「同僚のエンジニアに好意を持った」「同僚と結婚した」「女の子を授かった」「その子を今、一生懸命育てている」のように、「目的語+述語」の組み合わせが適切な文章を書きましょう。
連載「エンジニアのための文章力養成講座」は、書籍「文章力を伸ばす 書くことが、これでとても楽になる81のポイント」(阿部紘久著 日本実業出版社)を基に、出版社と筆者の許可を得て、@IT読者向けに再構成したものです
「要件定義書」「提案依頼書」「テスト仕様書」――エンジニアは業務でさまざまな文章を書きます。しかし、文章力が足りないと、無駄なことをたくさん書いてしまったり、考えているのとは違うことを書いてしまったり、頭の中にあった大事なことを書きもらしてしまったりしがちです。
連載「エンジニアのためのビジネス文書作成術」、第2回は「目的語」をピタリと決める文章力を鍛えます。文章力を身に付けてより良いエンジニアライフを送りましょう。
「目的語」は、「述語」と適切に組み合わせて初めて効力を発揮します。
佐藤さんは、Webデザインスクールを学び始めた。
佐藤さんは、Webデザインを学び始めた。
佐藤さんは、Webデザインスクールに通い始めた。
これは、簡単な例です。では、次はいかがでしょうか?
子どもが生まれる前は、二人で夜お酒を飲みに出かけたり、一緒にジョギングをしたり、ペアプログラミングに使ったりしていました。
子どもが生まれる前は、二人で夜お酒を飲みに出かけたり、一緒にジョギングをしたり、ペアプログラミングに時間を使ったりしていました。
間違いの文は、「時間を」という目的語を書き落としてしまったものです。こうした間違いは、「何について話しているのか」相手と共有できていると思い込んでいるような場合に犯しがちです。
子どもがいなかった時と今で、自由に使える時間がとても少なくなりました。
子どもがいなかった時と比べると、今は自由に使える時間がとても少なくなりました。
「時と今で」は短縮し過ぎです。「子どもがいなかった時と比べる」という「目的語+述語」の組み合わせを作ると、文の基本形ができます。
コミュニケーション能力の不足を痛感し、プロマネに危機感を覚えている。
コミュニケーション能力の不足を痛感し、プロマネとの関係に危機感を覚えている。
「プロマネに危機感を覚えている」のではなく、「プロマネとの関係に危機感を覚えている」でしょう。間違いの文は、目的語が適切ではなかった例です。
顧客の課題をITで解決する仕事に、幼いながらもとても魅力的に思いました。
顧客の課題をITで解決する仕事が、幼いながらもとても魅力的だと思いました。
顧客の課題をITで解決する仕事に、幼いながらもとても魅力を感じました。
最初の「仕事が魅力的だ」は「主語+述語」ですが、次の改善案の「仕事に魅力を感じる」は、「目的語+述語」です。読みにくい文章は、「主語と述語」よりも、「目的語と述語」の組み合わせがうまくできていない場合が、多くあります。
連載「エンジニアのための文章力養成講座」は毎週木曜日掲載です。次回(6月29日掲載)は、「主語」にまつわる文章力を鍛えます。
文章力を伸ばす
書くことが、これでとても楽になる81のポイント
阿部紘久著 日本実業出版社 1404円(税込み)
文章力を磨くとは、考える力を磨くこと。「書く力は、考える力そのもの」「受け手発想で書く」「意味の狭い言葉を使う」「長文を書くポイント」など、文章を書くときに大事なことだけれど、なかなか教わることがない81のポイントを、多くの文例と共に分かりやすく解説する。
阿部紘久
エッセイスト(元国際ビジネスマン)
帝人、米国系企業CEOを経て、2005年から昭和女子大学ライティング・サポートセンターで文章指導を行う。社会人も指導している。
主な著書に『文章力の基本』(日本実業出版社)、『文章力の基本100題』(光文社)、『シンプルに書く! 伝わる文章術』(飛鳥新社)などがある。
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