Dynamics CRMとマイクロソフトの他の製品と組み合わせたさまざまな提案を行い、自ら開発していきたい――そんな濱口さんの希望条件を100%満たしてくれるのがアバナードだった。
アバナードは、アクセンチュアとマイクロソフトの2社により戦略的合弁会社として2000年に米国シアトルで設立した企業であり、日本法人は2005年に設立された。
顧客企業のコンサルティングをしっかりと行い、マイクロソフト製品を中心としたシステムの提案を幅広く行う同社は、濱口さんにとってまさに理想的な職場だった。
コンサルティングファームでは、システムの開発フェーズを外部のパートナー企業に依存しているところも多いが、アバナードでは基本自社内で行っているという。そうした点も、濱口さんが同社にひかれたポイントだ。
「プログラミングを知らずに上流へステップアップしてしまうエンジニアがいますが、果たしてそれでいいのかと常々思っていました。そこで採用面接で『どれぐらい自分で手を動かしますか?』と聞きました。たとえ上流にステップアップしても、自らプログラミングをする機会があるのは当社の魅力だと思っています」
また、技術の習得においても満足しているという。
「マイクロソフトの開発者向けサービスであるMSDNにも加入しているため、リリース前のOSやアプリ、開発環境など最新の情報やプロダクトに触れられるなど、とても助かっています」
現在、濱口さんは、顧客企業のシステムの移行プロジェクトを担当しており、マイクロソフト製品を組み合わせたさまざまな提案を行いながら、移行のためのツール開発にも力を発揮している。
そんな濱口さんに、就活生へのアドバイスをいただいた。
「IT業界を志望している人は、IT業界という大枠ではなく、Webサービスなのか、ゲームなのか、企業システムなのかなど、希望業種をより細かく絞り込んでおくと、ミスマッチが少なくなるのではないでしょうか」
SNSがきっかけでIT業界を志望した濱口さんが、企業システムの開発を中心とするSI企業に就職してしまったのは、細かな絞り込みができていなかったから。このアドバイスには、自身の反省も含まれているのだろう。もっとも濱口さんの場合は、企業システムの分野でキャリアをしっかりと築いていっているので、結果的に正解ではあったのだが。
「そして、学生時代に少しでもいいからプログラミングを勉強しておけばよかったと、今でも思います。ベンチャー企業などではプログラミング知識のある人しかエンジニアとして採用しないというケースもあります。プログラミングを勉強しておけば、就職先の選択肢が広がるのではないでしょうか」
開発職を目指していても、濱口さんのように営業職に配属されてしまうこともある。この点についてはどうだろうか。
「営業に配属されたのは良い経験だったと思います。そのおかげで他の製品や技術にも興味を持つようになって視野が広がりましたし、お客さまへの提案スキルは、エンジニアとして上流にステップアップしたときに役立ちます。営業を経験することは、キャリアステップとして“あり”だと思います」
希望と異なる部署に配属される、仕事内容が思っていたのとは違った、など不本意な状況に置かれる可能性は誰にもでもある。「災い転じて福となす」の見本のように、「現実」を血肉とし、「未来」へしっかりとつなげていった濱口さんのキャリア形成は、ぜひ見習いたいものだ。
本連載では、今後もIT企業の最前線で活躍するトップエンジニアに、学生時代に行った就職活動の内容や、これから就職活動を行う学生へのアドバイスを聞いていく。ぜひお楽しみに。
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