個人ユーザーは更新プログラムのコントロールが事実上できなくなってしまったWindows 10。更新プログラムが原因でPCが起動しなくなってしまったときの対処方法を詳しく解説します。
Windows 10の「Windows Update」は、個人ユーザーが更新プログラムのインストール方法を細かくカスタマイズすることができなくなりました。Windows 10 Anniversary Update(バージョン1607、ビルド14393)からは、Windows Updateの「詳細」オプションで「自動(推奨)」と「自動の日時を設定するように通知する」の選択肢も消えてしまっています。
事実上、Windows Updateに関して個人ユーザーは、マイクロソフトの“なすがまま”になっています。それで、セキュリティが維持され、既知の不具合が修正さるのであれば文句はないのですが、問題のある更新プログラムが自動でインストールされ、PCが正常に起動しなくなるというリスクが増えるでしょう。実際、全ての利用者に影響したわけではありませんが、そのような事例がユーザーフォーラムなどに報告されています。
PCが正常に起動しなくなったときの、汎用的なトラブルシューティング方法について、本連載でも何度か解説しました。Windows 10の登場で、トラブルシューティング方法が役に立つ機会も増えそうなので、更新プログラムが原因のPCの起動問題について、あらためて、具体的に説明します。
まず、PCが突然起動できなくなった原因が、Windows Updateで配布された更新プログラムであると分かっている場合、あるいはその疑いがあるという場合の対処方法です。
ここでは仮に、Windows 10 Anniversary Updateの「14393.51」以前を、「14393.82」にアップデートする累積的な更新プログラム「KB3176934」が原因でPCが起動しなくなったとして、対象方法を説明します。
なお、KB3176934は例に挙げただけで、これでPCが起動しなくなるということはありません(KB3176934により、Windows PowerShellの機能の一部に不具合が発生するという問題がありますが、次の更新で修正されるようです)。
PCの起動に何度か失敗すると、自動修復のプロセスが始まるはずです。自動修復が始まったら、次の手順で操作して「Windows回復環境(Windows RE)」のコマンドプロンプトを開きます(画面1~5)。
自動修復のプロセスが始まらない場合は、何度かリセットしてみてください(※)。それでもダメなら、Windows 10の「インストールメディア(DVDやUSB)」や「システム修復ディスク」で起動し、「コンピューターを修復する」から「コマンドプロンプト」を開きます。これらの起動メディアが手元にないという場合は手詰まりです。知人に頼むか、PC販売店などに相談しましょう。
【※】Windows 10 Anniversary Updateの新機能である「Windows Defenderオフライン」を過去に実行したことがある場合、自動修復が「オフラインスキャン」に置き換わってしまう現象を確認しました。この現象については、筆者の個人ブログを参考にしてください。
Windows回復環境のコマンドプロンプトは、物理メモリ上(RAMディスク)に展開されて起動する「Windowsプリインストール環境(Windows PE)」をベースとした別のOS環境です。XドライブはRAMディスクに展開されたWindows PEのイメージであり、起動しなくなったWindows 10のCドライブではありません。
そこで、コマンドプロンプトで次のコマンドラインを実行し、起動しなくなったWindows 10のCドライブを探します(画面6)。Cドライブかもしれませんし、Dドライブにマウントされているかもしれません。「DIR」コマンドでドライブを参照して、「Windows」フォルダが存在することを確認してください。
- X:\Windows\System32> DISKPART
- DISKPART> LIST VOLUME
- DISKPART> EXIT
- X:\Windows\System32> DIR C:\やD:\
起動しなくなったWindows 10のCドライブ(ドライブ文字は「C:」ではないかもしれません)を見つけたら、次のコマンドラインを実行して問題の更新プログラムのパッケージ名を取得し(DISMの「/Get-Packages」)、アンインストールして(DISMの「/Remove-Package」)、再起動(WPEUTIL REBOOT)します(画面7)。「C:\」の部分は実際のドライブ文字に置き換えてください。なお、Windows 10の累積的な更新プログラムは、KB番号からは判断できない場合があります。インストールされた日時やビルド番号を参考に特定してください。
- X:\Windows\System32> DISM /Image:C:\ /Get-Packages
- X:\Windows\System32> DISM /Image:C:\ /Remove-Package /PackageName:Package_for_RollupFix~31bf3856ad364e35~amd64~~14393.82.1.0
- X:\Windows\System32> WPEUTIL REBOOT
Windows 10が正常に起動したら、以下のWebサイトから「Show or Hide updates」トラブルシューティングパッケージ(wsusshowhide.diagcab)をダウンロードして実行し、問題の更新プログラムが再びインストールされないように更新プログラムを非表示にします(画面8)。
PCがある日突然起動しなくなり、修復するには別の更新プログラムのインストールが必要というケースもあります。例えば、一部のデバイスドライバの証明書の問題で、PCが起動しなくなるという事例が実際にありました。
ここでは仮に、PCが起動しない問題を修正するために、累積的な更新プログラム「KB3176934」のインストールする必要があるとして、対象方法を説明します。なお、KB3176934は例に挙げただけで、KB3176934にそのような修正は含まれません。
まず、正常に利用できる別のWindows PCを使用して、「Microsoft Updateカタログ」のサイトから更新プログラムのスタンドアロンインストーラー(.msu)をダウンロードします(画面9)。なお、このサイトは「Internet Explorer(6.0以降)」でアクセスする必要があります。Microsoft Edge」やその他のWebブラウザでは更新プログラムをダウンロードできません。
更新プログラムのスタンドアロンインストーラー(.msu)を入手したら、USBメモリに保存します。NAS(Network Attached Storage)などの共有フォルダを利用できる場合は、そこに配置しても構いません。
先ほどと同じ手順でWindows回復環境のコマンドプロンプトを開き、更新プログラムをインストールし、再起動します(画面10)。例えば、起動しないWindows 10のオフラインイメージがCドライブで、更新プログラムを「C:\Work\AMD64-all-windows10.0-kb3176934-x64_5e7bc3013384454c32a4fa59c7879367b93f6e86.msu」にコピーした場合は、次のコマンドラインを実行します。
- X:\Windows\System32> DISM /Image:C:\ /Add-Package /PackagePath:C:\Work\AMD64-all-windows10.0-kb3176934-x64_5e7bc3013384454c32a4fa59c7879367b93f6e86.msu
- X:\Windows\System32> WPEUTIL REBOOT
共有フォルダから更新プログラムをコピーする場合は、「STARTNET」コマンドを実行してネットワークを初期化し、「COPY」コマンドでUNCパス(\\コンピュータ名またはIPアドレス\共有名\ファイルパス)からローカルディスクにコピーしてください。Xドライブにコピーも可能ですが、RAMディスクであるため容量に限りがあります。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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