日本企業のCEO、「デジタルやテクノロジーを最も重視する」意識が世界最低水準PwCが「2017年世界CEO意識調査」の日本分析版を発表

PwC Japanグループが「第20回世界CEO意識調査」の日本分析版を公開した。日本企業のCEOは世界全体のCEOに比べて、「企業の信頼を揺るがすリスクに対する意識」が高かった半面、デジタルやテクノロジーに対する関心が世界最低水準であることが分かった。

» 2017年04月20日 12時00分 公開
[@IT]

 PwC Japanグループは2017年4月19日、グローバル調査「第20回世界CEO意識調査 過去20年におけるCEOの意識変化未来をどう描くか?」の日本分析版を公開した。

 同調査結果は、2017年1月にプライスウォーターハウスクーパース(以下、PwC)が公開した全世界版調査(79カ国、調査対象は1379人)の中から、日本企業のCEO(最高経営責任者、調査対象は110人)の回答に絞り、日本企業における状況や今後の課題に焦点を当てたもの。調査結果によると、日本のCEOは世界平均と比べると、「自社の成長に対して慎重に見ている」ことが分かった。自社の成長に「非常に自信がある」と答えた割合は、世界平均の38%に対して、日本は14%にとどまった。なお、この結果は2016年調査の28%から半減。2014年と2015年の調査結果も約27%だったことを考慮すると、2017年に対する慎重な姿勢が際立つ結果となった。

photo 今後12カ月で自社の成長見通しについてどれくらい自信があるか(出典:PwC Japan)

 企業のCEOが、「2017年に自社の成長にとって重要と捉えている国や地域」については、多い順に米国(2017年:43%、2016年:39%)、中国(2017年:33%、2016年:34%)、ドイツ(2017年:17%、2016年:19%)、英国(2017年:15%、2016年:11%)となり、2016年と同じ傾向だった。これに対して、日本企業のCEOの回答に絞ると、米国(2017年:61%、2016年:55%)と中国(2017年:58%、2016年:45%)に集中した一方で、タイが2016年の28%から2017年は17%に低下するなど、アジア新興国に対する関心が低下したと分析されている。

photo 今後12カ月で、自社の成長にとって最も重要と考える国はどこか(出典:PwC Japan)

 企業のCEOが「今後最も強化すべきと考える分野」は、世界全体、日本企業ともに「イノベーション」が最も多かった。だが、日本企業のCEOは世界全体と比べると、「デジタルやテクノロジーに対する関心が低い」ことが危惧される。世界全体では、今後重視すべきこととして「デジタルおよびテクノロジーに関する能力」が「人材」と同率(15%)の2位だったのに対して、日本では4%にすぎなかった。

photo 新たな機会を活用するために最も強化したい項目とは(出典:PwC Japan)

 デジタルリテラシーについても、日本企業のCEOは世界に比べて低い結果だった。例えば、「紙メディアよりもデジタルメディアを利用している」割合は、世界全体では69%だったのに対して、日本は31%にとどまった。また、「自宅でロボットを利用している」割合も、世界全体の32%に対して日本は13%。「ホームオートメーションシステムを利用している」割合も、同46%に対して7%だった。この結果を踏まえ、PwC Japanグループは、「“新しいテクノロジーに関する個人的な使用経験がない”ことが、日本企業のCEOにとってデジタルおよびテクノロジーが経営の最優先課題に挙がらない要因となっている可能性は否定できない」と分析している。

 この他、CEOが求める人材スキルとしてほぼ全てのCEOが挙げたのは、「問題解決能力」「適応能力」「協調性」「リーダーシップ」「創造性と革新性」だった。この点は、世界全体とも同じ傾向にある。こうしたスキルは機械で置き換えにくい分野とされ、CEOはこういった「人」ならではのスキルを重視していることが分かった。ただし、人材に「デジタルに関するスキル」を求める日本企業のCEOの割合(66%)は、世界全体と比べて低い傾向が見られた。

 その一方で、日本企業のCEOは「企業の信頼を揺るがすリスクに対する意識」が世界最高レベルであることも分かった。世界全体と比べ、「プライバシーの保護や論理に反する行為」「サイバーセキュリティ上の欠陥」「ITシステムの機能停止や混乱」について危機意識を持つ割合が突出して高かった。

photo ステークホルダーの信頼に悪影響を及ぼす項目とは(出典:PwC Japan)

 今回のCEO意識調査の結果を踏まえて、PwC Japanグループ代表の木村浩一郎氏は、「調査を開始した20年前と比較して、世界がグローバリゼーションとテクノロジーによって大きな変貌を遂げる中、多くの人が20年前には予期していなかった種々の課題に直面している。パラダイムシフトに直面する世界を前提として、今回PwCが実施した第20回世界CEO意識調査で浮き彫りとなったのは、変化をリスクと同時にチャンスとして捉えている世界のCEOと、より慎重な見方を強める日本のCEOとの対照的な姿である。日本のCEOは、『デジタル』や『テクノロジー』といった変化に対して、世界のCEOよりも総じて関心が低いとの調査結果が出ており、世界とのギャップは一層際立っている」と述べた。

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