「de:code 2016」基調講演に、米マイクロソフト シニアバイスプレジデント兼チーフエバンジェリストのSteven Guggenheimer氏が登壇。最新の製品や技術、さらにはその活用例をデモショーケース形式で披露した。
日本マイクロソフトは、5月24、25日の2日間にわたり、ITエンジニア向けの年次カンファレス「de:code 2016」を開催した。24日午前に行われた基調講演の後半には、米マイクロソフト シニアバイスプレジデント兼チーフエバンジェリストのSteven Guggenheimer氏が登壇。最新の製品や技術、さらにはその活用例をデモショーケース形式で披露した。
基調講演の前半を担当したCEOのSatya Nadella氏に代わって登壇したGuggenheimer氏は、講演の後半を通じて「マイクロソフトが、今後何を作っていくのか、それが自分にとってどのような影響があるのか。デベロッパーやビジネス担当者として、何ができるのかについて考えるための情報を提供したい」と述べた。
最初のテーマは「パーソナルコンピューティング」プラットフォームとしての「Windows 10」だ。Guggenheimer氏は、さまざまなデバイス向けのWindows APIを統一する取り組みが成果を上げていることに触れ「Windows 10向けに開発されたアプリケーション(UWPアプリ)は、モバイル、デスクトップ、携帯電話、組み込みデバイス、そして最新のHoloLensといった全てのデバイスへの横展開が可能だ」と、あらためて強調した。
2015年7月に正式リリースされたWindows 10は、間もなく登場から1年を迎えようとしている。Build 2016では、今夏に「Anniversary Edition」の名称で、Windows 10の大規模アップデートを実施することが発表された。
ここで、日本マイクロソフトのエバンジェリストである高橋忍氏が登壇し「Windows 10 Anniversary Edition」の3つの新機能について、実際のデモを交えて紹介を行った。
「Windows Ink」は、OSレベルでの「スタイラス(ペン)」のサポートを大幅に強化したものだ。OS標準の機能として追加された「Windows Ink Workspace」は、ペンのボタンを押すことでデスクトップ上に呼び出せ、手書き対応の「付せん」や「ペイント」などを即座に呼び出せるツールボックスとなっている。ブラウザの「Microsoft Edge」や地図ソフトの「マップ」、スクリーンショットへの手書きメモなども、従来よりも容易な手順で行えるようになり、直線を引きたいときに便利な「定規」のようなツールも用意されている。この「Windows Ink」は、Windows標準のソフトウェアだけではなく、デベロッパーが独自のアプリケーションに組み込んで利用することも可能という。
2つ目に紹介されたのは、基調講演前半でも触れられた「Bash for Windows」。UbuntuベースのLinuxサブシステムが導入されることで、bashの標準コマンドやスクリプトがWindows上で利用できることはもちろん、Ubuntu向けのプログラムをそのまま実行できるようになる。デモでは、Bash for WindowsからEmacsを起動してRubyスクリプトを編集したり、Xサーバを併用して「xeyes」(デスクトップ上に表示される目玉)を起動したり、「apt-get」コマンドでUbuntu向けパッケージのインストールやアップデートを行ったりできる様子が紹介された。
3つ目の「Desktop App Converter」は、既存のWindowsデスクトップ向けアプリ(x86/64アプリ)を「Windows Store」上で公開可能なUWPアプリとしてパッケージングする機能である。デモでは、この機能を通じて「秀丸エディタ」をUWPアプリとしてコンバートし、実際にWindows 10上で起動できることが示された。開発者は自作のデスクトップアプリをUWPアプリに変換することで、Windows Store上で配布できるようになる他、プッシュ通知やライブタイル、自動アップデート、アプリ内での付加機能販売といったUWP独自のフィーチャーによる機能強化を行うことも可能になる。
次に紹介されたのは「Visual Studio」による、クロスプラットフォーム開発事例だ。プレゼンテーションには、高橋氏に加えてエバンジェリストの井上章氏も参加。ブリヂストンで実際に利用されているタイヤの「検査記録アプリケーション」が、どのように開発されているのかが披露された。
このアプリケーションは、タイヤの空気圧や溝の深さなどを検査した結果を記録、参照するためのもので、音声によるフォームの呼び出しや数値入力、ペン入力によるコメントやサインの記入が可能となっている。Windowsのみならず、iOSやAndroid向けのタブレットでも動作できるよう、UWPアプリとしてだけではなく、Xamarinを通じてiOS/Android向けアプリとしてもビルドが行われているという。
デモでは、Visual Studio上でXAMLとC#を使ってアプリを開発したのち、「iOS Simulator for Windows」を使って、Windows上でiOSアプリの動作確認ができることが示された。iOSアプリの開発に当たっては、最終的なビルドをMac上のXcodeを通じて行う必要があるが、iOS Simulator for Windows上では、MacBookではできない「タッチ操作」による動作チェックが可能な点もメリットの1つになるとした。
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