)。実際に、「アドビはInVisionのユーザーなのか」も含めて、どう考えているのか聞かせてほしいのですが。

Shorten氏 残念ながら、会社としての買収戦略についてはコメントできません(笑)。ただ、アドビの社内には多くのデザイナーがおり、彼らに対しては特に自社のツールのみを使うことを強制してはいないのです。そのため、アドビのデザイナーが他社のツールを使っているケースがあることも分かっていましたし、特にUXのプロトタイピングという領域では、アドビがより良い製品を作るべきだという話は以前からありました。今回リリースしたXDのプレビューは、社内でも多く使われていて、評価も高いようです。

Wodsworth氏 アドビ社内のデザイナーも、社外のデザイナーと同じように「デザインができても、それをどう他者に説明するか」という点で課題を抱えていました。その課題を最もうまく解決する方法は、「デザイン」と「プロトタイプ」の機能を備え、それをシェアできる独自のツールを作ることだったというわけです。

 実は私自身、XDの開発に当たって、XDを使ってプロトタイプを作るということをやっているのですよ。

最新版のXDの画面(赤枠で囲った部分が「Repeat Gridを使ってみては?」と提案してくれている部分)

Shorten氏 今、彼がデモに使っているのは、近日リリース予定の最新版のXDです。最新版には、ユーザーの操作を監視して、より良い機能をサジェストする仕組みを実装しています。

 例えば、カタログのようなコンテンツで枠を並べて表示させたい場合、コピー&ペーストで枠を増やしてイメージを作るケースが多いと思うのですが、XDにはそのための「Repeat Grid」と呼ばれる機能があります。最新版では、ユーザーがグリッドをコピー&ペーストしている場合に「Repeat Gridを使ってみては?」と提案してくれます。Repeat Gridを使うと、グリッド内のテキストを外部から読み込む作業も、より容易になりますよ。

気になる今後の機能強化と正式リリースのプランは?

――XDを他のプラットフォーム向けに提供する計画はありますか。

Shorten氏 現在はMac(OS X)のみのサポートとなっていますが、Windows 10版も開発しています。また、iOS、Android向けのコンパニオンツールについても開発を進めており、追って提供する予定です。コンパニオンツールは、プロトタイプを実際のデバイス上でプレビューできるようにするものです。

――iOS/AndroidデバイスでXD本体を動かすような計画はあるのでしょうか。

Shorten氏 いろんなことを考えてはいますが、これまでデザイナーにヒアリングしたところでは、デスクトップでデザインしたものが、さまざまな環境でプレビューできることへのニーズの方が高いですね。モバイルプラットフォームでXD本体を動かすことについては、プライオリティは低いと考えています。

――今後の機能追加について、決まっていることがあれば教えてください

Shorten氏 今は「毎月、XDに新しい機能を追加する」ことを計画しています。ユーザーのフィードバックのうち、プライオリティの高い追加機能やバグフィックスを行うことを目指しています。

 既に予定されているものとしては、Windows版の提供と、Creative Cloud上でのシェア機能の追加です。その他に、ユーザーからのニーズが高いものとしては「レイヤー機能」が挙げられます。レイヤーについては、Photoshopのようなリッチな機能が必要なのか、より簡易なものでいいのか、「UXデザインに必要なレイヤー機能」について、現在、調査検討中です。

動画が取得できませんでした
2016年4月26日(米国時間)にリリースされたAdobe XD Public Preview 2の新機能

岡本氏 XDは、2016年のMAXで正式にリリースされるのでしょうか。

Shorten氏 「バージョン1.0」として、XDを正式にリリースする時期については、まだ決まっていません。現在考えているのは、月単位の機能強化を重ねる中で、XDのユーザーが「これが1.0でいいよ」と思ってくれた段階でそうするというものです。既に、多くのユーザーがXDのプレビューを使ってくれていますが、「まだこれが足りない」と感じる部分は多くあると思います。

 例えば、画面間のつながりだけではなく、スクロールやトラジションといった効果なども含めてプレビューできれば、よりコミュニケーションはしやすくなるはずです。

 ただ、XDの開発チームはあまり大きくないため、今後もユーザーフォーラム上でプライオリティを検討しながら、順次開発を行っていく形になるでしょう。求められているものを順に追加していって、ユーザーの十分な支持が得られたときに、正式にリリースしたいと思っています。

Wodsworth氏(左)のデモを見ながら談笑するShorten氏(右)

聞き手紹介

岡本 紳吾(おかもと しんご)

1975年大阪生まれ。2000年ごろよりAdobe Flash(当時はmacromedia)を使ったコンテンツ制作を始め、Flash歴だけは異様に長い。自他共に認めるFlash大好きっ子。2008年より活動の拠点を東京に移し、2011年に独立。最近はAdobe Edge系を活用し、HTML5コンテンツも手掛ける。Webプロデュースと制作と山岳メディア運営の会社、hatte Inc.代表取締役。

Twitter:@hage

Facebook:shingo.okamoto


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