それでは米国の一般的な求人の例を見てみましょう(表現が少々大げさですが、そこはおいておきましょう)。
ABC Inc. is one of the most leading companies in the Silicon Valley. We are looking for the best experienced software engineer to expand our business.
“Job Description”は「職務記述書」です。ここで書かれているのは、「ABC社はシリコンバレーで急成長している企業の1つです。われわれは業務拡張のためにすばらしい経験を持ったソフトウェアエンジニアを募集しています」といった、募集の背景です。
次は入社後に担当する仕事の内容です。
Design, develop, implement support and maintain of ○○ systems.
“Responsibilities”は「業務の概要」です。「○○システムの設計、開発、実装、サポート、メンテナンス」とあります。たくさん列記されていることもありますが、逆にいえばここに書いていないことはやらなくてよいということです。
続いて、応募資格です。
BS degree in Computer Science, Computer Engineering or relevant technical field or equivalent practical experience. 2 years of ○○ development experience. Experience coding in △△.
“qualifications”は「(応募)資格」。この例では条件が2つに分けて書かれています。「Minimum=必須」の条件から見ていきましょう。
“BS”は“bachelor of science”、つまり「理工系の4大卒」です。この例ではコンピュータサイエンス、またはコンピュータエンジニアリングの4年卒の学位、または「それに相当する技術分野の実践的な経験があること」が必須条件です。
MS or PhD degree in Computer Science, Computer Engineering, Electrical Engineering or related field. Knowledge of ○○ systems. Knowledge of one or more of the following: ○○, ××, △△.
次は「Preferred」つまり「〜であれば尚可」の条件です。
“MS”は“Master of science”つまり「理工系の修士卒」、“PhD”は「博士」です。コンピュータサイエンス、コンピュータエンジニアリング、電気工学またはそれに相当する大学院修士か博士、加えて○○や××や△△の知識があれば尚可ということです。こういった経験を持つ方は、選考において優位に立つでしょう。
この求人では、4年制の大学の工学部で情報系を卒業していれば条件はクリアです。そうでない場合=文系学部出身であっても、実践的な経験があれば、最低限の条件はクリアできます。
めでたく採用されてチームの一員となれば、もう理系も文系もありません。理系だからと言ってチームメイトとのコミュニケーションを無視してよいことはありませんし、文系だからといってITスキルを避けていればIT企業で生き抜いていけません。
中途採用が中心のシリコンバレーのIT企業では、新入社員研修のようなものはほぼありません。「必要なスキルを持つあなたを採ったのだから、後は社内システムのビデオでも見て自習してください」というのが現実です。
しかし、夜間や休日に大学院へ通うための費用を会社が出してくれることはよくあります。これは、社員のスキルアップに加えて会社側も間接的にメリットがあると考えた場合です。ただし費用補助が望めるのは、あくまで自分の卒業した専攻の延長として勉強する場合です。
そして、多くの企業で社内公募制度が存在します。社外から応募するときと全く同様に、自分が希望する部門や職種に自由に応募できます。文系卒で日常業務をこなしていきながらスキルアップし、開発部門と仲良くなり、やがてITエンジニアに鞍替えすることは十分可能です。反対に、日本企業のように本人の意思と無関係に、突然望まぬ部署への人事異動を通告されるということはありません。
シリコンバレーの文系エンジニア事情についてお話ししました。理工系出身ではない学生が新卒でエンジニアになるのは、シリコンバレーでは正直、至難の技です。
しかし、文系卒だからといってITエンジニアへのキャリアパスを諦めなければいけないことはありません。専攻分野やスキルを生かして求められる仕事と出会うことができれば、IT業界でも十分に生きていけます。
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