Windows 7/8.1をWindows 10に「アップグレード」しても、32bit版から64bit版に変えることはできない。でもメモリをたくさん使うなら64bit版は必須。そこで「クリーンインストール」すれば64bit版Windows 10を利用できる。
対象OS:32bit版Windows 7/Windows 8.1
2016年7月末までの期間限定ながら、現在使用しているWindows 7/8.1を無償でWindows 10にアップグレードできるため、既にWindows 10に更新したユーザーも多いだろう。Windows 10へのアップグレードは「Windows 10を入手する」アプリがほぼ自動的に行ってくれるため、ほとんど何もせずにWindows 10へ移行できているはずだ。
だがこの自動的なアップグレードでは、32bit版のWindows 7/8.1は、32bit版のWindows 10にしかアップグレードされない。64bit版のWindows 10にしたければ、手動でWindows 10を「クリーンインストール」する必要がある。
32bit版Windowsと64bit版Windowsの最大の違いは、4GB以上の大量のメモリを使えるかどうかという点にある。
32bit版のクライアント向けWindows OSでは、(理論的には)最大でも4GBのメモリしか利用できない。しかも実際にはPCのメモリアーキテクチャの関係で、32bit版Windowsで利用できるメモリサイズは4GBではなく3GBほどに制限されている。たとえ4GB分のメモリを装着していても、1GB分は使われないままになっているのである。
こうした事情については、TIPS「Windows OSでサポートされている最大物理メモリサイズは?」「32bitクライアントOSで利用できる物理メモリは最大4Gbytesまで」で詳細を説明している。
もしシステムに4GBかそれ以上のメモリが装着されているなら(もしくはメモリを追加する予定があるなら)、64bit版のWindows 10へ移行するというのも1つの手である。64bit OSなら、利用できなかった1GB分も使えるようになり、その分システムのパフォーマンスが向上する可能性がある。
一方、メモリが2GBかそれ以下しかないシステムなら64bitにするメリットはあまりないので、32bit版のままでよいだろう。
本TIPSでは、32bit版Windows OSのシステムに対して、64bit版Windows 10をクリーンインストールする方法を簡単に紹介する。
ただしこれは「アップグレードインストール」ではなく、以前の環境やアプリケーション、ユーザーデータなどを何も引き継がないインストール方法なので、その後のセットアップ作業はかなり面倒である。
いちいちアプリケーションを全て再インストールしないといけないし(当然ながら、プリインストールアプリは全て使えなくなる)、ユーザーファイルも全部自分でバックアップ、リストアする必要がある。非常に手間が掛かるし、インストールに失敗してデータや環境などを失うリスクもある。
その一方で、長年の運用でたまった不要なファイルなどを整理/掃除できるチャンスでもある。そのメリットとリスクを理解した上で実行していただきたい。
64bit版のWindows 10をクリーンインストールするには、64bit版のインストールメディアを使ってシステムを起動し、Windows 10を新規インストールするだけである。その手順は、以下のTIPSで解説している方法をほぼそのまま実行するだけでよい。
クリーンインストールの手順をまとめておくと、次のようになる。
Windows 10がリリースされた当初は、最初にまずアップグレードインストールしてライセンス(プロダクトキー)をWindows 10用に更新し、その後64bit版Windows 10をクリーンインストールするという2段階の手順が必要だった。
だが2015年11月にリリースされた「Windows 10 バージョン1511(TH2)」以降では、(2016年7月末までなら)Windows 7/8.1のキーを使って、直接クリーンインストールできるようになっている。
以下、各操作について簡単に補足しておく。
最初に64bitのWindows 10インストール用のメディア(USBメモリかDVD-R)を作成する。具体的な手順は次のTIPSを参照のこと。2015年11月のWindows 10 バージョン1511のリリース前に作成したUSBメモリでは、直接クリーンインストールできないので注意。
USBメモリを作成するためのツールを起動すると、USBメモリに保存するWindows 10の情報を選択する画面が表示されるので、64bit版か、32bit版と64bit版の両方が含まれるインストールイメージを選択しておくこと。
インストール後の環境セットアップやインストールの失敗などに備えて、ユーザーのデータやファイルなどは全てバックアップ(一時的な場所へコピー)しておくこと。
手順1で作成したUSBメモリやDVDメディアなどを使ってシステムを起動する。32bitと64bitの選択画面が表示された場合は、必ず64bitの方を選択すること。
最初に表示される「Windowsのライセンス認証」の画面では、画面下にある[プロダクトキーがありません]をクリックして先へ進める(既に一度でもWindows 10にアップグレードしたことがあるシステムなら、キーの入力は不要)。
ここでキーを入力せずとも、Windows 10のインストール後に[設定]アプリの[ライセンス認証]画面でキーを入力する方が簡単でトラブルになりにくい。プロダクトキーからのエディションの判定がうまくいかないことがあるので、インストール作業が全部終わってから、後で認証させればよい。
インストールするWindows 10のエディション選択画面が表示された場合は、元のWindows OSのエディションに応じて(次のリンク参照)、「Windows 10 Pro」か「Windows 10 Home」のどちらかを選択する。
「インストールの種類を選んでください」の画面では、「アップグレード」ではなく、「カスタム」を選択して次の画面へ進める。
「インストール場所の選択」画面ではインストールしたいパーティションか未割り当て領域を選択する。すでにWindows OSがインストールされているパーティションを選択すると、もともとあった「\Windows」や「\Program Files」「\Users」などのフォルダが「\Windows.old」に移動後、新しくフォルダが作成される。パーティションを空にしてからインストールしたい場合は、パーティションの選択後、[削除]をクリックしてから先へ進める。
この後の手順は特に難しいところはないので省略する。ユーザーアカウントの入力などが終わればインストール作業はほぼ完了である。
インストール後、Windows Updateによる更新プログラムの適用や不足しているデバイスドライバのインストール(デバイスマネージャの画面で、「!」マークがついているデバイスに対して[ドライバーソフトウェアの更新]などを行う)、アプリケーションのインストール、ユーザーデータのリストアなどを行えばよい。リストア後の「\Windows.old」フォルダの内容が不要なら、手動で削除してもよい(そのまま残しておいても、1カ月ほどで自動削除される。TIPS「ダウンロードされたWindows 10のインストールファイルを削除する」参照)。
Windows 10インストール前後のメモリサイズ情報の画面例を以下に示しておく。これは4GBのメモリを搭載したPCだが、32bitのWindows 7上では3GBしか利用できていない。これに対してクリーンインストールした64bitのWindows 10では4GBのメモリが全て認識され、利用可能となっている。
■32bit版Windows 7のタスクマネージャ
■64bit版Windows 10のタスクマネージャのメモリ画面
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