Windows 10にアップグレードするには、幾つか方法が考えられる。
それぞれ、次のようなメリットや注意点がある
移行方法 | 利点 | 注意点や問題点 |
---|---|---|
現在使っているWindows 7/8.1をWindows 10にインプレースアップグレードする | ・2016年7月29日までならOSのアップグレードが無料 ・データの移行やアプリの再インストール作業が不要もしくは大幅に容易 ・インストール後30日以内なら元のOSに復元できる |
・アップグレード後にアプリやデバイスが利用できないことがある ・CPUパワーやメモリ、ディスク不足などでWindows 10を十分に活用できないことがある ・アップグレードの失敗によるデータ喪失のリスクがある ・インストール後30日以上経過するか、復元用データを削除したり、次のメジャーアップデートを適用したりすると復元できなくなる |
データをバックアップ後、クリーンインストールしてから、データなどをリストアする | ・2016年7月29日までならOSのアップグレードが無料 ・最新のハードウェアを活用できる。x86からx64、BIOS+MBR方式からUEFI+GPT方式への移行などが可能 ・元のOSへの復元はできない |
・リストアに備えて、旧データのバックアップが必要 ・アプリを再インストールしたり、旧PCのバックアップからデータをリストアしたりする手間が必要 |
別の新しいWindows 10 PCを用意して、旧PCからデータを移行する | ・OSのアップグレードやインストールの手間が不要(新PCにWindows 10がプリインストールされている場合) ・旧PCを併用するので、新旧環境でのアプリの動作チェックなどが容易 |
・旧PCからデータを移行したりアプリを再インストールしたりする手間が必要 |
Windows 10へのアップグレード/移行プラン |
3番目の方法は、正確にはWindows 10へのアップグレードではなく、新しいWindows 10のPCに対するデータの移行である(新しくWindows 10 PCを買い足した場合も同様)。インプレースアップグレードしてしまうとアプリやデバイスの互換性の問題などが生じる可能性があるので、それを避けるため、旧PCの環境を残したまま、新しく導入したWindows 10 PCに少しずつアプリやデータなどを移行させる。
ただし、Windows 10には残念ながら標準のデータ移行ツールは用意されていない。サードパーティー製のデータ移行ツールなどを使えば比較的簡単に実現できる。マイクロソフトは以下のページでAOSデータ製の移行ツールを紹介している(ツールは無償ではない)。
現在新しくWindows PCを購入したりリースしたりすると、ほとんどの場合はOSがWindows 10になっている。会社などで大量にWindows 10 PCを導入する予定があるなら、大量のユーザーデータの移行をサポートするようなツールの利用も考えるべきだろう。
Windows 10へのアップグレードに限らず、本来ならばWindows OSのメジャーバージョンアップをする際には、事前の十分な準備や手順の確認などが必要である。Windows 10へのアップグレードは簡単だし、現在ではほぼ勝手にアップグレードされてしまっていることもあるが、可能なら次のような手順でアップグレード作業を進める。
なおアップグレードインストールは時間や手間がかかるだけでなく、ごくまれだが、アップグレードが失敗することもある。そのような事態に備えて、データやシステムのバックアップを小まめに取るなど、備えだけはしておきたい。
この段階では、現在使用中のPCがWindows 10へアップグレード可能か、現在利用しているアプリやデバイスのWindows 10対応状況のチェック、アップグレードに備えたデータのバックアップなどを行う。
チェック | 項目 |
---|---|
□ | Windows 10のハードウェア/ソフトウェア要件に合致しているか確認 |
□ | PCベンダー提供のWindows 10アップグレード手順を確認 |
□ | (必要なら)MicrosoftアカウントやOneDriveのセットアップ |
□ | (必要なら)クラウド対応。既存データの保存やアプリ設定の同期をセットアップ |
□ | 不要不急なデバイスの取り外し |
□ | 既存デバイスのWindows 10対応ドライバがないか確認。あれば入手 |
□ | 既存アプリのWindows 10対応版の有無を確認。あれば更新 |
□ | Windows 10非対応デバイスの取り外し |
□ | Windows 10非対応アプリのアンインストール |
□ | 既存HDD/SSDの空き容量を確認 |
□ | 既存HDD/SSDにchkdskを実行し、エラーがないことを確認 |
□ | フルバックアップ |
チェックリスト: Windows 10アップグレード手順1.事前の調査、準備 |
上表の各項目の詳細は、次の記事を参照していただきたい。
Windows 10へアップグレードするには、「Windows 10を入手する」アプリやWindows Updateを利用するのが簡単だが、既にTIPS「Windows UpdateによるWindows 10へのアップグレードを『ブロック』する方法」の方法でアップグレードをブロックしているユーザーも少なくないだろう。その場合は、インストール用のUSBメモリやISOイメージを使ってインストーラを起動して作業する。
インストール作業そのものは特に難しい選択肢もなく、簡単である。コンピューターの名前と作成するユーザーアカウント、パスワードの指定ぐらいで、アップグレードやインストールが完了する。
Windows 10のセットアップが完了したら、状況に応じて次のような作業を適宜実施しよう。
チェック | 項目 |
---|---|
□ | デバイスドライバのインストールまたは更新 |
□ | Windows OSの機能の確認。ファイル共有やVPN接続、印刷など |
□ | アプリの動作確認。必要なら再インストール |
□ | 不要不急として取り外したデバイスの再接続。必要ならデバイスドライバの更新 |
□ | Windows Updateで更新の確認 |
□ | Windows 10の設定の確認。デフォルトのブラウザなど |
チェックリスト: Windows 10アップグレード手順3.アップグレード後の作業 |
以下、2点補足しておく
●デバイスドライバのインストール
Windows 10には多数の標準的なドライバが用意されているため、アップグレード直後でもあまり問題が表面化しないことが多い。だが汎用のドライバでは機能が不足していて、一部の機能が使えないことがある。なのでアップグレード後は、まずデバイスマネージャーの画面などを確認してドライバが不足していないかどうかを確認し、必要なら各ベンダーの最新ドライバや関連ツールをインストールする。
●アプリの動作確認と(再)インストール
Windows 10へのアップグレード後にアプリが動かなくなった場合、アプリによってはいったんアンインストールしてから再インストールすると動くものもある。また、アプリの設定を変更したり、ユーザーデータをインポートし直したりすれば動くものもあるので、各アプリのサポートページなどを参照して対処する。
アップグレード後に問題が発生し、解決できない場合は、インターネットや掲示板などで情報を収集するとよいだろう。
アップグレード後、どうしても動かないアプリなどがある場合は、1カ月以内なら元のWindows OSに戻すことも可能である(大規模な更新などを行うと不可能になる)。詳細については以下の記事を参照のこと。
Windows 10にアップグレードした場合、どのデバイスやデバイスドライバ、アプリが使えなくなるか、どの程度のパフォーマンスで動作するかなどは、実際のところはやってみないと分からないことも少なくない。
そんな場合は、TIPS「Windows 10を仮想ディスク(VHD/VHDX)にインストールして試用する」の方法を使って、対象となるPCにテスト的に実際にWindows 10を追加インストールして確認するという方法もある。この方法ではディスク上に30〜50GB程度の空き領域さえあれば、既存のOS環境に影響を与えることなくWindows 10をインストールして試用できる。仮想マシンではなく実PC上のハードウエア機能が使われるので、パフォーマンスチェックも可能である。インストールするWindows 10のイメージは、Insider Preview版や評価版、もしくはダウンロードツールで入手したISOイメージ(キー入力なしだと期間限定の評価版になる)が利用できる。
Windows 8/8.1/10以降ではアプリケーションや環境設定のクラウド対応などが進み、特にMicrosoftアカウントを利用していると、複数のWindows PC間でのドキュメントや設定の同期、バックアップなどが簡単になっている(Google Chromeなども含む)。なので、Windows 10へ移行するなら、OSを変更するだけでなく、MicrosoftアカウントやGoogleアカウント、OneDriveやGoogleドライブなどのクラウドストレージ、その他のクラウドサービスなどを活用するようにPCの利用方法も変えると、今後の運用・管理が簡単になることが多い。
今回はWindows 10へのアップグレードに関するメリットや注意点、アップグレードの方法などをまとめてみた。
今後はWindows 10が急速に普及すると予想される。互換性などの問題があるのでアップグレードしないと決めた場合でも、無償期間のうちにWindows 10へのアップグレードを試して、その使い勝手や互換性などを確かめてみるのがよいだろう。
■更新履歴
【2016/07/20】最新の事情を反映して、内容を更新しました。
【2016/06/09】初版公開。
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