連載
» 2016年08月29日 05時00分 公開

教えて! キラキラお兄さん「エンジニアのキャリアもグロースハックできますか?」プロエンジニアインタビュー(1)(3/3 ページ)

[取材・文:齋藤公二, 聞き手:@IT編集部,@IT]
前のページへ 1|2|3       

シリーズAのスタートアップで“ゼロイチ”をやりたい!

 アドイノベーションで、テクノロジーと広告・マーケティングを融合した世界に触れると、今度は、ビジネスそのものを立ち上げる現場に行きたいという欲求が出てきた。そのタイミングでエキサイト時代の上司に誘われ、伸び盛りの企業として注目されていマネーフォワードに転職した。

 「マネーフォワードではAndroid版の家計簿アプリの開発を担当しました。自分のスキルが生かせることは良かったのですが、想像以上にフェーズが進んでいて、入ってから違和感を覚えるようになりました。個人的な感覚では、シリーズAではなくシリーズBだったんですね」

 シリーズAは資金調達の最初のフェーズであり、資金調達に向けてビジネスを作っていくことがミッションだ。一方、シリーズBは、「どうビジネスを立ち上げるか」から「どうビジネスを拡大していくか」にミッションが変わる。エンジニアに求められる役割も、ビジネスを考えた動き方よりは、定まった目標をどううまく遂行するかの比重が大きかった。実際、所属先のチームでは、仕様やデザインを決める席にエンジニアが参加することが少なく、出した意見が仕様に反映されるまで時間がかかることもあった。

 次第に「もっと小さなスタートアップで事業の立ち上げから関わった方が、やりたいことができるのでは」と考えるようになった。そんなタイミングで和気氏が独立してグロースハックスタジオを設立。同氏らから「最初の社員」として誘われたことをきっかけに、4人のコアメンバーの1人としてジョインすることになるのだ。

 「29歳で5社目」と言うと、かなりの落ち着きがないように映る。前田さん本人も「飽きっぽいので」と笑うが、実際に足跡を追ってみると「やりたいこと」に対して一途であることが分かる。

 「エンジニアって、自分から知識や情報を取りに行こうとしないと自分の好きなものに寄っちゃうんですよ。エンジニアとして、1つの技術に集中してそれだけを深く追い求めることは大事。でも、Webやスマホアプリのように常に新しい技術が出てくる世界では1つのことに集中し続けるのはリスクになりかねません。自分にはそのリスクを負い続ける度胸がなかった。だから、少しずついろいろな人から話を聞いて、知識と情報を広めていこうとした。そこに積極的になる方が自分らしいのかなと思います」

大事なのはユーザーのために考えること

 前田さんがエンジニアリングやビジネスを考えるときに1番大切にしているのは「エンドユーザー」だ。B2Cサービスからキャリアを始めたことも影響しているが、B2Bサービスでも常にエンドユーザーを意識するように努めている。

 じつは、前田さんには、エンドユーザーが見えなくなって心が折れそうになった経験がある。新卒で入社したSIerで、金融案件に従事したときだ。外部から遮断されたテレコムセンターに派遣され、テストケースのスクリーンショットを撮ってExcelに貼り続けてドキュメントを完成させるという、絵に書いたような「金融あるある案件」に遭遇した。使われているコードは汚い上、直す権限も与えられてない。数週間続ける中で、「誰のために自分が何をしているのか」が分からなくなった。

 それでもめげずに自宅に帰ってから新しい知識の勉強を続けていたが、あるとき先輩社員から「Webでこんなことしたいんだけどどうすればいいの」と質問され、がくぜんとした。前田さんは、Ajaxを使えばすぐにできることが分かったが、角が立たないように「Ajaxっていうのがあるらしいですよ」とやんわり答えた。すると先輩社員は、Ajaxという言葉自体を初めて聞いたような顔をした。2011年のことだ。ちなみにGoogle Mapsがリリースされ、Ajaxが脚光を集めたのは2005年の話だ。

 それを見て「Ajaxすら知らないのか。そうか。なるほど。やめよう」と、ストンと心の整理がついたという。エンドユーザーが見えなくなると、言われたことをやるだけのエンジニアなり、新しい技術の習得やリサーチも怠るようになる。そうこうするうちに、自分の技術力やポジションさえ見失うことになる、と悟ったからだ。

 前田さんは、環境は意識して変えられると考える。

 「仕様があって、ユーザーがいて、提供する機能がユーザーに合わないなら、ユーザーのために仕様を変えるべき。ユーザーのためにならないと技術を提供する意味はありません。そのためにはまずは疑問を誰かにぶつけることが大事だし、やってみて失敗することも必要です。失敗をすることで、自分の周りにあるカラを破れます。カラを破ることで周りの環境も変わってくるはずです」

 前田さんは新しい取り組みにも積極的だ。勉強会への参加は少なくなったが、新たに社外活動として、会社公認で個人事業主としての受託開発やサービス開発を始めた。これまで、iBeaconを使ったAndroid SDKや、広告のSDKなどを企業に対して納品したという。

 現在、前田さんがチャレンジしているのが、ビジネスとエンジニアリングを融合するための取り組みだ。例えば、エンジニアリング、デザイン、ビジネスという3本柱を、事業のグロースハックだけでなく、エンジニアの成長にも必要な要素として学ぼうとしている。前田さんはこう話す。

 「まだまだペーペーで勉強中です。分からないこともたくさんあります。分かるようになるには、3年、4年と時間がかかると思います。恐らく今までで1番長い社歴になるんじゃないでしょうか。でも、エンジニアリング、デザイン、ビジネスの3つを自分の軸として持っていれば、将来何かをやりたいと思ったとき、どんなことでも実現できる気がするんです」

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。