阿部川 確かに、その通りですね。さてお仕事のお話はこれぐらいにして、中尾さんご自身についてお聞かせいただきたいんですけど。帰国子女で、米国の大学に行かれたんですよね。
中尾氏 ええ。マーケティングに興味があったので、大学卒業後は日本の外資系広告代理店に就職して、いわゆる営業の仕事をしていました。仕事は面白かったのですけれど、自分がプロジェクトの責任を持てるような仕事をしたいと思ってMBAを取得しにUCLA大学に行き、それからゲーム業界に移って「アクティビジョン」という会社に入りました。
「.com(ドットコム)バブル」のころで、ゲーム業界はものすごく面白い伸び方をしていましたね。その後「エレクトロニックアーツ」に移り、そこから今のKabamに移りました。
阿部川 コンシューマービジネスの中でもゲーム業界をお選びになったのはなぜですか?
中尾氏 エンターテインメントに興味があったんです。映画会社でもインターンシップをしたんですよ。いろいろ経験していく中で、テクノロジーへの関わり度合いが高いゲーム業界が1番面白いと思って。
ちょうどアクティビジョンがCPG(Consumer-Packaged-Goods 消費財)のマーケターを探していて、私は広告代理店時代にユニリーバを2年半ぐらい担当してCPGスタイルのマーケティング経験があったので、フィットしたというわけです。
阿部川 なるほど。で、Kabamにお移りになって5年。Kabamの良さはどこですか?
中尾氏 まだ5年しか勤務していないのに、たくさんの経験ができているところでしょうか。
KabamはもともとFacebookでゲームの運営をしていたのですが、Facebookだけではなく、自身のWebサイト、モバイルへとプラットフォームを移してきました。プラットフォームの移行は、とても重要なことなんです。特にいわゆるFree to Playゲーム(無料でプレイできるオンラインゲーム)は、とにかく1番たくさん人が居るプラットフォームで遊べるようにしないと、ビジネスが成り立ちませんから。非常に先見性のあるリーダーがいて、本当に面白い仕事をさせてもらってます。
阿部川 仕事の内容は変わってきていますか?
中尾氏 ええ。マーケティングの仕事をするつもりで入ったんですけど、実際にはライブオペレーションといいまして……、
阿部川 ライブオペレーション? すごい名前ですね。
中尾氏 いわゆる消費者と接する部署全てを担当するんです。カスタマーサービスだったり、「ゲームの中で特別なイベントをやってるよ」といった消費者に対するセールス&マーケティングをする部署だったり、PRだったり、いろいろな部署を管理する仕事です。
そこから今のスタジオオペレーションの仕事に移って、QA(Quality Assurance 品質保証)、ローカライゼーション、カスタマーインサイツ(消費者の購買動機調査・マーケットリサーチ)、オーディオ(ゲーム内の音響、サウンドデザイン)、それから開発のプロセスをマネジメントするプログラムマネジメント、デベロップメントマネジメント、さらにそれらの部署をマネジメントする仕事を経て、今はスタジオCOOのポジションに就いています。
開発スタジオそれぞれにGM(General manager ゼネラルマネジャー)がいるので、私は司令塔として他のマネジメント職と一緒にサポートしています。
仕事の内容は本当にどんどん変わっていきましたね。
ゲーム業界に入ったころは物理的な「モノ」としてゲームを販売していましたから、最初に卸す数量がちゃんと売れるか、ウォルマートで扱ってもらえるか、といったところがマーケティングの重要なポイントでした。今は「どうやってユーザーに見つけてもらうのか?」が大切です。
阿部川 ビジネスモデルが変わってきているんですね。それに応じて中尾さんも進化している。
中尾氏 変われないと続けていけないんですよ。これは開発チームにも会社にもいえることで、どんどん進化してるんだと思います。
阿部川 そういう変化をちゃんとしていかないと成長できない市場ですよね。市場をキャッチアップするためにやっていることってありますか? 他社のゲーム、例えば「ポケモンGO」はやりましたか?
中尾氏 ええ。やりました。面白かったです。「この観光名所に行くと、このレアなポケモンがコレクションできる」とか。
ゲームって実際にプレイしてみないと「あともうちょっと、もうちょっと……」というあの感覚は分からないですよね。ランキングトップのゲームは本当によくできていると思います。子どもからはよく「どうしてママはいつもゲームしてるの?」と言われますけど(笑)。
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