最後に、AIやAIを実装したロボット自動運転車などの「スマートマシン」を活用したワークスタイルの変革について整理する。
グローバル化の面では、多言語を含む「対話支援サービス」が挙げられる。これにより、迅速な意思決定や海外とのコミュニケーション増加に伴うビジネスの機会が増えていくだろう。
定型業務は、「バックオフィス業務の自動化」やAIによる「自動決済機能」「自分秘書代行」などで、業務の自動化や効率化を進めていくことが想定される。
新しい事業や業務を始めるときにも、優秀な人材の採用や育成にコストや時間をかけることなく、AI活用で事業の早期立ち上げを実現するといったアプローチが想定される。
マネジメント業務では、「第三者的で客観的な視点の助言」をAIに求めることで、意思決定のスピードを速め、事業の成功率を高められる可能性がある。
また、商品開発や企画・マーケティング分野も、開発した商品の発売前に消費者の評価が得られる仕組みを作るなどのアプローチが考えられるだろう。
自動運転車の活用もワークスタイルの変革につながると考えられる。
例えば自動車通勤で毎日片道30分運転している人なら、自動運転車に置き換えることで、1日1時間仕事に充てられる時間が増える。月間で21時間、年間なら252時間の仕事時間の確保にもつながる。
このように本稿では、AI活用によるワークスタイルの変革予想図を紹介してきたが、いかがだっただろうか。「AIは人間の労働を代替する」といたずらに不安がるのではなく、業務におけるタスクをAIと分担することで、AIは「自動化による労働生産性の向上や意思決定支援など、人間の業務を補完・拡張する」ものとして、ワークスタイルを変革するきっかけになることがお分かりいただけたかと思う。
極端にいえば、AIを活用することで、(同じ業務量であれば)週休3日制が一般的になり、仕事重視からプライベート重視型のワークスタイルやライフスタイルに大きくシフトしていく可能性もあるのだ。
現時点では、AIは十分に市場に普及しておらず、テクノロジー的に成熟していない部分もあり、セキュリティリスクなどさまざまな課題も山積しているのが現実だが、今後、AI関連のテクノロジーやサービスは普及していくと想定される。AIを業務に取り入れ、ワークスタイルを変革し、進化させていくことができるかが、これからのビジネスパーソンのキャリアパス形成で、重要な位置付けとなっていくだろう。
本特集では、ワークスタイルを変革する技術として、リモートワークを支援する技術やAIを取り上げてきた。次回は、IoT(Internet of Things)を活用してワークシェアリングすると、どのようにワークスタイルが変革するのかを紹介する。
子育てや介護、場所や時間の制約などさまざまな制約で従来は働くことを「諦めていた」人たちを、働き続けさせようという動きが各所で現れている。本特集は、1億総ワークスタイル変革時代を支援するテクノロジーを紹介する。
林 雅之
ICT企業勤務。クラウドサービスのマーケティングを担当。
国際大学GLOCOM客員研究員。社団法人クラウド利用促進機構アドバイザー。
著書「イラスト図解式 この一冊で全部わかるクラウドの基本(SBクリエイティブ)」
「スマートマシン 機械が考える時代」「オープンクラウド入門」「オープンデータ超入門(ともにインプレスR&D)」「「クラウド・ビジネス」入門(創元社)」
ブログ:『ビジネス2.0』の視点
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