ネガティブな感情は気分が悪いので、一般的には「良くないもの」と思っている方が多いでしょう。そして、一時的なテクニックで「何とか鎮められないか」と感じないようにしたり、気にしないようにしたりします。前回のトイレにこもって3分間――感情コントロール「ステップ3 感情を鎮める」は、手っ取り早く感情を鎮める方法でした。
けれども、一時的なテクニックでは、感情は鎮められても価値観は変わりません。そのため、似たような状況が起きると、また感情的になってしまいます。
一方、自分の中にある価値観を知り、それを変化させると、感情がONになるスイッチが変わるので、感じ方そのものが変わります。
このことに気付いてから、私はネガティブな感情を「悪者」とは思わなくなりました。むしろ、「自分の理想は何なのか」「本当はどうしたいのか」という理想を知り、「すべき」「ねばならない」という固定観念を手放すきっかけだと考えるようになりました。
情報システムの開発現場には、さまざまなトラブルがつきものです。「顧客が約束した日までに仕様書を送ってこない」「部下が納期までにプログラムを完成させない」など、開発スケジュールが遅れてしまうこともあるでしょう。
そのようなときに、「お前のせいでスケジュールが遅れるじゃないか!」と感情的になって相手を責め立てると、ネガティブな感情に油を注ぎ、ますます感情的になってしまうことがあります。
一方、同じ状況に置かれたとき、一瞬「イラっ」とすることがあったとしても、「何が、私に、このイラっとした感情を抱かせたのだろう?」と、感情が生じた「理由」を考えられるようになると、感情から離れて自分を冷静に「観察」できます。
さらに、イラっとした感情の背景に、「私は、何としてでも納期までに開発を間に合わせたい」という「理想」や、「私にとって大切なのは、一時に感情に流されることではなく、プロジェクトマネジャーとしての仕事をやりきることだ」のような前向きな「信念」があることに気付けば、意識がポジティブな理想に向くので、それに伴って自然と感情が変化してきます。
このように、自分の中にある理想に気付き、意識をそちらに向けることによって、感情コントロールはしやすくなるのです。
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