実は、私もかつて「自分はリーダーには向いていない」と思っていました。
先頭に立って引っ張るのは苦手ですし、言いたいことがあってもちょっと遠慮してしまいます。「○○すべきだ」と無理強いするのも、されるのも苦手ですし、「よし、やるぞー!」と情熱たっぷりなタイプでもありません。正直「リーダーにはなりたくない」と思っていました(でも、なってしまいましたが)。
私のように先頭に立つのが苦手なタイプは、無理に「リーダーシップを発揮しなければいけない」と思うと、ますます「1人で頑張ろう」として自分を追い込んでしまいます。そして、リーダーとしての役割を果たせない自分に悩み、落ち込みます。
このタイプは、「自分はリーダーだから」……と1人で頑張ろうとするよりも、「先頭に立つのは苦手」だと認めてしまった方が楽です。そして、「先頭に立つ」以外のリーダーシップの執り方に切り替えた方が、気持ちにゆとりが持てます。
リーダーは、大きく分けると2つのタイプがあります。1つは「先頭で引っ張るタイプ」、もう1つは、「後方から支援するタイプ」です。
「先頭で引っ張るタイプ」は、1人で状況を把握し、1人で問題の解決策を考え、1人で決断し、1人で指示・命令して導いていくのが得意なタイプです。一方、「後方から支援するタイプ」は、状況把握や問題の解決策立案、合意形成、役割分担を1人で頑張るのではなく、メンバーと話し合いながら進めていきます。
どっちが良い、とか、悪いという話ではありません。タイプの話です。
もし、あなたが「先頭に立つのが苦手」なら、「後方で支援するのが得意」なタイプかもしれません。「1人で頑張らなくていい」ことが分かれば、気持ちが楽になるのではないでしょうか。
「後方から支援するタイプ」がリーダーシップを取るときのポイントは、「内容に責任を持たない」です。
「内容に責任を持たない」というと、「何だよ、リーダーなのに無責任になれって言うのかよ」と思うかもしれませんが、そうではありません。もう少し正確に表現すると、「リーダーが責任を持つのはチームの方向付けと運営で、メンバーの力を引き出せるよう、任せられる部分は極力任せる」ということです。
この考えは、ファシリテーション(狭義の会議術)におけるファシリテーター(会議の進行役)の存り方を勉強したときに学びました。「優れたファシリテーターは、議事の内容には口を出さない。議事の内容に責任があるのはメンバーであって、ファシリテーターは議事の進行に責任を持つ」と。
会議の進行がうまくない人は、1人で頑張ろうとします。会議の内容に口を出し、自分の思い通りの内容にならないと、議事の進行がストップします。そうすると、かんかんがくがくの議論になってしまい、最後まで結論がでません。
一方、優れたファシリテーターは、会議の「進行」に責任を持ち、参加者の意見を引き出しながら議論を導いていきます。
客観的な立ち位置に立ち、「○○さんはどう思いますか?」「なるほど、それはいいですね。では、××さんの意見は?」「大切なのは、△△ということですね」「では、◎◎をしていきましょうか」と相手に投げ掛け、意見を引き出し、共通の認識が図れたところで議事をまとめます。
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