視覚障害者こそ、PCを使いこなしていろいろな仕事についてもらいたい――全盲のセキュリティエンジニアは、画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)を駆使して、人の役にたつモノ作りを続けている。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
「プロエンジニアインタビュー」は、IT業界で活躍中の「プロとしての気概を持って働くエンジニア=プロエンジニア」たちに、自身のキャリアやエンジニアとして心掛けていることなどを聞くインタビュー集だ。今後のキャリアに迷いや不安を持っている、新たな可能性を模索しているエンジニアたちの参考になれば幸いだ。
前回は、グロースハックの達人前田さんに、キャリアのグロースハック法をお話しいただいた。今回は、全盲という障害がありつつセキュリティ企業「ラック」でエンジニアとして働く外谷渉さんにお話を聞いた。
外谷さんは「CISSP」「システムアーキテクト」「情報セキュリティスペシャリスト」などの資格を取得し、同社の「サイバー・グリッド・ジャパン 次世代技術開発センター」で、フォレンジック支援ツールなどの開発に当たっている。社内の他の部署から寄せられる「こんなツールが欲しい」といった要望に基づいて設計を行い、プログラミングし、フィードバックを得ながら修正する……といった仕事が中心だ。
例えば現在取り組んでいるフォレンジック支援ツールは、「何千台とあるPCを手動で調査するのは困難です。それをシステム的に自動化することにより、より早く、より効率的に作業を進められるようにしたいと考えています」というもの。次世代技術開発センターでは他にも、中長期的なスパンで幾つかのテーマを立て、研究や新規システムの開発に取り組んでいるという。
外谷さんが初めてプログラミングというものに触れたのは、1999年、中学校の授業でのことだった。「数学の教科書にBASICの説明が載っていて、興味を持って簡単なゲームを作ったのがきっかけです」という。画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)を活用し、時にプログラミングに詳しい先生に話を聞くなどしながら、プログラミングスキルを伸ばしていった。
いくら興味があるからといって、読み上げソフトの音声を聞きながらのコーディングは骨が折れるもののように思える。現在の仕事でも、書いたコードをスクリーンリーダーで読み上げ、エラーメッセージが出れば、1行ごとにコードを読み直して修正する、という作業を行っているそうだ。
それでも続けられた原動力は「モノが作れること」だったそうだ。「視覚障害があると(物理的な)モノ作りは難しいのですが、プログラミングならば、コードを書くことで自分の思った通りのものができます。こうしたらうまくいくんじゃないか、といった試行錯誤もできますし」(外谷さん)
外谷さんにとって、「ドラッグ&ドロップで誰でも簡単にプログラミングできる」ことをうたい文句にしているような統合開発環境(IDE)は、ちょっと使いづらいのだそうだ。だから、マウスの動きをベースにしたり、ビジュアルを重視するアプリケーションを作るのはちょっと苦手。逆に、バックエンドのトランザクション処理のように設計やロジックが重視されるプログラムならば効率よく開発できるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.