服部さんは、北海道札幌市近郊で生まれ育った。
機械いじりやアマチュア無線が趣味だった父親の影響で、子どものころからエンジニアという仕事に興味を持っており、小学校4年生のころには既にPC雑誌を読み、自宅にあったPCでオンラインソフトウェアを使ってみたり、体験版のVisual Basicでちょっとしたプログラミングを行ってみたりしていた。
そんな子ども時代を過ごした服部さんだったが、進学した函館の大学では「情報表現」について研究したという。
「情報をどのようにすれば、より人に伝えやすくなるか? という学問です。分かりやすい例で言えば、アイコンやピクトグラムなども含まれます」
服部さんが情報系ではなくデザイン分野を専攻したのには、目的があった。それは“もう一つの強みを持つ”ということ。
「子どものころから、さまざまなオンラインソフトを使っていたので、既存のソフトウェアには、機能面はよく練られているもののデザイン面では完成度を高める余地があるものも少なからずある、と思っていました。将来、自分がソフトウェアを開発する仕事に就くなら、その部分もしっかりと押さえておきたいと考えました」
第1の強みであるソフトウェア開発については、大学院で主に画像処理について本格的に学んだ。もちろん、就活では志望をIT業界に絞り込んだ。
服部さんは就活に当たって、志望する企業を立地で選ばず、業務内容で選んだ。そのため就職先候補には東京に本社を構える企業が並んだ。
北海道と東京とを往復する就職活動は、日程的にも金銭的にも、学生にとっては厳しいものだった。特に交通費と宿泊費は金額が多く、1回の往復で7〜8万円程度掛かったという。
「就職活動時はトータルで5〜6回は東京と北海道を往復したので、結果として総額40〜50万円ぐらい掛かっているはずです」
これでも服部さんなりに工夫を凝らした結果だという。
「面接日を集中させ、1回の上京で複数社を訪問できるようにスケジュールを調整し、交通機関はLCC(格安航空会社)を積極的に利用しました」
しかし、LCCが就航するのは利用客の多いメジャーな航路。函館空港からでは選択肢がなく、新千歳空港を利用することになる。函館から札幌に移動して、そこから飛行機に乗らなければならないという煩わしさもあった。
服部さんの友人には、1カ月間、仲間数人で東京に部屋を借り、そこを拠点に就活をしていた人たちもいたという。服部さんは就活時期が友人たちとは合わず、そこに加わることはできなかった。「時期が合えば、そうした節約術も積極的に利用したかったのですが……」と、残念さをにじませた。
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